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役に立ちたいのじゃ!

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「あの、父上? あえて聞きたいんじゃけど……。下3人の弟妹は種族は吸血鬼じゃよね……。父上と母上の子供じゃもん」

 お風呂から上がって父上のベッドに座って寛いでいるとなぜか父上はキョトンとしていた。

「あれ? 言ってなかったかな……。あの3人はマリーの血が強くて先祖帰りの淫魔族だよ? だから血を飲むこともない」

 あー……。なるほど。父上が家族のように接してないのはそれかぁ……。娘なのに顎を外すとか容赦ないなぁとは思ったけど……。実際父上の実家は公爵と言う時点で系譜をたどれば王族だ。ーーと言うか王にはならず臣籍降下した王太子。うん、強いて言えば父上が前に酒飲んだついでに笑い話で「先祖は吸血鬼に誇りを持ってて、他の血が混じった子供を愛せる気がしないって弟に王位継承権を譲ると言うか押し付けて臣籍降下したんだよね」と言っていた。吸血鬼族は吸血鬼族しか愛さない。愛せない。そんなことはなく吸血問題があるので家族愛や血族の繋がりがやたらと強いだけとも言う。現に母上のお母様。つまりは妾のお祖母様は淫魔族。その血が娘を通じて孫に引き継がれたと言うわけだ。そうか、下の3人は淫魔族か……。

「リアちゃん、パパの血を飲む? 最近飲んでないでしょ? 500年くらい」
「ん? んー……。妾、まだそんなに渇いてないのじゃ……。そうだ! 父上に妾の血をあげるのじゃ! 妾、魔力高い方じゃし……」
「いや、飲んだらリアちゃんが干からびちゃいそうだから良いよ……」
「…………? 父上が倒れたら大変じゃから飲んでくだされ」

 押し問答のような時間が続き、結果分けあうことになった。本当に妾は最近アールから貰ったから渇いてないんじゃけどなぁ……。でも、貰えるなら貰えるときに飲んでおこう。何があるかわからんしーーと言うわけで、いただきまーす! なのじゃ。

「あー、んっ……。んっ、父上の美味しい!」

 あまりにも美味しかったので首もとに顔を埋めて飲みまくる妾をそっと抱き締めて落ち着けとばかりに背中をポンポンされている。はっ! がっついてしまった。思わず反省する妾は自画自賛で良い子じゃと思う。反省してる最中でも飲むのは止めないけどな!





 うむ、ちょっと飲みすぎた。でも半日たてば飲んだ血は体に吸収されて自分の血液になるからたくさん飲まれても平気じゃろ……。

「リアちゃん、本当にゴメンねぇ……」
「ん? 大丈夫なのじゃ!」
「痛いのは最初だけだからね?」


 妾、父上の役に立ちたいのじゃ!


 じゃから父上が飲むなら今すぐにでもあげるのじゃ! そんなことを思いながらニコニコしていると父上に頭を撫でられた。そしてしばらくしてから首と肩の間ぐらいに牙を当てられ、それを押し付けて抉るように肉に穴を開ける。ジェイルは少量で満足するから腕で与えてるが首は初めてだ。おぉ、うわぁ……脈打つ度に血が溢れ出している。父上はそのリズムに合わせて飲んでいるのか血を飲まれている気がしない。あれ? 父上、本当に飲んでるよね……。実はそんなに飲んでない。もしくはとっくに飲むのやめてました~とか何だか少し心配になってきた。

「父う、えーーあ、れ……?」
「リアちゃん、本当にゴメンね?」

 飲み終えた父上は抱き締めて宥めるように背中を撫でていたがその内疲れで目も開けていられなくなった。

 起きたら父上となにしようかな……。また書類と睨めっこかな……。仕事はヤじゃな、遊びたいな……。遊んでくれるかな……。

「……本当にゴメンね? 小さな体の3分の1くらいの血を飲んじゃって……」

 眠ったと言うよりもどうやら仮死状態の娘をそっと抱き締めてフローライトはため息をついた。

 コンコンコンコン……。静かな部屋に響くノックの音と同時に人が入ってきた。

「旦那様……。血の臭いがしたと思って少し様子をうかがってましたら……あぁ、やっぱり。リアちゃんが仮死状態に……」
「思わず飲みすぎちゃったよ……」
「足りないなら私のも飲みますか?」
「マリー、大丈夫だよ。今日はね? リアちゃんの魔力が高いからかな……。量は少なくても何だか久し振りに満たされた気がするんだ……。だから大丈夫だよ? ……今日はもう寝ようか。久し振りにリアちゃんを挟んで3人で川の字で寝よう?」

 ローズマリーはクスクス笑いながらベッドに乗り込むと優しい手つきでクリスタリアの頭を撫でた。

「純血種のお父様をもってリアちゃんは大変ね。ジェイルもだけれど……。普通よりも家族愛の執着が強いものね……。がんじがらめと言うか……。蜘蛛の巣と言うか……」
「う…………」

 純血種。それは吸血鬼のトップ中のトップ。王の中の王。キングofキング。血統の他に突然変異で時折現れる。ハイエルフと同じくかなりの長命種で普通の吸血鬼の倍は軽く生きる。魔力もかなり高く、昔は畏怖され討伐対象となっていたために今もなお特秘されていてそんな歴史により家族の生存本能から周りから真実を隠してしまうとも言うのだが……。
 そんな純血種の特徴は色々あるがまず吸血衝動は滅多にないが衝動が出たら大量の血液を求めてしまう。しかもそれは血族にしか現れず、親や兄弟。自分の子に特に求めてしまう。
 現にクリスタリアは仮死状態。血が大量に無くなった為に体が防衛反応を起こして深い眠りについている。魔人族の国にいたときは父、母、兄から均等にもらっていたので誰も仮死状態にはなっていないのだが……。この場にはもう一人の子供であるジェイルは居ないのでクリスタリアがすべてを受ける羽目になっている。実を言えば体はまだ物足りない。でも心は満足だから落ち着いている。そんな感じである。

「600年近く飲んでなかったから実は飢えてたのかな……。今度、里帰りして貰ってこようかな……」
「それが良いですわ? リアちゃんからはしばらく飲めないでしょう? 全く……。溺愛しすぎて仮死状態にしてしまいましたし……。いつ起きるか心配です。私でよければ少しなら毎日でもあげられますけど……。旦那様は衝動が出てしまうとがぶ飲みも良いとこ。大人でも仮死状態になりますからねぇ……」
「う……。一応、処方された物はちゃんと食事と一緒に毎日飲んでるんだよ?」

 飲んでいて仮死状態にするのだから質が悪いと言われてしまった。

「しかも久し振りに飲んだからか旦那様の肌がピチピチと潤ってきた気がします……。何だか少し羨ましいですわね……」

 何故か羨まれたフローライトであった。





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