上 下
109 / 134
Christmas

しおりを挟む

 カーン、カーン……。

「せぇーのっ!」

 カーンッ! と、子供の手には大きなハンマーを持って熱く焼けた金属の塊を叩く。ハンマーを振りかぶると体がよろめいてしまう。

「うわぁっとと……。クリス、大丈夫? フラフラしてるけど……」
「大丈夫じゃ! せぇーのっ!」

 思いきり熱く焼けたオレンジに輝く金属をハンマーで叩き続ける。本日は前々から約束していた鍛冶をしている。頑張ってカーンカーンと叩き続けているのだが疲れた。さすがに疲れた。もうダメじゃ。…………でも何とか頑張る。

「うーん、クリス。頑張ってるところアレなんだけどさ……。コレ、失敗ね?」
「うぅ……」
「はいはい。頑張った頑張った。ほら泣かないの。クリスはその体の大きさのわりに凄く、すごーく頑張ったよ。ーー次作るまでにはもう少し体力をつけようね? 今回はまた俺がやるから……。うーん、それにしても前回よりも軽くて小さいのを作ったつもりだったけどダメだったか……」

 アールが持つと小さなハンマーを見つめて何やらブツブツと呟いているが気にしないことにした。たぶんあのブツブツは独り言だと思うし、聞き耳をたてるほどでもなさそうだ。
 それにしても前回も自分の短剣2本を作るときにハンマーという難敵を前に撤退を余儀なくされ、今回もまた難敵であった。重いハンマーで叩き続けるのに体力を消耗して、またしても自分の力で作り上げることが出来なかったのは悔しい。一応前回はアールが折角だからと小さなハンマーを用意してくれて最終的にヘロヘロの状態でバターナイフをなんとか作ったのだが、それも歪だったからなのか執事によってガラスのキャビネットにしまわれてしまった。うぅ……。よりによって見えるところにしまうとか意地悪なのじゃ……。
 それを思い出したせいで無意識にプクゥ~っと膨らんだ頬のままクリスタリアは椅子に座ると用意しておいた水を飲み始めた。高温の火の前にいたのでさすがに喉が乾いた。

「ぷふぁ~っ!」
「……座ったところまでは良かったけどそのあとは令嬢としては0点。だけど良い飲みっぷりだね、クリス。本当に可愛いなぁ……。あ、所で今回は何を作ってるのかな? 銃剣ガンソードっぽくないよね」
「うーんと、えーっと、ひ、秘密じゃもん! ーーあ、ちょ、やめっ」

 秘密じゃと言うと問答無用でゴツン……嘘です。コツンとした小さな衝撃でした。まぁ、いつものように額と額をピタリとくっ付けられイメージを共有されてしまった。そして満足した彼は何とも呆れた顔をしているので思わず首をかしげてしまう。斬新で中々の威力があると思うのだけどな……。そんなことを思っていると彼は静かに火を消して片付けを始めた。

「えっ! な、何をするのじゃ~っ!」
「あのね、クリス。君、鞭みたいなものをジェイル君に与えないって決めてなかったっけ? しかもねぇ、あの武器の形状はジェイル君よりも能力的にリシャールさんの方が完璧に扱えるからね?」
「なぬっ!」

 いやいやいやいや! 執事に鞭は似合いすぎてダメじゃーーーーっ! と叫ぶとアールはため息をついてそっと抱っこすると妾の座っていた椅子に腰掛けた。

「似合うとか似合わないとかどうでもいいというか、関係ないけどね? あの武器はやめなさい。動きとか色々と予測しただけでも殺傷能力がなんか凄いし、片手の長剣の分類であったとしても範囲攻撃出来る時点で味方にも被害出るから封印しなさい」
「なぬっ! ジェイルはそんなおバカさんじゃないのじゃ!」
「………………………………うーん、バカというか脳筋というか……。周りの人の距離とか瞬時に把握できないくらい戦いに没頭しそうなんだよね、あの子」

 そんな事はない! ーーと言いたかったがこればっかりは断言もできないため無言でいるとアールに目だけで「ほら、クリスも言い返せないでしょ」と訴えてきた。いや、訴えるというよりも鼻で笑われるような小バカにされた感じーーだろうか……。

「それにしてもこの剣は蛇腹剣とでもいうのかな? ボタンひとつで剣が鞭と言うか蛇のように蛇行する動きが可能になるみたいだし……。全く本当に変わったものを産み出そうとするよね、クリスは……」

 それからはプレゼントの妥協案を考えるのに時間を費やした。





しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

異世界で神様に農園を任されました! 野菜に果物を育てて動物飼って気ままにスローライフで世界を救います。

彩世幻夜
恋愛
 エルフの様な超絶美形の神様アグリが管理する異世界、その神界に迷い人として異世界転移してしまった、OLユリ。  壊れかけの世界で、何も無い神界で農園を作って欲しいとお願いされ、野菜に果物を育てて料理に励む。  もふもふ達を飼い、ノアの箱舟の様に神様に保護されたアグリの世界の住人たちと恋愛したり友情を育みながら、スローライフを楽しむ。  これはそんな平穏(……?)な日常の物語。  2021/02/27 完結

異世界に召喚されたけど、聖女じゃないから用はない? それじゃあ、好き勝手させてもらいます!

