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ランプは世界を救う!?
しおりを挟む──とある日の朝。
「……あれ? グレン兄さんにゼノさん? 楽しそう──ではなさそうだけどなんの話をしてるの? ……そう言えばアンドレアさんがいないなんて珍しいね」
俺はそろそろモグラ仕事のために出掛けなくてはいけないので家族用のサロンに誰かいるかと顔を出したわけだが、大人2人が紅茶を飲みながら優雅(?)に過ごしていたので声をかけた。顔を見れば全く楽しそうな気配がしない。聞いてはいけない話をサロンでするわけ無いし……。
「あぁ、今日はアンドレアが母上の買い物の護衛として出掛けたので、3人で午後から鍛練をしようということになったので今は暇潰しです」
「それになんの話って言われてもなぁ……。ほら、ルカとグレンが酷い目に遭った木の根とか枝が固まった様なモンスター。仮の名としてランプって呼んでるけどソレの話なんだよなぁ……。楽しい話じゃなくてすまないな」
「ランプ……。ランプ……あぁ……はいはい」
あの動く媚薬……じゃなかった。えっと……一つ目、二つ目触手丸。あのランプさんか……。そう言えばあの触手は木や根っこ。なにかの茎とか蔓みたいだったからちょっとだけ気になってたんだよね……。
木だけに──とは言わないけども……。
「あ、そうだ! あのね? 僕、ランプの木みたいな触手が一切欠けてない完全体を一体ずつ欲しいんだよね……。個人的に調べたくてぇ……」
「「………………」」
「だから兄さん達、ちょっと暇なら東の森にいるのわかったし、緑と赤の両方を倒して持ってきてくれません? 生け捕りだなんて無茶は言わないですから……ね? ね? お願ぁーい」
両手を合わせながらニコニコと笑顔で言うと2人は思いきり嫌そうな顔をした。あー、リスクのことを考えちゃったのかな……。媚薬成分の体液とかの心配なら前にあげたレインコートを着て戦えばいいじゃんか……。なんでそんな嫌そうな顔してんのさ? さっきも言ったけど生け捕りなんて無茶は言わないよ? 出来ることならば体液が不足してなくて、傷が無い方が個人的には嬉しいけども……。
「…………ルカ、無茶を言うのは止めなさい。ランプの2体はこの場にあるので自ら倒しに行こうとしたり、他の誰かに行かせようなんて事は絶対にしないように!」
「えっ! あるの? 何でっ! どうしてっ!?」
「ルカ、とりあえず落ち着こうな? いいか? 初見のモンスターは見つけた騎士団が図鑑に載せるために研究するから俺達は緑と赤の一体ずつ保管して手元にもちゃんとある。さすがに乾燥させて本体はバラバラではあるがな……。ただ、コレらは内容が内容だけに隠蔽するために騎士団を辞めるときに一緒に持ってきたけど、どうするべきか話してたんだよ」
やったぁーーーーっ!
俺は無意識に万歳を何度か繰り返していた。万歳三唱どころではなくたくさんしたのは仕方ないと思うんだ。でもその姿を見たグレン兄さんにゼノさんは顔をひきつらせていたけど、俺は気にしないよ。ご機嫌だもんね! いやぁ、実はランプの触手って漢方とか生薬なんじゃないかって生活になれてきた頃からずっと気になってたんだよね! 領地に帰る前に殺りに行かないといけないかなって思ってたら手元にあるとかさすがはお兄様達なのですよ! 笑顔のまま両手の手のひらを見せるように差し出すと2人は顔をひきつらせていた。
「ルカ、お前は本気でコレがほしいのか?」
「うん、当たり前でしょ? グレン兄さんもゼノさんもこの場にいないアンドレアさんもいらないのなら早くちょーだい?」
笑顔で寄越せと言うとゼノさんは「あー……」と言いながら頭をガリガリ掻き、グレン兄さんは盛大なため息と共に呆れたような顔で見つめていた。
あぁ、あんな酷い目に遭ったのになんで? そう言いたいのかな?
