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妾じゃなくても……
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しおりを挟むお祈りを終えて、相談? も終え、帰ろうかと思ったのだが父上からの朝御飯とお昼寝のお誘いに妾は負けた。
じゃ、じゃって! 魔力減ったし、寝る前のご飯食べてないし……。
実際、お腹ペコペコなんじゃも……。飢え死にしたくない。
そして父上とお昼寝は久し振り!
え? 妾は思いの外、ファザコンじゃけど?
食堂の席につくと急遽やって来たはずの妾の分も用意されていた。
おお、しかも妾は時間的に朝御飯でも、なんだか夜食っぽい……。
「うわぁ! 朝起きたら姉上がいるなんて嬉しいな!」
「リアちゃんもここで暮らせばいいのに……」
ジェイルは目を輝かせ、母上はニコニコと笑顔だった。
なんで二人ともそんなにキラッキラと輝いてるんじゃろ。
……と、言うかここで暮らすじゃと?
妾にとってメリットが1つも……いや、1つしかない。
父上との昼寝はメリットじゃの! 父上の匂いはアールと同等に落ち着くんじゃもん……。うん、仕方ない。
でもデメリットの方が多すぎる!!
「それだけはヤじゃ! 魔窟参加はお断りなのじゃよ」
プイッと顔を背けると母と弟は「魔窟……」と呟いてなにやら納得した顔をしていた。
絶対にあの人族の小娘や愚弟達のように妾を心の中では「ちんちくりん」と絶対に思っているに違いないのだ。
妾は他人からしたら永遠の子供の姿じゃから「ちんちくりん」は正解なのだろうけれども、それを察知したら恐ろしいのがこの場だけでも……。いや、確実に目の前に三人はいる。
魔窟よりも実はそっちのが怖かったりする。
「ジェイル。悪いが今日はリアちゃんとお昼寝休憩にするからって休むねって宰相に伝えてくれるかな?」
「え? ……父上、良いなぁ……」
「リアちゃんも一緒にお祈りしちゃったからね……。魔力をたくさん使っちゃったんだよねぇ~……」
その言葉にコクリと頷けばジェイル含むその場にいたもの達は驚きの表情であった。
「あ、姉上! 体は大丈夫ですか? 供物は大量の魔力なんですよ?」
「ん? 大丈夫じゃよ? 妾、父上似で魔力特化じゃから……」
え? なんで皆と言うか父上以外はポカーンと変な顔しとるんじゃろ。
別に呆れるような話をしてないじゃろうに……。
「…………あの? 姉上は魔法ですと何処まで楽に倒せるのですか?」
「ん? なんじゃろな……。とりあえずマンティコアくらいなら魔法じゃと一瞬じゃから楽しむために双短剣で相手をしてるんじゃけど、それですら楽に倒せるからのぉ………………え? なんじゃ、その顔……」
皆と言うか、父上以外は今度は両頬に手を当てて口をパカーンと開けて絵画のような面白い顔をしていた。
別に変な話はしてないのに皆、大袈裟じゃの……。
「えっと? リアちゃん。ルノーは何の武器で戦ってるのかな?」
「アール? うーん、アールはその日の気分によって違うからの……。片手剣、双剣、双短剣、両手剣、槍、双槍、ロング鞭、糸、魔法、素手、鉤爪……その日の気分?」
ちなみに妾としては今度アールと作る予定の銃剣を2個持ちしたい。
「えっと? マンティコアって魔法で一瞬で倒せる魔物のランクでしたっけ?」
「妾、地属性の低級魔法の石飛ばすやつは岩が飛んじゃう。砂嵐なんて辺りが一面砂漠になっちゃうし……」
「あぁ、それもそうだね……。小さいときから地属性はスゴいもんね……」
懐かしげに父上は言うと何故か皆はゆっくりと首を横に振っている。
「えっと、とりあえず一瞬で倒してしまう魔法は……」
「土属性関係なく針系統、嵐系統は確実じゃな」
「……えぇっと?それで何匹ほど」
「範囲内に入ってれば全部じゃな。本当に魔法はつまらなくての~……」
キャッキャとはしゃいでいると父上はニコニコと笑顔でウンウンと頷き、それ以外はポカーンとしていた。
「あの開拓の日々は楽しかったよね、リアちゃん」
「うむ! オークのコロニー潰しが楽しかったのじゃ!」
「あー! オーク王がいると中々オークと言えど戦力あるんだよね! リアちゃんが楽しそうだから皆で探し回ったんだよ? でも徐々に無くなっちゃってつまらなくしてたらダンジョンが何故か出来たんだよね……。危険だから最終的にルノーがダンジョンの上に学校を建てて管理してるんだっけ?」
「そうじゃよ? だから専修学校の冒険者クラスの授業の場としても使えるから一石二鳥…………あれ? 母上とジェイルは食べないのかの?」
ぱくぱくと食事に手が進んでいるのは妾と父上で、ジェイルと母上の二人は面白い顔をしたまま全く食べていなかった。
「あの……? 姉上? 姉上の天職のレベルって……」
「知らん。面倒くさくてチェックしとらん。チマチマと見る暇あったら仕事しとるしの……」
「あー、あのレベルアップのおまけポイントの振り分け面倒だよねぇ……。俺も王になる前から面倒で見てないや。体力と魔力を気にしてれば特に必要ないし……」
わかるー! と、同意すれば皆から「マジか!」みたいな目を見開いた感じで見つめられた。
え、常識なんじゃろ? あるあるネタなんじゃろ?
だって父上とアールが昔、お酒飲みながらそう言ってた……。
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