明衣令央
ファンタジー
 糸井織絵は、ある日、オブルリヒト王国が行った聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界ルリアルークへと飛ばされてしまう。  一緒に召喚された、若く美しい女が聖女――織絵は召喚の儀に巻き込まれた年増の豚女として不遇な扱いを受けたが、元スマホケースのハリネズミのぬいぐるみであるサーチートと共に、オブルリヒト王女ユリアナに保護され、聖女の力を開花させる。  だが、オブルリヒト王国の王子ジュニアスは、追い出した織絵にも聖女の可能性があるとして、織絵を連れ戻しに来た。  そして、異世界転移状態から正式に異世界転生した織絵は、若く美しい姿へと生まれ変わる。  この物語は、聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界転移後、新たに転生した一人の元おばさんの聖女が、相棒の元スマホケースのハリネズミと楽しく無双していく、恋と冒険の物語。 2022.9.7 話が少し進みましたので、内容紹介を変更しました。その都度変更していきます。

“金しか生めない”錬金術師は果たして凄いのだろうか

まにぃ
ファンタジー
錬金術師の名家の生まれにして、最も成功したであろう人。 しかし、彼は”金以外は生み出せない”と言う特異性を持っていた。 〔成功者〕なのか、〔失敗者〕なのか。 その周りで起こる出来事が、彼を変えて行く。

聖女召喚に巻き込まれた挙句、ハズレの方と蔑まれていた私が隣国の過保護な王子に溺愛されている件

バナナマヨネーズ
恋愛
聖女召喚に巻き込まれた志乃は、召喚に巻き込まれたハズレの方と言われ、酷い扱いを受けることになる。 そんな中、隣国の第三王子であるジークリンデが志乃を保護することに。 志乃を保護したジークリンデは、地面が泥濘んでいると言っては、志乃を抱き上げ、用意した食事が熱ければ火傷をしないようにと息を吹きかけて冷ましてくれるほど過保護だった。 そんな過保護すぎるジークリンデの行動に志乃は戸惑うばかり。 「私は子供じゃないからそんなことしなくてもいいから!」 「いや、シノはこんなに小さいじゃないか。だから、俺は君を命を懸けて守るから」 「お…重い……」 「ん?ああ、ごめんな。その荷物は俺が持とう」 「これくらい大丈夫だし、重いってそういうことじゃ……。はぁ……」 過保護にされたくない志乃と過保護にしたいジークリンデ。 二人は共に過ごすうちに知ることになる。その人がお互いの運命の人なのだと。 全31話

幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。

秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚 13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。 歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。 そしてエリーゼは大人へと成長していく。 ※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。 小説家になろう様にも掲載しています。

チート幼女とSSSランク冒険者

紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】 三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が 過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。 神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。 目を開けると日本人の男女の顔があった。 転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・ 他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・ 転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。 そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語 ※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。

【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!

雨宮羽那
恋愛
 いきなり神子様と呼ばれるようになってしまった女子高生×過保護気味な騎士のラブストーリー。 ◇◇◇◇  私、立花葵(たちばなあおい)は普通の高校二年生。  元気よく始業式に向かっていたはずなのに、うっかり神様とぶつかってしまったらしく、異世界へ飛ばされてしまいました!  気がつくと神殿にいた私を『神子様』と呼んで出迎えてくれたのは、爽やかなイケメン騎士様!?  元の世界に戻れるまで騎士様が守ってくれることになったけど……。この騎士様、過保護すぎます!  だけどこの騎士様、何やら秘密があるようで――。 ◇◇◇◇ ※過去に同名タイトルで途中まで連載していましたが、連載再開にあたり設定に大幅変更があったため、加筆どころか書き直してます。 ※アルファポリス先行公開。 ※表紙はAIにより作成したものです。

「お前を愛するつもりはない」な仮面の騎士様と結婚しました~でも白い結婚のはずなのに溺愛してきます!~

卯月ミント
恋愛
「お前を愛するつもりはない」 絵を描くのが趣味の侯爵令嬢ソールーナは、仮面の英雄騎士リュクレスと結婚した。 だが初夜で「お前を愛するつもりはない」なんて言われてしまい……。 ソールーナだって好きでもないのにした結婚である。二人はお互いカタチだけの夫婦となろう、とその夜は取り決めたのだが。 なのに「キスしないと出られない部屋」に閉じ込められて!? 「目を閉じてくれるか?」「えっ?」「仮面とるから……」 書き溜めがある内は、1日1~話更新します それ以降の更新は、ある程度書き溜めてからの投稿となります *仮面の俺様ナルシスト騎士×絵描き熱中令嬢の溺愛ラブコメです。 *ゆるふわ異世界ファンタジー設定です。 *コメディ強めです。 *hotランキング14位行きました!お読みいただき&お気に入り登録していただきまして、本当にありがとうございます!

処理中です...