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フラワーフェスティバル
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しおりを挟むそれから仕事に終われつつ夜更かしをして魔導具作成をする日々が続いた。
黙々と書類を見ながら片手に判子をもって作業をしていると、なにやら職員がこっちを見て小競り合いをしていた。
何事かと見つめていたら「何でもないです」と言い、気にせずに仕事を続けていたのだが……。
そこに最近恒例となっている人物が転移してきた。
「やぁ、リアちゃ…………あれ?」
「父上、いらっしゃああああっ!?」
何故か会話もそこそこに抱っこされた。
「リアちゃん。今日はもう寝ようね?」
「なっ! 父上、妾は仕事を……」
「そんな顔を真っ赤にして、抱っこしたら異常なくらい熱いし。……熱、あるでしょ。風邪、ひいたでしょ? 寝ようね」
風邪? 熱……? 不思議に思っていると父上に言われたせいか無理矢理自覚させられたせいなのか……。急激に寒気を感じた。
あれ? なんかクラクラする……てか、寒っ! 寒っ!!
「父上、妾は仕事をしないとなのじゃよ~……」
「リアちゃん。リアちゃんは大人だからわかるよね? ここで無理して仕事が滞るのと、皆に風邪を移してリアちゃんは元気だけど仕事ができなくなるのどっちが悪いかわかるよね?」
「でも、でもぉ」
駄々を捏ねていると見兼ねたのか執事がやって来た。
「クリスタリア様。いえ、リア様? リア様がよくなるまで私が勤めますからお休みください」
「執事がそういってることだし、ね?リアちゃん」
父上に背中をポンポンされ、執事には頭を撫でられた。
二人がかりで宥める作戦のようだ。
実はこの執事。職業は執事だが、父上、教育係のアールに次いでお父さんその3なのだった。
「ふみぃ……」
抱っこされたクリスタリアは父により強制退場を余儀なくされ、見送る面々は「大丈夫ですよ~」と言う言葉を込めて笑顔で送り出したのだが、見えなくなるとその場はなんとも言えない空気が流れた。
「なんか、執事様も中々の溺愛っぷり」
「おい、やめっ」
「ふふっ、仕事に戻りましょうか?」
部屋は何とも言えないひんやりとした空気が流れた。
「ふにゃぁ……」
「リアちゃん。ほら、ちゃんと寝ないとお仕事もいけないし、フェスティバルもベッドで過ごさないといけなくなるよ?」
「やじゃぁ……」
水で濡らされたタオルを額に乗せられるとひんやりとして気持ちいいものだった。
ーーが、如何せん。なんか頭がボーッとしてクラクラする。
「寝ようね」
「ふみぃ……」
一定のリズムでお腹をポンポン。父上は寝かしにつけてきた。
抗おうと思ったが拗らせて本当にフェスティバルに寝込んでいるのは嫌だ。絶対に父上は怒るし、アールも確実に怒る。執事は笑顔でベッドに縄でくくりそうだし……。
しかも転移出来ないように魔力を使えない札とか用意してそうなくらいには……。
ふっ、妾、諦める。抗わない。
お腹をポンポンされるのを受け入れると眠りはすぐにやって来た。
「すぅすぅ……」
「おやおや、これ以上抗うなら睡眠魔法を使おうと思ったが……」
父親は病人に魔法で強制的に眠らせるつもりだったのが判明した。
「クリス。あーん……」
「妾、一人で食べられる……モグモグ……」
「リアちゃん。コレ食べてみる? はい、あーん」
「父上、妾は……モグモグ」
反論の余地なく食べさせられている姿に執事はにこやかに見守っている。
最初、執事がメイドと食事を持ってきたが食欲がないと拒否したとたんに運悪く父上がアールと一緒に部屋へやって来た。
どうやら二人はアールを案内人として仲良く領の視察に行っていたらしい。
そこからは察しの通り、「食べないと良くならないよ?」とか「こら、ご飯食べないとダメでしょ?」とか軽い説教のもと、現在の状況なのだ。逆に執事のにこやかな笑みが怖さを醸し出す。
「はい、ご馳走さまでした」
「……なのじゃ」
そそくさとベッドに潜ろうとするといつのまにか近寄っていた執事に取り押さえられた。
流石はお父さんその3。やろうとしていたのはバレバレのようである。
「リア様、お薬をまだ飲んでないでしょう? ダメですよ?」
「ひっ」
「「お薬なんだからちゃんと飲まないとダメだよ?」」
メイドが用意した薬は薬だと言うのに何とも体に悪そうな色味をしている。
「妾、もう治ったから飲まない!」
「「「高熱だしてるのに?」」」
「だって絶対に苦い! やじゃ! 苦いの嫌いじゃもん」
プイッと顔を背けば父上にクスクス笑われた。
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