68 / 134
フラワーフェスティバル
8
しおりを挟む「と、言うわけでリアちゃん。3人の溺愛あまっあまなパパたちには内緒よ? 前に頼まれていた物をこっそり持ってきたわ?」
コーデリア様は小声で人差し指を立ててシーっと大声を出すなと言うジェスチャーしながらそう言った。
「本当ですか? ウェストポーチの事じゃよね?」
「ええ、頼まれた通りにウェストポーチを作ったわよ? 中々の出来だと思うわ? 私の天職スキルが大役立ちだったもの」
クリスタリアとコーデリアは近くでヒソヒソと話している間、セシリアとアンジェリアは「このお部屋可愛いですわ~!」とカモフラージュのようにはしゃぎながら話をしていた。何とも素晴らしい連携である。
コーデリア様の天職は材料とデザインさえ出来ていれば意図も簡単に服や鞄。小物が作れてしまうと言う服飾デザイナーらしい。
そのスキルは主に服を作るのに適しているのだが鞄は複雑でなければ作れるらしい。
王都に居たら貴族のお抱えになれること間違いなしの少し珍しい職業である。ただ、服を作るスキルしかないのでメリットとデメリットが凄かったりする。メリットは王都に居たら貴族のお抱えになれること間違いなし。金には困らない。デメリットは田舎に居たらただの持ち腐れ。
コーデリア様は戦える服飾デザイナーなので気が向いたら服を作ると言う変わった人なので田舎でも全然気にせず楽しく暮らせるらしい。
若いときは妖精国の王都に居たらしいが貴族の感性が自分と合わなくて悩んだ日々が続き、そんなときにアールに拾われたのたとか……。
「あぁ、イラスト通りに作ってくれてありがとうございます」
「いえいえ。それでね? お願いがあるのよ」
「ん? なんじゃろ? お礼に妾のできることなら何でもするよ?」
首をかしげていると布団の上に鞄を新たに3つ出された。
どれもウェストポーチなのだがベルトに3つのポーチがついているものだった。
「鞄? ……ウェストポーチでも小さめで女物のようじゃけれど……。あぁ、お三方のかの?」
「ええ、そうよ? お願いと言うのは時間がある時で良いの。これらもマジックバッグにしてもらえないかしら。実を言うとね? 家にダンジョンができたのは知ってるでしょう? そこでも魔物肉がドロップするの。学園とは違うね……。それらを店で使えるようにストックしておきたいのよ……。ダメかしら……」
おぉ、学園とは魔物が違うのか……。今度絶対にアールにつれていってもらおう!
生肉の保存となると時間停止と言う機能が欲しいのじゃな? フムフムと納得していると鞄のなかを見つめた。
「ポーチが3つに分かれてるということは食品とその他で分けると言うことかの?」
「ええ、そうよ? ダメかしら……。でも1つだけはなにもしないで欲しいの。ハンカチとかを入れて普通のウェストポーチと見せかけたいの。つまりはマジックバッグと言うのをわからないように偽装ね……」
「……なるほど、わかりました。それくらいの加工なら大丈夫じゃよ? あとこっちで手を加えても良いのかの?」
奥方達は全員構わないとのことで了解を得た。使い勝手の良いようにやってしまおう。
預かった鞄は全て自分のマジックバッグにしまうと、それからはアンジェリア様に入れてもらった紅茶を飲みながら店での話を聞いたり色々と話が聞けて有意義な時間だった。
「あ、そう言えばリアちゃん。ここ最近はずっと雨でしょう?」
「まぁ、雨季じゃからなぁ……」
「フェスティバルが終わるまで何とかしてもらえないかしら。街の人も作業が進まないみたいよ? それに私達もお店の洗濯物も乾かしたいわ?」
そんな話をして彼女達は去っていった。
「失礼します」
ノックと共に執事が顔を出した。
「リア様。おや、随分と楽しかったみたいですねぇ。食事をお持ちしましたよ?」
「ありがとうなのじゃよ……。あ、そうだ。のお? 仕事はどんな感じなのじゃ? フェスティバルの準備は……。街の声は?」
「そうですねぇ……。やはりここ最近の連日降り続く雨で準備は遅れてる気がしますね。体調を崩してる者もいると聞きますし……」
そんな報告を聞きながら魔物肉を細かく切り、野菜と煮込んだ栄養が多そうなスープを食べていた。
「クリス、良い子にしてた? 奥さん達が無理を強いたりしなかったかな?」
「あ、アール、良いところに!」
「ん?」
食べる手を止めると執事が何故かあーんをして食べさせるため、とりあえず食事を終えるまで待って貰うことにした。
「えっと、それで?」
「雨で準備が遅れてるそうなのじゃよ……。じゃからな? 妾が屋根と灯りを創るから、アールは街を弱い風で乾かすように魔法をな?」
「それは構わないけれど……。寝てるときは無理だよ?」
そんなことはわかっている。眠ってしまえば魔法のイメージが出来なくなり跡形もなく消える。つまりは起きていれば良いと言う話だ。
0
お気に入りに追加
279
あなたにおすすめの小説

なんでもアリな異世界は、なんだか楽しそうです!!
