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今日は何の日

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 アールの私有地にあるヘドロ湖(仮名)の掃除が終わったのは夜明け前だった。

「クリス、お疲れ様。あと、ありがとうね……。魔法をいっぱい使ったから疲れたでしょ……。よしよし……」
「アール……。妾、何だかとても眠いのじゃ……」

 抱っこされた腕の中でコクリコクリと船を漕ぎつつもなんとか会話をする。

「本当にお疲れ様。お休み、お姫様」

 抱っこしたまま寝かしつけられた。

 そう言えば夜だったのにアールはエロフじゃなかったな……。





「ん、んん……? あれ、ココ何処じゃろ……」
「あら、目が覚めたの? おはよう。規則正しいのねぇ、偉いわぁ~♪」

 目を開けると至近距離で美人の女性がいた。
 そして頭を撫でられて早起きしたことを偉いと褒められた。

「……お、はようごじゃ、ます……。あの? ここ……」
「旦那様がね? 夜中に連れて帰ってきたのよ。疲れさせたのは俺のせいだし……とか言って旦那様がお風呂に入れようか? って言ってたんだけれど、安心して! 責任もって私とアンジェリアがリアちゃんをお風呂に入れたから!!旦那様が疲れさせたとか言ってたけれど、なに無茶させたのかと心配だったのよ? 大丈夫? 体に痛みはない?」
「あぁ……心配お掛けしてすみません。どちらかと言えば土を大量にもらったので、日頃のお礼もかねて私有地にある湖の掻い堀りと言うか土さらいを……」

 体を起こして周囲を見渡すと妾の部屋と似たような作りの寝室があった。
 話を聞くと小さい時によく泊まりに来たままの状態らしい。
 まぁ、確かに父上達が王都に行ってから一人が寂しくてお泊まりをよくしていたのだが……。
 まさか、そのままの状態にしてあるとは……というか、綺麗に改装してあるような……。

 あれ?ココまで綺麗じゃったっけ?

「さぁ、着替えましょうか! 何が良いかしらねぇ」
「え!」

 まさか着替えまで用意して…………何かおかしい。
 今、何が良いかしらと言った気がする。

 1着じゃないの? …………え?どう言うこと?

「あ、あの? セシリア様? 着替えって……?」
「ん? 勿論リアちゃんのお洋服よ?」

 アールの第1婦人。セシリア様は笑顔だった。

 いやいや、ちょっと待って?
 何で妾の服があるのじゃよ……。怖いわぁ……。

「あら、なんだかもの凄く怪しんでるわね。大丈夫ですよ? これらの服はコーデリアが作ったものですからね。勿論、その寝間着もコーデリアが作ったのよ? よく似合ってるわ?」

 カラカラと笑いながら言われると視線を下に下げて寝間着を見つめると普段着ている寝間着に似たセパレートの形状だが、こちらの方が些か可愛い。
 普段のものも可愛い方ではあるが、こちらはフリルとレースの量が多め。

 つまりはフリッフリ。ズボンの裾も腰回りにもフリッフリ。
 全体的にフリッフリ。

 なんか、この分だと用意されてる服も……。

「フリッフリ……」

 予想通り、目の前にはフリルとレースにしか目がいかないワンピース達が待ち構えていた。
 デザインはそれぞれ違うものの共通しているのはフリッフリのみ。
 それらをセシリア様は楽しげに眺めて「これなんていかがです?」とか言いつついくつかある中でも一番のフリッフリを手に取った。

 スカート部分はフリルとレースが段違いになってるフリッフリ。
 袖も肘辺りからフリッフリ。
 襟のビブカラーもフリッフリ。
 ベストとコルセットが一体になったものはシンプルだがフリルはやはり存在していた。
 そしてアクセント達のリボンはレース。

 え、なにそれ! もしかして人形にしたいの?

 首を静かに横にフルフルと振ると残念そうな顔をされた。
 そして無言で「どうしてもダメなの?」と言う言葉を顔に貼り付けてじっと見つめられた。


 コーデリア様はそんなにフリッフリが好きなのかっ!
 そしてセシリア様もっ!





 だがしかし妾は負けた……。
 どうやら妾は強くはなかったらしい……。

 上には上がいた。

「さぁ、ご飯にしましょうね?」

 何故か手を繋がれて、ダイニングに移動するとアンジェリア様がコーデリア様と料理を運んでいた。

 ……てか、コーデリア様はフリッフリを着てないではないかっ!! ものスッゴクシンプルなドレス!
 どう言うこと!? 逆にあのフリッフリはなんじゃったの!?
 ……と言うか、なんで奥方二人が食卓の用意をしてるのじゃ?

 確か、この邸にはちゃんと料理人がいたはず……。数人の……。
 不思議そうに見つめているとそれに気がついたのかセシリア様が「あれはアンジェリアの試作品ですよ? ほら、前にお肉をたくさん渡したでしょう?」と教えてくれた。


 あぁ! 魔物肉ジビエかっ!!


 何だか急に楽しくなってきた。
 このフリッフリの服の憂鬱なんてバイバーイと手を振る間もなく呆気なく吹き飛ぶくらいには!

「おはようございます! コーデリア様、お洋服ありがとうございます。アンジェリア様、それ美味しそうなのじゃ」

 声をかけると2人はバッと顔をあげるとわなわなと体を震わせて「かーわーいーいーっ!!」と叫んだ。

 あー、そうか……。













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