吸血鬼領主~体は子供体型でも妾、大人じゃもん!~

けいき

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妾じゃなくても……再び?

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「うにゃ? うにゃにゃにゃにゃ? …………ここはどこじゃぁ~っ!」

 目を開けたら知らない天井だった。妾の部屋でもなく、城の与えられた私室でも父上の部屋でもなく、アールの家でもない。

 …………え? 妾、まさかの誘拐? いやいや、あの領館はそんな生易しい警備ではない。

 護衛騎士の採用試験はまず一人で数体のオークやオーガが倒せること。それをクリアしたらあの大鬼おにぃさんの執事とタイマン勝負。執事に負けたとしても使えそうなら採用決定。まぁ、執事との勝負はモンスターの課題が自身の力で終わらせたか、ズルをしていないかの見極めなのだが……。
 なんと言うか騎士と言うよりも傭兵と言う言葉が似合ってそうではある。

 さて、話を戻すが妾は見も知らぬ部屋のベッドで眠っていた。遮光のカーテンが太陽の光を遮ってくれている。ここに関しては妾の体質を理解してくれている人が側にいるのかもしれない。

「…………あっつ! この部屋、暑いのじゃ……」

 体を起こすと自分が着ていた衣服をチェック。うん、安定のプライベートブランド服のメイドインコーデリア。つまりはフリッフリ……。とりあえず首と胸元を手で探るとペンダントは首から下げた状態で、取り上げられていないところを察するに金目的の誘拐は消えた。

「とりあえず……」

 ペンダントに魔力を注ぐと服の中に戻した。実はこのペンダントに使われている石は魔石で以前、ダンジョンでレアモンスターが落とした代物。氷や熱といった上級属性魔法の物で適正があれば誰でも簡単に氷や熱を扱える。今はほんのりと冷気を出すだけの力を注いだので服の中を体が凍らずに快適な冷気が放流されている。

清浄クリーン

 寝ている間にかいた汗でベタベタの肌をスッキリさせるとベッドから下りて部屋を見渡した。

「うーむ、調度品は中々の物だの……。つまりは貴族か……。このベッド脇のサイドテーブルの素材は確か……マロニエの木だったか?」

 特産品として扱ってるのは国の北部に位置するエメラール領。妖精族の領主が統治するアメジールと同じ辺境伯爵家。ベッドの足やベッド部分。ペンダントライトの足。それ意外にも家具と言う家具にマロニエの木が使われているところを見ると趣味、土産として買ったと言うよりも伯爵家の屋敷に来たと受けとるべきなのだろう。だがこの家とは接点が全くないはずだ。

 うーん、迷う。このまま残って様子を見るか、転移して帰るか。

 武器さえあれば残っても良いのだが……。魔法は……。妾、ちょっとぶっ壊れ性能らしくて殺しかねないので使わない。

 よし! 逃げ出すのはいつでも出来そうだからここは大人しくしていよう。





「………………リアちゃん。そろそろ機嫌を直してくれるとありがたい」
「ちーちーうーえー?」
「悪かったってば。ただ、今日から数日間だけど仕事が少ないからリアちゃんと思いきり遊ぼうと思ったんだよ。気になるでしょ? 南のアメジールとは真逆の北のエメラール領のダンジョン」

 その瞬間、妾の怒りは消え、ワクワクと言うかウズウズと言うべきか……。いろんな感情が駄々もれしていた。

「父上……。本当……なのかの? 遊んでくれるのかの?」
「うん! まぁ、私は早朝のお勤めはしないといけないけど、この地の領主である宰相も一緒に潜るけど構わないよね?」
「うむ!」
「わぁ、リアちゃんは本当に可愛いなぁ……。そんなに嬉しいの? 幻覚だろうけど猫みたいな尻尾が大きくパッタンパッタンと振ってたのが垂直に立った感じがするよ」

 フローライトはご機嫌のクリスタリアを抱っこした。

「猫……。うぅ、父上~っ! ダンジョンで魔物肉! 魔物肉ジビエを集めるのじゃ!」
「うんうん、何が出るかね~っ!」

 機嫌が良くなったついでにフローライトはクリスタリアの着替えを選んであげ、着替えをしている間に誰かと話していた。

 着替えを終えて側にいくと紹介をされた。なんと相手はエメラール領主である宰相だった。

「第一王女様。ちゃんと挨拶をするのは初めてとなりますが、今年度の宰相を勤めております。アラン。アラン=エメラールと申します」
「クリスタリア=アメジールと申します。今年は父ともどもお世話になるかと思いますがどうぞよろしくお願い致します」

 フローライトに頭をポンポンされた後、クリスタリアは丁寧に挨拶をすると彼(アラン)は驚いたような顔をしたがすぐにニコリと笑みを見せた。

「お前、アイツ等と同じように見てたな? リアちゃんがそんな出来損ないみたいなことするわけないだろ!」
「いや、なんか……こう……ねぇ? 噂では聡明だって聞いてても王様の子供=……ってなるでしょ?」
「父上~……」

 抱っこしろとジャケットをクイクイと引っ張るので抱っこするとクリスタリアは大人しくなった。

 じゃって見上げると首、疲れるんじゃもん……。

「可愛らしいですね……。あれらが嘘みたいなくらいに」
「あげないよ?」
「念を押さずともわかってますよ? あ、そうでした。第一王女様、なんとお呼びしましょうか……。さすがにあの抽選会の様子を見たら王女呼びは嫌でしょう?」

 抽選会? ……あぁ! そう言えば捲し立てるように父上に領主として頑張るって言ったな……。遠回しに王女の仕事をする気はないと……。

「えっと、父上と同じリアちゃんで構わんよ? ーーあぁ、失礼しました。リアちゃんで構いません。あと、私に対して敬語は無用です。普通に話していただけると幸いです」
「宜しいのでしょうか……。では、俺のこともアランと名前で呼んでくれるかな? あ、俺はエルフだけど真名は別だから安心して? 話し方はいつもの通りで大丈夫だよ?」
「リアちゃん。お兄ちゃんが出来て良かったねぇ。アランはリアちゃんよりも遥かに年上だけど話も合うんじゃないかな」

 フローライトのその言葉にクリスタリアは少しばかり嬉しそうな顔をしていた。

「お兄ちゃん……。えっと、兄上その1で良いのかの?」
「わぁ~っ! 可愛い妹が出来たみたいで嬉しいなぁ」








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