日向ぼっこ
ファンタジー
「異世界転生してみないか?」
見覚えのない部屋の中で神を自称する男は話を続ける。
神の暇つぶしに付き合う代わりに異世界チートしてみないか? ってことだよと。
特に悩むこともなくその話を受け入れたクロムは広大な草原の中で目を覚ます。
突如襲い掛かる魔物の群れに対してとっさに突き出した両手より光が輝き、この世界で生き抜くための力を自覚することとなる。
なんでもアリの世界として創造されたこの世界にて、様々な体験をすることとなる。
・魔物に襲われている女の子との出会い
・勇者との出会い
・魔王との出会い
・他の転生者との出会い
・波長の合う仲間との出会い etc.......
チート能力を駆使して異世界生活を楽しむ中、この世界の<異常性>に直面することとなる。
その時クロムは何を想い、何をするのか……
このお話は全てのキッカケとなった創造神の一言から始まることになる……
三歩先行くサンタさん ~トレジャーハンターは幼女にごまをする~
杵築しゅん
ファンタジー
戦争で父を亡くしたサンタナリア2歳は、母や兄と一緒に父の家から追い出され、母の実家であるファイト子爵家に身を寄せる。でも、そこも安住の地ではなかった。
3歳の職業選別で【過去】という奇怪な職業を授かったサンタナリアは、失われた超古代高度文明紀に生きた守護霊である魔法使いの能力を受け継ぐ。
家族には内緒で魔法の練習をし、古代遺跡でトレジャーハンターとして活躍することを夢見る。
そして、新たな家門を興し母と兄を養うと決心し奮闘する。
こっそり古代遺跡に潜っては、ピンチになったトレジャーハンターを助けるサンタさん。
身分差も授かった能力の偏見も投げ飛ばし、今日も元気に三歩先を行く。
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない
朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。
皇帝の番~2度目の人生謳歌します!~
saku
恋愛
竜人族が治める国で、生まれたルミエールは前世の記憶を持っていた。
前世では、一国の姫として生まれた。両親に愛されずに育った。
国が戦で負けた後、敵だった竜人に自分の番だと言われ。遠く離れたこの国へと連れてこられ、婚約したのだ……。
自分に優しく接してくれる婚約者を、直ぐに大好きになった。その婚約者は、竜人族が治めている帝国の皇帝だった。
幸せな日々が続くと思っていたある日、婚約者である皇帝と一人の令嬢との密会を噂で知ってしまい、裏切られた悲しさでどんどんと痩せ細り死んでしまった……。
自分が死んでしまった後、婚約者である皇帝は何十年もの間深い眠りについていると知った。
前世の記憶を持っているルミエールが、皇帝が眠っている王都に足を踏み入れた時、止まっていた歯車が動き出す……。
※小説家になろう様でも公開しています
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
初期スキルが便利すぎて異世界生活が楽しすぎる!
霜月雹花
ファンタジー
神の悪戯により死んでしまった主人公は、別の神の手により3つの便利なスキルを貰い異世界に転生する事になった。転生し、普通の人生を歩む筈が、又しても神の悪戯によってトラブルが起こり目が覚めると異世界で10歳の〝家無し名無し〟の状態になっていた。転生を勧めてくれた神からの手紙に代償として、希少な力を受け取った。
神によって人生を狂わされた主人公は、異世界で便利なスキルを使って生きて行くそんな物語。
書籍8巻11月24日発売します。
漫画版2巻まで発売中。
美味しい料理で村を再建!アリシャ宿屋はじめます
今野綾
ファンタジー
住んでいた村が襲われ家族も住む場所も失ったアリシャ。助けてくれた村に住むことに決めた。
アリシャはいつの間にか宿っていた力に次第に気づいて……
表紙 チルヲさん
出てくる料理は架空のものです
造語もあります11/9
参考にしている本
中世ヨーロッパの農村の生活
中世ヨーロッパを生きる
中世ヨーロッパの都市の生活
中世ヨーロッパの暮らし
中世ヨーロッパのレシピ
wikipediaなど
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる