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今日は何の日

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「ちなみに良い所とは?」
「教えたら自分だけで取りに来ちゃうでしょ?」

 全く失礼な! 妾は犯罪何てものはしたくないのじゃよ!
 不法侵入は犯罪じゃろが!
 不法入国、不法入領なんて立派な犯罪じゃろがっ!!

 そう言うとアールは何故かニヤニヤしていた。

 うわ、なんか気持ち悪っ!

 てか、なんかからかわれてる気がしてならない。
 妾で遊ぶのはやめてほしい。

「妖精の国。フィンドラールにある俺の私有地だよ。そろそろ湖を綺麗にしたいなぁ~と思ってたんだ。だから掘削ついでに水を抜かないで湖底を一緒に掃除しない?」
「よし! やろう!! 最近ヘドロの再利用方法発見したしな!」

 はい、決てぇ~い♪と言うなり瞬時に転移されると夜でもわかるくらいに淀んだ湖がそこにはあった。

 夜でもわかる淀みって……。

 ヘドロが溜まっているのだろうか。月明かりの反射もあまりなく、やはりというかかなり濁っている。
 独特の臭いもそれなりに……ではなくすごくドブ臭い。
 何が起こったのってくらいに哀しい湖となっている。
 夜でこんなにも哀しくなるのだから昼間は更に哀しくなるのだろう……。

「あ、有毒物質はないよ? ただ、ヘドロの層が分厚くてね……。溜まりすぎたみたいなんだ。まぁ、譲り受ける前からかなり溜まってたけれど……」
「もし掘削した岩盤に化石が出てきた場合は返した方がよいか? 妾、そんな太古のロマンとか微塵も興味ないし……。それに歴史的な意味合いでもこの国に置いておくべきじゃろ? 加工したら加工したで良いことありそうじゃけど……。面倒」
「うん、そうだね。くれるならもらうよ」

 と、水辺に移動すると少し水に手を突っ込んだ。
 どうやら水自体に土を感じるので湖全体でかなりのヘドロがある模様。

「アール。ヘドロの下の岩盤を本当にもらってよいの?」
「良いよ? お掃除のお礼のつもりで元々多めにあげようと思ってたし」

 やった! 妾、がんばる!!

 そうして先にヘドロの下の土をもらい、マジックバッグにごっそりとしまうと、次にヘドロの層に手を出す。

 魔法は本当に便利だと思う。
 何せ通常ならばヘドロには水分が含まれているが水を排除してサラサラの状態で集めることが出来るのだから……。
 本来はヘドロを天日干しして乾燥させるのにそれが必要ないのは本当に楽だと思う。
 もし魔法がない状態だと思うとゾッとしてしまう。
 一生かけてもこのヘドロは絶対になくならないと思われる。

「本当にクリスは水と相性が悪いんだね……。ここまで水が混ざらないのは珍しいよ? サラッサラというかカピッカピ? 本来なら魔法であっても仄かに水が含まれるのに……」
「うぐぐ……。氷系の魔法なら使えるが、何故か液状態の水だけは相性が悪いのよな……。低級魔法ですら扱えん……」

 そう。意図して水を排除してヘドロを集めているのではない。
 水がわざわざ避けてくれるのだ。
 なんて協力的なのだとポジティブに思うべきか、嫌がられているとネガティブに思うべきか……。
 とりあえずサラサラのヘドロだったものを立方体のブロックにしてそこら辺に放置していくとアールがそれをしまっていた。
 その姿は手慣れたもので些か楽しそうだった。

「そう言えばクリスはお風呂の場合は水に逃げられないの?」
「あー、お湯だと大丈夫じゃよ? 仄かに火の物質が補助してくれるからの……。冷たい水だけじゃよ……。お湯とか果実水。紅茶みたいに不純物が混じっていれば飲めるけどまっさらな純水だけじゃと飲むことすら出来んもん」
「うーん、それってどうなの……。飲むことが出来ないとか、それって大丈夫なやつなの? あー、んーと? あ、ならさ? 水の中で息はできるのかい?」

 考えてみるとそう言えば出来る。

 強いて言えば水が何でかこちらを意図的に避けるために体の周囲に空気の層が出来る。
 つまりは服すら濡れないのだ。
 でも水の魔法は使えないから土と風が周囲に膜を張って守ってくれてるのだと思われる。

「あぁ、成程。それの方が有力だね。ふむふむ……」
「ふふ~ん♪ ふっふふ~ん♪ ヘッドロ、ヘドロ~♪」

 ごっそりともらいにもらい、ポイポイとブロックを作っては後ろに放るを繰り返した。
 まだまだ作る気満々なのだが、辺りのドブ臭さは軽減し始めた気がする。

「結構処理したのにまだまだあるね……」













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