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※何があったのかって言われても……3
しおりを挟むなんというか変に隠れたお陰で見つかっていないのだろうけれど、個人的に言わせてもらえるなら気絶したらダメだろう。
見つかる前に逃げろよと言いたい。
そして安全圏まで離れたら気絶したら良いと思う。
強いて言えば安全圏は町の宿屋の個室の中だけどね……。
足が妙に細いところを見ると戦闘職ではなさそうだから、町に入ってすぐに気絶したら路地裏に連れ込まれて玩具のように犯されて飽きられたら娼婦よりも酷い売春の商売道具として生き続けるか、拐かしにあって他国で性奴隷として売られるかだろうし……。
モンスターから人間の相手になるだけであまり現状は変わらない。
というかモンスターの方が言葉が通じない分ましな気もする。
番になればきっと人間相手より優しいかもしれない。
娼婦という名称はイメージは悪いが実際はちゃんとしている所ならば娼館の店主が責任をもって娼婦という商売道具の体を性病から守ってくれる。
だが末端の末端。強いて言えば娼館に所属せずに客をとる売春ならどんな相手でも客として受け入れなければ生活できないわけだし……。
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あれ? もしかしてルーって兄さんに助けられなかったらこの売春で性病まっしぐらというバットエンドを迎えていたんじゃねぇのか?
………………今度から兄さんを神として崇めようかな……。
「あはは! お前達、そいつらに早く産み付けるんだ!」
妙に媚を売るような気に障る男の声がし、俺達もさらに警戒しながら隠れていると遠くからやって来たのは上半身人間で下半身は触手の塊という変な生物だった。
いや、尻は丸足しだからもしかしてあの妙に細くて短めの触手は人間でいう男性器? あー、なんかそんな気がしてきたな……。
足以外むき出しなんだから、つまりはほぼ全裸。
………………ちっちゃ! いや、短っ……てか細っ!
そんなつまらないことを思っている間にも犯されてる男の口からは「もう無理ぃ」だの「もう入らなぁい」だのどちらかと言えば悦んでいそうな声が聞こえた。
ハートマークが語尾についてるような気もする。
うん、その喘ぎに苦痛は微塵もなさそうで良かったよ……。
「っひ! うまっ、産まれりゅぅ~っ!」
と一人が叫ぶと尻から注がれた液が勢いよく出て、合間合間に緑の大きな蜘蛛みたいなのをたくさん出していた。
何て言うか、呂律も回らないくらい気持ちよくなってんじゃね?
「え、やだぁ、産卵? 産卵? いや、出産? 産んじゃうの? あぁ、凄い。小さめのタランチュラみたいな触手の塊が自力で抉じ開けて出てきてる~……」
嫌がるどころか愉しげな愛流の実況的な言葉に俺も含めてもはや絶句。
しかも半モンスターみたいなのは赤いのと交尾を始めるなり恐ろしいほど腹はパンパンに膨れている。
お前はそのまま腹を破裂させちまえよ! と叫びたい。
確か兄さんがいうにはあの赤いのも緑のも速さは異なるが触手の体液はどっちも毒って言ってなかったっけ?
【そうなのヨン! あの赤いのは即効性の媚薬で副作用はなんと精液が超大量に作られるのヨン! 毒が消えるまで持続するのヨン】
【出しても出しても作られるから地獄ナリっ! でも話のネタにはもってこいナリっ♪ アイルっちにおすすめナリっ♪】
アイルは確かに好きだと思うけど、話のネタにするには些か下手物過ぎるだろ。
【そして緑のは遅効性だけど、赤とは違って精液は作られないけども媚薬の強さは赤より凄いのヨン!】
【精液出なくなっても効果は消えないから地獄ナリっ! でもやっぱり話のネタにはもってこいナリっ♪】
何でか楽しそうだったフ・クシャに少し注意すると父様が「あ……」と呟いた。
どうしたのかとジェラールが聞くと「あの金髪の……。一年前くらいに任務中に姿をくらませた王の性処理係兼密偵の僕だね……。王に抱かれる度に私のところに来て自慢してたから何となく顔は覚えた……」と言うと愛流が何故か食いついて質問などをしていた。
それを聞くたびにジェラールは真っ青になり、師団長は顔を赤くしていて、愛流は嬉しそうなのを隠すように無表情で聞いていた。
ただ父様の声に被せるように犯されてる男どもの嬌声とでもいうのか、悦んでいそうな声がすごく邪魔をする。
しかもあの性処理係の「産まれるぅ~」の声が一番悦んでいそうで思わず「煩い!」と怒鳴りたくなった。
とは言えこうやって話している間にも色んな男の尻から子供の触手モンスターが生まれていて草の上に無数の蜘蛛みたいなのがウジャウジャしていた。
「さすがにあの無数というか子供の数はキモい……」
そんなことを呟いたら子供を産みに産み、グロいけど孵ったヤツが無理矢理外に這い出たからなのか、なんていうの? 脱肛? いや、脱腸?
