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妾じゃなくても……
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しおりを挟む「妾、汗かいたからお風呂入る~っ!」
「はいはい、パパがお湯を溜めてあげようね」
「妾、できる!」
「はいはい。火傷とか、風邪とか心配だからパパがやろうね~……」
覚えのあるやり取りをするとしばらくしてから父上は徐にため息をついた。
「絶対にリアちゃんはわざと負けると思ったのにな……。へなちょこにする予定が失敗して火の玉の豪速球にしたくらいだし?」
あー、バレてた。そうか、あの爆笑は妾がへなちょこに出来なかったことに、失敗したことにあんなにも笑っていたのか……。
「いや、その? なんか相手がロリコンっぽい感じがしての? これはやらねばならんと思っての……って、父上! 妾、これからお風呂に入るんじゃ! 出ていってくれなのじゃよ~っ!」
「そうだ、パパと久しぶりにお風呂に入ろうか」
「…………………………………………いやいや!」
「すごく間があったけれど? スッゴク悩んだんだねぇ」
そして「はい、ばんざーい!」と言われたので咄嗟に両手をあげたら父上にワンピースを脱がされた。
安心してください。ちゃんと肌着とかドロワーズを身に付けてますよ?
……じゃなくて! ちーちーうーえーっ! と言うか、妾~っ!
ダメじゃろ、それはぁ~っ!
ーーはふぅ、いい湯じゃった。
え? 父上とお風呂? うん、入りましたよ? それがなにか?
今、王都には湯あみ着と言うものがあって女性はそれを着て男性と混浴するのが庶民の流行りだそうだ。
うん、どこからきた文化だ? それは……。
ちなみに貴族はそんなはしたないこと出来ませんわ? とか言いながら湯あみ着を身につけて邸内で夫婦で入るのが密かなブームだとか……。
だからそれはどこからきた文化なの?
あぁ、はいはい。エロフ……じゃなくてエルフですか……。なるほど……。
「はーい、髪を乾かすよ?」
父上はそう言うと膝に妾をのせてタオルで髪を拭いた後、ほのかに感じる程度の微風の魔法を使った。
妾の髪の毛、切れないよね? と思わず心配してしまったが父上いわく、氷の時にイメージしたら小さいのが出るようになったのでそうなると風の威力も変えられるのでは? と使ったら出来たのだそうだ。
それ以降、髪を乾かすのに密かに重宝しているのだとか……。
あれ? これは魔導具でいけるんじゃね? ウハウハじゃね?
領に帰ったらアールに相談してみよう!
「さてと、それじゃぁ寝る前にパパとお話をしようね?」
「あい……」
ぴょこーんと膝から下りると、また父上に捕まって今度は対面で膝に座らされた。
「リアちゃん。この鞄はなんなのかな?」
「妾の作ったマジックバッグです」
「うん、鑑定でもそう結果が出たね。じゃ、この中身はなんなのかな?」
鞄の中身は至ってーー普通じゃないな。思わず遠い目をしてしまう。
内容はというと、お着替え一式とパジャマのお泊まりセット。護身用の双短剣。魔法で製作するのに必要な原材料。例えばガラス製品を作るためのケイ砂に灰。石灰石。家を作るなら粘土や木材など……。それ以外は魔物からドロップしたレア品。武器、防具、それ以外にも毛皮や牙といった素材。食料品。
「この着替えとかパジャマのお泊まりセットはどう言うことなのかな? もしかして彼氏でも出来たの? 相手は例えルノーでも! パパは絶対に許しませんからね? パパの目が黒いうちは絶対に許しませんよ?」
「んん? 父上の瞳は紫じゃろ! お泊まりセットはその……。最近はお城で寝るのが増えたから、父上とお昼寝は嬉しかったんじゃもん……。城にはその……。妾のパジャマとかないし……。妹のお下がりは嫌じゃし」
しどろもどろに話すとぎゅーっと抱き締められた。
ふわりと鼻に良い香りが届いたので思わず嗅いでいた。クンクン……。お風呂上がりの父上は何だかイランイランの香りがする……。
はふぅ~……この香り、安心するのじゃ……。
「こら、リアちゃん。くすぐったいよ……。もぉ、急に臭いなんて嗅いでどうしたの?」
「父上はイランイランの香りがするのじゃ……」
「ん? イランイラン? ……あぁ、もしかして個人香って言うやつかな? リアちゃん、ちょっとゴメンね?」
父上はそう言うと妾を抱き締めてクンクンと臭いを嗅いでいた。
「リアちゃんはバニラみたいな甘い香りだなぁ……。あぁ、なるほど。ベンゾインか……」
「ベンゾイン?」
名前からしてあまり良い香りじゃなさそうだけども……。
妾の気のせいなのかの……。
「そう。ベンゾイン。樹脂系の香りでね? 安息香ともいうかな? うん、良い香り」
父上にクンクンと嗅がれ、逆に恥ずかしくなる。
「あうぅ~っ……。ち、父上! 放してぇ~……。妾、恥ずかしいのじゃよ」
「ん? あぁ、ゴメンね? 落ち着くせいかついね……。さてと? 話を戻そうか? このレアドロップ品達はなんなのかな?」
「あー、それなんじゃけど……。父上はなにか欲しいのないかと思っての?」
レア品ばかりで値がつかないので父上にあげようと持ってきたのだった。
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