吸血鬼領主~体は子供体型でも妾、大人じゃもん!~

けいき

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妾じゃなくても……

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「父上~っ……」

 少しばかり領を抜けるからと執事に何かあったら庭にオープンしたお店に居るアールの奥方達に言うように言付けるとそのまま転移をしてきた。
 自分に割り当てられたが現在目安箱として機能している部屋へと移動し、太陽はまだ出ていないが廊下をスタスタと歩いていると目的の人物が前を歩いていたので声をかけたのだ。

「…………ん? ……リアちゃん、おはよう。今年は何だかよく遊びに来てくれるね~っ! もしかして向こうで何かあったの?」

 父上は「よいしょ……」と呟くと何故か妾は抱っこされ、そして何処かへ行く途中だったのか歩き出した。


 うむ、父上のその嬉しそうな笑顔に心がズキズキとかなり痛む。


 何故ならば転移の魔法はもうかなり前に取得していつでも城へ来られる状態だったのになにもしてこなかったからだ。
 強いて言えば父上や母上の顔も思い出せないくらい会ってなかった。
 かなりの回数で手紙のやり取りしてるから十分じゃと思ってたんじゃわ……。

「あれ? 父上はどこかにお出掛けなのかの? 部屋とは真逆じゃよ?」

「あぁ、コレから朝のお祈り。お仕事なんだよね……」

 あ、そう言えばそうか……。

 この国は基本的には無宗教。
 建国当初から今に至るまで、宗教に関しては絶対に他人に迷惑をかけないのを原則に個人に任せるスタイルである。
 妾も父上も無宗教なのだが、国王の務めの一つがお祈り。
 早朝、城の中にある礼拝堂と呼ばれる場所で国民が1日健やかであるようにとお祈りをする。

 だが、基本的に無宗教なのに誰相手に願ってるのだろう?

 ーーまぁ、聞いてはいけない気がする面倒くさいから聞かないけれど……。

 連れてこられた場所は確かに神聖そうな礼拝所と言って良さげな場所で、外にいると言うと「太陽が出て、お祈りを終えて出てきたら倒れてるとか本当に怖いからダメ!!」と、結局中へ連れてこられた。
 父上のお祈りの姿をただじっと見ているのも何なので横に並んで一緒にお祈りすることにした。

 父上が国民が1日健やかであれと願うのならば、妾は国民が1日穏やかに暮らせるよう祈ろう。

 穏やか=静かが一番じゃろ!!

「リアちゃんは何をお祈りしたの? 随分と頑張ってたね」
「ん? 妾、特に頑張ってないのじゃけど……」
「あれ? 疲れてないの? あんなにごっそり魔力を持っていかれてたのに……」
「ん? ごっそり魔力?」
「え、どうしたの? 気分でも悪くなった?」

 父上は「どうしたの? 大丈夫?」と首をかしげ、妾は「なんで魔力?」と首をかしげた。

 話を聞くと、どうやらこの朝のお祈りは自身の魔力をもってこの国の守護を担当する神様へお祈りというかお願い? をするらしいのだ。
 つまり守護神に捧げるのは金でも食べ物でもなく、供物は祈る者の魔力。
 国王は完全なる国民の生け贄であることが判明した。
 まぁ……国を作るにあたって守護神も生まれたばかり。力が無いからとも言う……。
 ちなみにお祈りをしなくなったら守護神の力も薄まって最後は消滅。守護神の消滅と共に国も滅びるのだそうだ。
 なので毎日のお祈りは欠かせない。

 そりゃ頭のよく回るタイプの貴族の人達は王様になりたがらないわ……。
 抽選会でホッとしてる顔がかなり印象的じゃったもん。
 朝からごっそり魔力持っていかれるとか……。下手したら魔力の少ない者が国王になったら死亡するのでは? と思うが如何せん、国王は国民の生け贄。

 そう、国王は国民の生け贄なのだからお祈り中に魔力枯渇で死……干からびたとしてもそれはそれでありなのかもしれない。

 何故ならば国王は国民の生け贄だから。

「……あ、妾の魔力。1/3減ってる……」
「おぉ、やっぱりリアちゃんは魔力が無駄に多いね……。そこもパパ似なのかな?」

 妾でこんだけ持っていかれてもケロンとしている父上は妾と同じで無駄に魔力が多いと言うことか……。

「とりあえず父上が1日健やかにって祈るなら、妾は1日穏やかにと……」
「うわぁ、リアちゃんってば優しい子だねぇ~っ! やっぱり争いもなく静かなのが理想だよね」

 礼拝堂の中にある場違いなソファーに座って休憩していた。

「それで? 今日はどうしたの?」
「え、あ、うん。あの、コレ……なんじゃけど……。この印って誰からかわかるかの……。妾、記憶になくて……」

 例の封書を取り出すと父上の綺麗な顔が一瞬で歪んだ。

「…………この蝋の印はジェファードだね」
「え! どうりで見たことないと」

 中の手紙を取り出して読むと歪んだ顔がさらに眉間にシワを寄せて険しい顔へと変化した。
 え、手紙一つで顔がこんなにも変わるものなのかの?

「父と兄を飛び越して姉に送るものなの? ここにデカデカと父兄って書いてあるのに?」
「うーん、ジェイルにコンプレックス抱いてるから正体不明の妾にしたとか……」

 とりあえずご飯にしようと頭から父上の身に付けていたマントを被せられ、芋虫にされて抱っこされた。

「リアちゃん、朝御飯食べたらパパとお昼寝しようか……」
「……ん? 父上、仕事は……」
「あぁ、ほら朝からごっそり魔力持っていかれるだろう? だからお昼御飯まで魔力回復のために実は休憩なんだよ。午前中は宰相が色んなモノをまとめて、お昼御飯食べてから15時まで聴取を含みつつ纏められたものをチェックして、休憩を挟んで夕方まで商人とか会合かな。んで、夕食後は今の時期だとリアちゃんの嫌いな魔窟の時間だよ」

 うわぁ、父上が魔窟って言った!
 ゆっくり談笑とか娯楽じゃなくて魔窟って言った!

「いつもなら魔力回復薬を飲んで書類くらいは見たりするけど、今日はリアちゃんと寝ようかな」











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