……てか、初めて見るけども意外と腸って思ってたよりもピンク色なんだなぁ……じゃなくて、脱腸したのか、肛門辺りが変になった状態で疲れはてて気絶したらしい男共を今度は食事として食べようとしていたので思わず魔法で攻撃をしてしまった。
誰一人として食べられずに間に合った様なのだが、俺たちの存在がバレてしまった。
「あれぇ? そこに女もいるじゃないですかぁ~……。うひひ、男と違って子供いっぱい増やせますねぇ~……」
と言いながらこちらを誘惑しようとしているのかトロリとした目線を送ってきた──が、俺と愛流に関しては視線を完全に無視。
いや、無視というよりもなにしてんの? コイツ……みたいに我関せずと見てたのが正解。
父様と師団長も別に無表情で少し恥ずかしげにしていたのはジェラールだけだった。
よくよく思えば父様と師団長はあの(雰囲気だけ)エロ魔神な父さんと四六時中一緒に旅をしてたんだからそれなりの免疫はついたのかもしれない。
あの父さんと比べたらこいつが人間の体でしかも裸で誘惑してきたって有象無象だよね。
うん、価値なし! 勝ち目なし! 負け犬決定!
「あ、そう言えば前に兄さんがルーが虫関係はウォールで潰してたって言ってたっけ?」
そう呟くと俺は生まれたばかりの子供が集まって山になってるところに逃げられないようにウォールで囲むとそのサイズにぴったりの厚みのある石の岩で上から押し潰した。
「ヤト、なんか面白い戦い方したわね……。プレス?」
「あー、そう言えば伝えるの忘れてたわ……。あの触手の塊の体液は媚薬的な猛毒らしいからみんな気を付けてぇ~……。精液と言うのか樹液と言うのかわからんけども血液……いや、やっぱり樹液? ──つまりは液体全て媚薬っぽいよ?」
そう言うと父様も師団長も気持ち悪そうに見つめていて近くに来ないように風魔法で戦っていた。
「よし、ドライ!」
そんな風魔法が横行している最中聞こえた声に思わず隣に意識を移すとそこにはなぜか愛流は触手の塊に向かって乾燥させる魔法を使った姿と残骸があった。
なにやってるのかと聞いたら植物には水分って言うものが必ずあるのだからそれを極限まで乾燥させたらしい。
人間で言えばミイラにしたと死ぬ前まで何度も見てきた笑顔できっぱり言われた。
「あ、成る程」
ってそんな会話とか戦闘方法とかはどうでも良いや。
あ~……。なんつーか、兄ちゃんはこんな見知らぬ男達の触手姦よりもルーだけを目に入れていたいよ……。
マジでルーが恋しい……。
それなのに現実世界ときたら俺の目の前に広がる光景は干からびた元触手の塊に脱腸してピクピクしつつも気絶してる男達。
そして人間をやめたらしい蛸足男の亡骸。
なんてグロテスクな世界なのか……。
「あ、そろそろアナルローズも見飽きたし、土魔法でそれなりの太さのディルドで中に突っ込んで押し戻しちゃえば良いのかしら! よし、そうと決まれば──」
「ちょっ、アイル~っ! 野蛮すぎですからっ!」
おっと、現実逃避してたら愛流の暴走? を師団長がなんというか身を呈して止めていた。
思っていたよりも男らしい……。
俺は心のなかで拍手をしてみた。
◆
と、言う内容を抜粋して、抜粋して、抜粋して箇条書きにしたメモの様に内容のない説明をパパさん達に解りやすく説明したらどうしたことかパパさんは吐きそうになっていた。
……あれ? なんでだ?
触手の塊のモンスターに性的に犯されて、最終的に腸の中に卵を産み付けられて、中で孵ったそれらの全てを出産し、気を失った彼らを産み付けた触手の塊に今度は食事として食べられそうになってたから助けたって少し肉付けして話しただけなのにな……。
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