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残された奴等
しおりを挟む「父上、なんで俺──いえ、私はお祖父様に縄でぐるぐると巻かれているんですかね」
「ぐっちゃん、それは同じ状況のものに聞くことではないよ」
現在、現ランドルフ伯爵である俺、ハイネ。そして嫡男であるグレンの両名は縄で縛られソファーに座らされていた。サラに関しては元ランドルフ伯爵夫人が我儘ボディの件で別室にて説教中である。
「父上。ルカとヤトが!」
「わかっている。だけどね、ぐっちゃん。あの爺は俺達を縄で縛ったあげく重りまでくっつけて出て行ったんだ。親切にもドアの向こうは護衛がいるだろうね。だから我々があの子達を追えるわけがないだろう? この縄は魔法も物理も効かない罪人用のものだ。誤解を解く事しか今の我々には出来ないんだよ」
とはいっても相手の誤解を解きたくてもその爺は部屋にはいない。何故ならばルカが内心ぶちギレていたのかベッドやソファー。机やテーブル。絨毯等々あちらの家で使っていたものを懇切丁寧に隙間などない見事なタワーを作っていったのだ。嫌がらせだろうね、あれは……。
「ですが、ルカを──。あんな小さな子を手ぶらで追い出すなんて!」
「大丈夫だよ。あのタワーはルカに預けた一部しかない。現にルカの部屋にあったものは無かった。そして、ルカの手元には大量の食料もある。大丈夫だよ……」
ただ、ぐっちゃんの部屋のものは置いていかれた所を見ると無理だと思われたんだろう。まぁ、あの時俺もぐっちゃんも10人くらいに手足を拘束され、上に人が乗って押さえつけられていたからなぁ……。ヤトに同情されてしまったのはパパ、絶対に忘れない! しかも微妙に凄いなぁ~って笑ってたのも忘れないからっ!
「ルカのあとをヤトがすぐに追ったから大丈夫だよ。ルカは1人じゃない。落ち着いたら探しに行こう?」
「…………はぁ。でも今日からくそ不味い料理の日々に戻るんですね……」
ぐっちゃん。くそ不味いって……。それはさすがに口が悪すぎるよ……。駄目でしょ? そんなことを思いつつも窓の外を見ると家具タワーに悪戦苦闘しているようだった。
「あの後、アンドレア君は呆れたような顔をして単騎でピエタ・コスタに帰ったらしいね」
「えぇ、妙に冷めた目をしてましたねぇ。アンディはそれなりにルカを可愛がってましたからねぇ……。ジェラール殿も侍女や侍従、騎士たちと共にそのまま旅立ちましたから寂しくなりますね。ただ、ヤトの件で辺境伯の一族が荒れそうで恐ろしいのですが、それは大丈夫なんですか?」
その言葉に俺はヤトが殿下というのを思い出した。いや、忘れていたわけではない。ただ、ヤトは殿下の話し方は同じだが雰囲気が違う。だから思い出すことが少なかったのは否めない。
「あー……、うん……。しばらくは病気にならないことを願おうか?」
「病気に関してはあの2人はきっと平気ですよ。薬というものを持ってますからね。どちらかと言えば気を付けなければならないのは我々でしょうね」
それは確かに……。あの漢方とかいう薬は素晴らしいものだった。出来れば研究もしたかったのだが後の祭りか──。
「あぁーあ、それにしてもパパはルカとお買い物デートの約束してたのになぁ」
「そう言えばルカは物価もなにも知らないんでしたっけ……」
………………大丈夫だろうか──。
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