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役に立ちたいのじゃ!

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「リアちゃん、ただいま………………はぁ?」

 フローライトとアランが戻ってくると部屋には役人が数名。そして侍従長とメイド長もいた。妾以外みんな真面目そうな顔付きの者ばかりである。妾、正直なところ気持ち的なものだが見も心もすべてにおいて落ち着かない。

「おぉ、大人数だね! …………部屋の中も結界の中も……」
「主に子爵と男爵か……。全く。会議で依子貴族の監視、教育を徹底すると決定したのに既に捕まってるとか可哀想すぎて何とも言えないよ……。しかもどこから送り込まれたのかな……。暗殺者みたいなのもいるね……。あ! もしかしてリアちゃん狙いなのかな? なら許せないなぁ……。可愛い妹みたいなリアちゃんに……。お兄ちゃん、本気で殺っちゃおうかなぁ……。雇い主を!」

 あ、良かった。雇い主なら好きにボコボコにしてくれて構わない。暗殺者はあくまでも仕事できているのだから悪意があっても仕方ない。だって殺さないと仕事が終わらないのだから……。まぁ、お金のためとか世知辛いけどな! そして妾を殺すために来たのならやり返すけどな! だって捕まえちゃったし?

「わぁーアラン兄様。カッコイー」
「棒読み……」
「あー、アラン? リアちゃん、報復は自分でやる主義だからじゃないかな」

 父上はすでに手渡されたのか書類に目を通していたのだがため息をついた後に机に置いた。そして無言のまま結界を見つめる父上に妾含めて全員、捕まった貴族を見つめていた。しかもそのどうしようかと見つめている間にも一人。また一人と結界に人が増えていく。

「……学習しろよぉ~……。なんでまた引っ掛かるんだよ!」
「あ、アラン兄様。今回はノックしたらにしたからじゃよ。1回目はノックして中に踏み入れたらだったんじゃけど今回は扉に触れたらにしたんじゃ」

 そして妾は怒られた。理由? 父上とアラン兄様が言うには「人には不満とか色々と少なからずあるんだから無差別に収容はやめなさい」だった。妾からしたら少しでも不満がある人を把握できるチャンスで良いと思うんじゃけどなぁ……。

 コンコンコンコン……。

「しつれ………………はぁ? ちょ……はぁ? フローライト様。本当に申し訳ない! うちの依子の者が居たようだ」

 彼は心底ガッカリしたらしく、表情も態度も全てが脱力と言うかガッカリ感を醸し出していた。でも部屋に入れたので妾の中では信用度は上がった。

「なるほど。侯爵のところかぁ……。あとはどこの子かなぁ……。エメラールは依子貴族いないし……」
「おや、エメラールには居らんのかの?」
「ん? うん、居ないよ? ほら、うちは辺境伯爵家でしょう? いざと言うとき足枷になりうる分家とか依子貴族を作るのはやめようって建国当初に辺境伯爵家は依子を作らないって決めたんだよ。その分、辺境伯爵の領には私兵をかなり置けるようになってる。だからアメジールも兵士と言うか騎士がたくさんいるでしょ? ただ、維持が大変だから本当は役職につきたくないんだよねぇ……」

 そして次々とノックされて入ってくる上位貴族と共に連れ添ったらしい下位貴族は結界内に収まった。

『……………………』
「ふむ、下位になるほど王族に対して悪意があると判明したのぉ……」

 思いの外、大きな声になったのか更に部屋は静かになった。

「あ、そうじゃ! 妾、いいこと考えた!」
「ん? 嫌な予感しかしない」

 アランがそういうとフローライト可愛い我が子の頬を膨らました姿を見せないように抱き締めて隠していた。

「リアちゃん。猫もしくは鉄仮面でも被って? 素を出したらダメ」

 耳元で囁かれると冷静になって辺りにいる人物たちを思い出した。

「父上、申し訳ありません。少し取り乱してしまったようでお恥ずかしいです」
「(ほっ……。うわぁ、無表情……)うん? 落ち着いたかな? それで? 何を思い付いたの?」
「ここにいる貴族に父上と同じ朝の仕事を体験してもらえばいいのです。つまりはお祈りですね……。願い事は父上も同じことはさすがに面倒になってきたはずですし、明日のお祈りを『国民の健康』に統一してしまえばいいのです。何を考えていたとしても一度目のお祈りは国民の健康が受理されると言う仕組みですね。それ以外に直接神にお願いをしたいなら自己責任ですればいいのです。まぁ、私としては父上を犠牲にしてここの方々を健康であるようになどお願いしたくもないですが、国民である以上致し方ないかと……」

 遠回しにコイツら、神様の生け贄で良くない? と言うと部屋はさすがに青い顔をしている者がいた。

「いやぁ、死ぬかもしれませんし……」
「そ、そうですよ」
「あら、父上に500年近くお祈りをさせている方々の言葉とは思えないですね? あ、そうですよね! 父上以外に王の勤めを体験してないのですものね。ならば皆様も一度体験してみたらどうでしょう! 私は体験しましたし、この通り生きてますよ? ちなみにお祈りの内容は父上が健康でしたので被らないように穏やかに過ごせるよう祈りました。まぁ、私の魔力の三分の一ほど取られましたかね……」

 にこにこと笑顔で言うと子供の魔力と思ったのか結界内はやる気に満ちているようだった。バカめ……。

「あ、体験済みなんだね(リアちゃん、魔力いくつなのかな)」

 アランはそう心の中で言うととりあえず罠はそのままで会議をしようとクリスタリアを抱っこして会議室へ歩き出したフローライトに続くように上位貴族は歩き出した。

「父上! 書類とかしまってないのっ!」
「ん? あぁ、平気だよ? あの書類保管部屋のもの全ては触ることは出来ても私か宰相しか執務室外へ持ち出せないからね……。他の者は持ち込むことは出来ても王と宰相しか外に出すのは無理なの」
「つまり私が使っていた机は……」
「侍従が保管部屋から持ってきたけど仮に処分する場合に執務室の外へ出すときは国王と宰相も手伝わないと出せない」

 防犯対策素晴らしい! よし! いつか使うかもしれないから同じ術式をあとでコピーしよう! ……でも妾、なにか忘れてるような気がするのじゃけど……。うーん、思い出せないのは仕方ないし、ま、いっか……。

 考えることが面倒だったので放棄し、そして場所を移動した現在は会議中。

 とりあえず暇なのでステータスを久し振りにチェックすることにした。ちなみに父上とアール、執事の3人の隠蔽工作によりそれぞれが苦手な分野を誰かが補うと言う恐ろしくも完璧な隠蔽がなされているのだが、そこに妾が大きくなってから新たに隠蔽したので死角はないと思いたい。




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