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フラワーフェスティバル

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 ついでに爺のところで紅茶のような綺麗な液体を見つけたのだが竹炭を作るときの副産物だそうで、父上の鑑定結果は竹酢液と言うらしい。
 それを鑑定した結果、アールが学校で農業科に研究させてみるとお買い上げしていた。ちなみにこの液体の品質が良い物らしくお風呂に少し入れると良いとのことで父上が妾に買ってくれた。

 そんな説明を聞いていた爺がメモを取り、他の客に教えると竹炭やら竹酢液やら、竹細工も売れまくって爺がその日だけは欲深い目をしていた。お金の力って怖い……。





 フェスティバルは大盛況で終わり、父上と夜ご飯を一緒に食べた。
 アールも家族でご飯を食べたあとに父上と酒を飲む約束をしたのか領館に来ていて、妾は楽しかったせいなのか、父上が一緒なので珍しくはしゃぎ疲れたのかとても眠かった。
 いつもは一人で入るのだが父上と執事がひどく心配したため今日はメイドがお風呂に入れてくれた。現在、体がポカポカでウトウトしてくる。

「クリス? もう寝たら? 大きくなれないよ?」
「うにゃぁ……。父上~……」

 抱きつくと何故か抱っこして背中を優しくポンポンしてきた。話があるのに寝かしつけないでくれなのじゃ……。

「父上~……。父の日のプレゼント~……」
「うん? 父の日のプレゼントの指輪ならもらったよ?」
「それは今まであげてなかった分のやつ~……。今年のは別なのじゃ~……」

 眠いのでのんびりと話すと背中を叩く手が止まった。
 それに少しばかり残念に思っていると頭を撫でられた。

「コレ、なのじゃ~……。妾がデザインしてコーデリア様に作ってもらったんじゃ~……」
「わぁ、ありがとう。大事にするね?」

 と、中を開けると何も加工してない場所に妾の書いた手紙を見つけたのか取り出して読み始めた。妾は眠すぎるのでその間に寝てしまおうと胸に顔を埋めてそのまま寝についた。
 スヤスヤと眠りにつくとクリスタリアは執事によって部屋へと運ばれた。





 部屋には大人の男二名のみ。フローライトが渡されたバッグから手紙を見つけて読んでいると何故か放心していた。

「フローライト? 手紙は何だって?」
「……外側から加工してないポケット。ハンカチとかいれてカモフラージュに使ってね。真ん中、時間停止加工のマジックバッグ。食品類を入れてね。内側は普通のマジックバッグ。武器とか時間停止しなくて良いものを入れてね」

 そのまま読むとルノーもしくはアールことルノアールは呆然としていた。

「はぁ?」
「うーん、確かに鞄がほしいって言ったけど……。まさか本当に……。どうしよう……」

 まさか本気で作るとは思ってなかった。そんな表情にルノアールは苦笑いをしていた。

「まさかクリスのデザインとはね……。ズルいなぁ……。俺も頼もうかな」

 そんな呟きにフローライトが剣呑な目付きでじっと見つめ、酒を一口飲むと重々しく口を開いた。

「ルノー。別にお前だからと言うんじゃない。たが、あえて言うぞ?」
「……は?」
「ルノー。俺の目が黒い内はリアちゃんは誰にもあげません! お前でも、誰であってもあげません! いいなっ!!」

 そんな言葉にルノアールはニヤニヤしていた。

「フローライトの目が黒いうち。つまりは見えるうちはってことだよね? ふふ、大丈夫だよ? 俺、お前より長生きのハイエルフだからね……」

 男達の酒盛りは盛り上がることはなく静かな戦いであった。





 後日。

「アール! アール!」
「あれ? クリス? どうしたの?」

 昼間、起きたばかりの時間だがクリスタリアはアールの自宅に転移した。

「この前、渡し忘れたんじゃよ!」
「ん?」

 なんの話だろうかと首をかしげて不思議そうにしているアールの手にウエストポーチを置いた。

「え、これってもしかして……」

 何故か顔がひきつっている彼の言葉に奥方達はニヤニヤし、妾は満面の笑みを浮かべた。

「アールにも父の日のプレゼント! 妾がデザインしてコーデリア様に作ってもらったんじゃよ? 大事にしてくれなのじゃ!」
「ウ、ウン……。アリガトー……。大事ニスルヨ……」

 彼の顔は何故だか苦々しい表情で、妾は不思議そうにしているとアンジェリア様に「今日もお仕事頑張ってね?」と言われて礼を言うと妾はそのまま家に戻った。

 数日後。奥方達に頼まれたバッグの加工したものを届けにお店に顔を出すと「あの後の旦那様が面白かったですわ!」と楽しそうに教えてくれたことは良い思い出にしておこうと思う……。


                     END



来月から新しく別の小説を書きたいと思ってます。吸血鬼は夏のだらけてる話しか今現在思い浮かばないので良いネタが浮かんだら書いていこうと思ってます。これからもよろしくお願いします。





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