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妾じゃなくても……
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しおりを挟む「ルノー? 君、リアちゃんにどう言う教育したの?」
「俺はここまで論破する子に育てたつもりはない。お前に似たんだよ!」
「俺? お前にそっくりだって言ってんのに?」
ギャーギャーと喧嘩を始めた。
「……妾、2人に似てるのかの? どっちがパパでママなんじゃろ……。女顔じゃし、アールがマ……」
「あ?」
「冗談です」
「だよね?」
ビックリした! ビックリした! ビックリした!!
言葉に表せん顔しとった!
「あ?」って、「あ?」って! スゴいチンピラみたいな顔と低い声じゃった!
「え、えっと、転移の魔法じゃよね! うんうん、転移の魔法の話!」
妾、空気が読める良い子じゃよ! 褒めて! 今だけは!
アールの不機嫌は怖い。父上も怖いけど、この話題は長引かせたら終わりじゃ!
そんな内心のまま、ニコニコと可愛らしい笑顔を振り撒いて誤魔化すことにした。
まぁ、確実にこの行動の裏を読まれてるだろうが笑顔でニコニコする妾を見て溜め息を吐かれた。
「そうだね、不毛な言い争いはやめよう。時間の無駄だ」
「それで? クリス。教えるの?」
「父上以外の視察はダメじゃ! 何かと説明が面倒」
何が面倒? 貸家、湖の拡大と透明度。魔物肉専門店の魔導具。強いて言えば貸家に施している認識印象魔法。通称・認証魔法。
さすがに認証魔法だけは見られたらダメだと思われる。
まぁ、見られても相手は口に出しにくい制約魔法を使ってるからモヤモヤした気持ちのままでいるとは思うけれども……。
「さて、決まったら早速……」
「ところでさ? ルノー? 君、リアちゃんに無詠唱教えたの?」
「教えたもなにも……。この子、ちゃんと話せるようになった頃には無詠唱出来てたからね? 話せない期間が長かったから自分で発見したみたいだよ?」
そんな会話を聞き、妾はあの頃はなかなか意思の疎通ができなくて大変だったなぁ~と、しみじみ思いに耽っていた。
現実はなにか言えば父上はどういうわけか理解してくれたけれど……。あれ? 父上の天職ってなんなのじゃろ……。
とりあえず赤子の妾が「あーあー」「うーうー」言ってる間、この2人は楽しげにドカーンと魔法を使ってストレス発散してるし……。
実は羨ましかったんじゃよなぁ……。
その頃の妾の遊び道具はアールがちょこっと出した水でムニムニ揉むだけの生活だったので、それはさすがに飽きる。
なのでムニムニしながら耳に入る魔法の呪文を心の中で唱える練習をしていた。
ーーが、幼いながらにも火は危険。水は出せない。土は汚れる。消去法で風。
魔力の枯渇ギリギリを繰り返し、知らない間に無詠唱が出来るようになっていた。
枯渇ギリギリを繰り返したお陰なのか妾の魔力は驚くほど増えたのだが……。
「地点を登録するには1度その場所へ行かないと登録できないからね?」
何故か魔法を作ったのは妾なのに、転移魔法を最大限に活かしているアールが父上に説明をしていた。
まぁ、アールは先生じゃし? 教えるのは上手。要点もまとめていて完璧。
そうして少し時間が経つと父上はこの私室を登録できた。
「あとは向こうの部屋を登録すれば良いのかな? ルノー、頼むね?」
ニコニコと笑顔を張り付けた父上を無言で担ぐと目の前から消えた。
そしてすぐにアールだけ戻ってきて、少し経ってから父上は帰ってきた。
「へぇ、便利だね。瞬間移動って……。この分だと秘密裏に実家にも行けるな……。ルノーがイメージしてその人間のところにいくことができるならやれそうだ……」
……ふっ、グッバイ。妾の静かな領主生活。
他人の貴族の視察は避けたいと言う理由でひた隠しにしていた魔法を父上に教えてしまったからの……。
絶対に毎日やって来るに違いない。
それに父上はショートスリーパーじゃからきっと夜中に起きてから夜明けまで領館いると思う。
ついでに転移して城でお祈りして、ご飯食べたあとは休憩とか言ってたから午前中に回復薬を飲みながら領に来て視察してそう……。
あれ? もしかして父上がそのままの姿で視察してたら大事なのでは?
思わずジーっと見つめつつ、首をかしげていると父上がこちらを見ていた。
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