吸血鬼領主~体は子供体型でも妾、大人じゃもん!~

けいき

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妾じゃなくても……

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 あえて言おう。妾、なんでここに居るんじゃろ……。





 遡ること二週間前。妾宛によくわからない手紙が届いた。

「なんじゃこれ?」

 蝋で封はされてはいるが、出した相手がわからない。
 強いて言えばこの蝋に刻まれた紋様もどこの家のものなのかわからない。
 父上譲りの鑑定スキルを使っても嫌な感じしかしない。故に開けたくないという思いが勝っている。
 ただ、嫌な感じというのは本能の話で、スキルとして出た結果は招待状とのことなのだが……。

「招待状ほど嫌な予感しかしないのじゃよなぁ……」

 そもそも招待状ってなんの? と言う話である。
 確かに今は社交シーズン。夜な夜な貴族はパーティである。
 ただし、はっちゃけているのは一部で、内情とか考えると魔窟以外の言葉は見つからない。

 そして妾の立ち位置といえば、一応毎年今年度の第一王女。そしてアメジール領の領主代理代行。
 つまりは父上が国王なので、辺境伯爵家の当主代理代行。
 フランドール連邦王国の防衛の要の一つなので基本、社交シーズンであってもお断りできるのだが、目の前には招待状があった。

「ここにコレが届くと言うことは王女としてではなく辺境伯爵家としての招待状となるわけだが……」

 如何せん、相手はどういうつもりなのだろうか……。
 自信をもって言うことではないが、この国の国民になった日からデビュタントする見た目年齢でもないのでハッキリ言えば引きこもりである。
 一応、念には念をいれて魔法による罠があるのかもしれないと念入りにチェックしたがただの封書。
 それ故、逆に怖かったりもするのだが……。

 ただ、この手紙ごときに時間を割くのは無駄なので封を開けると手紙が入っていた。



 私立イポス&マルコシアス専修学校 父兄参観のお知らせ



「………………は? 父兄参観? 妾、姉じゃけど?」

 私立イポス&マルコシアス専修学校。
 フランドール連邦王国の王国騎士団に所属している騎士達の出身校としても有名で、勇気と大胆さ。且つ戦術、兵法を学ぶ学校である。
 学科は戦術学科、騎士学科、魔法騎士学科。

 戦術学科は戦術や兵法等を学び軍師として育成する学科。
 しかし軍師の採用試験は難しく狭き門。確かに軍師だらけとか正直に言ってしまえば要らない。
 つまり勉強したからと言ってなれるわけではないので基本的には騎士として戦える術も学ぶ為に文武両道を求められる。だが、いざという時の為に戦術学科出身の騎士達は騎士学科出身の者より人数としては多い。

 騎士学科はその名の通り騎士としての育成。つまりは騎士道を学び、剣の技術を極める。

 魔法騎士学科は騎士学科の授業にプラスして魔法も勉強する。魔法は適性があるので誰でもなれるわけではなく、エリート候補として人気の学科。

 ちなみに魔法騎士学科に愚弟達が通っているらしいのだが、だからといって父兄参観のお知らせに関しては「で?」というしか他ない。
 しかも専修学校は本来、将来を見据えて技術を学ぶ学校である。
 父兄参観の話は聞いたことがない。いや、無かった筈だ。

「愚弟達の罠、じゃろか……」

 参観日の日付は二週間後。時間もそんなにないのだ。
 ……と言うか、なぜ皆が忙しいこの社交シーズンに父兄参観の予定を作った?

「あ、王都に貴族が集結してるからか……」

 生徒は何も貴族だけではない。適性と学費を払える余裕があれば誰でも通えるのだ。
 それこそ適性と金さえあればこの前アメジール領から出ていった人族の者でもだ。
 卒業して採用されれば即騎士の仲間入り。
 ただ人族の場合、今現在は国民とは言えどもやはり労働移民である。
 しかも定期的にクーデターと言う名の断ざ……。逆か? 断罪ごっこと言うクーデターを定期的に各地で起こすものだから、この国においては人族に信用などない。中には信用できるものはいるだろうが、世界で一番多いとする人族は個人よりも全体で見られてしまうのは仕方ない。

「と、言うよりも専修学校で父兄参観とか聞いたことないんじゃけど……」

 手に持っているプリントに律儀にも第一回父兄参観のお知らせと書かれていて、しかも本当に律儀にタイムスケジュールが載せられていた。

 10時から12時まで 騎士学科による武術トーナメント。
 12時から13時まで 昼食。歓談をお楽しみください。
 13時から14時まで 戦術学科によるデモンストレーション。
 14時から16時まで 魔法騎士学科による魔法含む武術トーナメント。

 …………これは保護者の目は本当に必要なのかの?
 そして保護者の昼食を用意してまでやる必要はあるのだろうか……。
 歓談をお楽しみくださいって何について話すのじゃ?

 あぁ、アレかの?
 騎士学科のトーナメントは迫力がありましたな! ……とかかの?
 いやいや、怪我とかない安全なトーナメントに迫力も何も……。

 妾からしたら私立校だし、国の援助はないから好きにやれと言いたい。
 強いて言えば妾を巻き込むなと切実に思う。

 よし、面倒なのはジェ…………いや、父上にしておくか……。
 なんか、父上をすっ飛ばしてきた気がする。

 仕事が終わったら父上も起きている時間なのでこの手紙は後回しにして仕事を進めることにした。











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