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Christmas
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しおりを挟むカーン、カーン……。
「せぇーのっ!」
カーンッ! と、子供の手には大きなハンマーを持って熱く焼けた金属の塊を叩く。ハンマーを振りかぶると体がよろめいてしまう。
「うわぁっとと……。クリス、大丈夫? フラフラしてるけど……」
「大丈夫じゃ! せぇーのっ!」
思いきり熱く焼けたオレンジに輝く金属をハンマーで叩き続ける。本日は前々から約束していた鍛冶をしている。頑張ってカーンカーンと叩き続けているのだが疲れた。さすがに疲れた。もうダメじゃ。…………でも何とか頑張る。
「うーん、クリス。頑張ってるところアレなんだけどさ……。コレ、失敗ね?」
「うぅ……」
「はいはい。頑張った頑張った。ほら泣かないの。クリスはその体の大きさのわりに凄く、すごーく頑張ったよ。ーー次作るまでにはもう少し体力をつけようね? 今回はまた俺がやるから……。うーん、それにしても前回よりも軽くて小さいのを作ったつもりだったけどダメだったか……」
アールが持つと小さなハンマーを見つめて何やらブツブツと呟いているが気にしないことにした。たぶんあのブツブツは独り言だと思うし、聞き耳をたてるほどでもなさそうだ。
それにしても前回も自分の短剣2本を作るときにハンマーという難敵を前に撤退を余儀なくされ、今回もまた難敵であった。重いハンマーで叩き続けるのに体力を消耗して、またしても自分の力で作り上げることが出来なかったのは悔しい。一応前回はアールが折角だからと小さなハンマーを用意してくれて最終的にヘロヘロの状態でバターナイフをなんとか作ったのだが、それも歪だったからなのか執事によってガラスのキャビネットにしまわれてしまった。うぅ……。よりによって見えるところにしまうとか意地悪なのじゃ……。
それを思い出したせいで無意識にプクゥ~っと膨らんだ頬のままクリスタリアは椅子に座ると用意しておいた水を飲み始めた。高温の火の前にいたのでさすがに喉が乾いた。
「ぷふぁ~っ!」
「……座ったところまでは良かったけどそのあとは令嬢としては0点。だけど良い飲みっぷりだね、クリス。本当に可愛いなぁ……。あ、所で今回は何を作ってるのかな? 銃剣っぽくないよね」
「うーんと、えーっと、ひ、秘密じゃもん! ーーあ、ちょ、やめっ」
秘密じゃと言うと問答無用でゴツン……嘘です。コツンとした小さな衝撃でした。まぁ、いつものように額と額をピタリとくっ付けられイメージを共有されてしまった。そして満足した彼は何とも呆れた顔をしているので思わず首をかしげてしまう。斬新で中々の威力があると思うのだけどな……。そんなことを思っていると彼は静かに火を消して片付けを始めた。
「えっ! な、何をするのじゃ~っ!」
「あのね、クリス。君、鞭みたいなものをジェイル君に与えないって決めてなかったっけ? しかもねぇ、あの武器の形状はジェイル君よりも能力的にリシャールさんの方が完璧に扱えるからね?」
「なぬっ!」
いやいやいやいや! 執事に鞭は似合いすぎてダメじゃーーーーっ! と叫ぶとアールはため息をついてそっと抱っこすると妾の座っていた椅子に腰掛けた。
「似合うとか似合わないとかどうでもいいというか、関係ないけどね? あの武器はやめなさい。動きとか色々と予測しただけでも殺傷能力がなんか凄いし、片手の長剣の分類であったとしても範囲攻撃出来る時点で味方にも被害出るから封印しなさい」
「なぬっ! ジェイルはそんなおバカさんじゃないのじゃ!」
「………………………………うーん、バカというか脳筋というか……。周りの人の距離とか瞬時に把握できないくらい戦いに没頭しそうなんだよね、あの子」
そんな事はない! ーーと言いたかったがこればっかりは断言もできないため無言でいるとアールに目だけで「ほら、クリスも言い返せないでしょ」と訴えてきた。いや、訴えるというよりも鼻で笑われるような小バカにされた感じーーだろうか……。
「それにしてもこの剣は蛇腹剣とでもいうのかな? ボタンひとつで剣が鞭と言うか蛇のように蛇行する動きが可能になるみたいだし……。全く本当に変わったものを産み出そうとするよね、クリスは……」
それからはプレゼントの妥協案を考えるのに時間を費やした。
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