「いらないなら早く頂戴よぉ~っ! 僕、これからモグラ仕事が行くんだよ? それになんの植物なのか気になるので早く下さい。毒とかろくなものでなければ即効消滅させるから安心して……」
猛毒なら焼却するべき? いや、毒ガスになったら嫌だからやめよう。だって仮にも媚薬のガスだったら嫌な予感しかしないよ? まぁ、死に直結するガスも嫌だけどさ……。ならとりあえず棄てるのは勿体ないし、もしものために毒を生成してみるか? イヤ、でもあの媚薬成分は使いようによっては薬になる気もするなぁ……。性機能が不能になった人にとってはなんというか待ちに待った夢のような薬なのではないか?
ランプは少子化を救う!
──かもしれない……。
◆
えっへへぇ~♪ 貰っちゃった~♪ 貰っちゃった~っ♪ 欲しかった触手とか色々、いや全部貰っちゃった~っ♪
全てをム・ゲンさんにお渡ししてから俺がスキップしながら嬉しそうにいなくなる姿をグレン兄さんとゼノさんはなんとも言えない顔をして見送っていたらしいとはミリアムが仕事を終えて帰ってきた俺の着替え中に教えてくれた。俺、あの後すぐにモグラのお仕事に出掛けたからグレン兄さん達とは夕方まで会わなかったんだよね~……。
さて、夜も深まり暇な時間になったからム・ゲンさんに預けてた元ランプさん達を調べ………………ん? ランプの触手がない、だと……?
【あ、ゴメンね? 俺たちも今日は暇だったからさ……。君の暇潰しの仕事を取っちゃったね】
うーんと、もしかしてこの身に覚えのないコレ等かな?
【うん、そうだよ。(元ランプ触手)って感じに書いておけば良かったかな? いつも暇なときにム・ゲンとユウ・ゲンの整理整頓を皆で手分けして手伝ってるからさ……。大量の『???』が、なんかイラッとしてつい調べちゃったんだよね。】
整理整頓。つまりは俺と兄のせいなんだね? 無作為にポンポン放り込むから……。
【んー、まぁ、そう言う意味ではないんだけど……。とりあえず全部君の世界にあるものだから安心しなよ?】
辞書るさん達皆、いつもありがとうございます!
お礼を言ってから俺はム・ゲンのリストを見つめていた。いやぁ、それにしてもマジかぁ……。マジなのか……。凄いな、ランプさん達……。以前根絶やしとか本当に酷いことを言ってごめんなさいっ!
今この瞬間からあなた方を尊敬させていただきます!
◆
俺の中で絶滅希望モンスターのランプさんが尊敬に値するモンスターへと昇格したわけですが、彼等はまじで保護すべきだと声を大にして言いたい。実はランプさん達の木とか蔓なのですが、主にイカリソウの茎にナルコユリの根、山薬、地黄にアマドコロの根、ハナスゲの根、肉従蓉、鹿茸……等々。内容があれだけど、全部滋養強壮、強精、不妊・インポ治療とかそういうのばかりが集まった凄い子達じゃん!
てか、山薬! 長芋(自然薯)を発見するとかマジなにこれ! しかもゴボウもいるじゃないか! 生なら煮物ができる! 乾燥したコレでゴボウ茶も作れる!
んでもってランプさん達の血というか、体液がまさかの漢方の精力剤とかどうしよう……。
いやん……、効果は絶大。
思わず現実逃避というか遠い目をしちゃったのだが、魔法で除菌とかクリーンを多用して安全なものに変えて酒と混ぜて薬酒として売るべき? 一応というか責任は取れないレベルの代物だけど、不能な人にとってはたぶん良薬だよね!
【……う、うーん……。血と言うか体液だったものに関してはそのままだと寄生虫というかランプの子種が見えないサイズで無数にいるからちゃんと殺しなね? 何なら触手の方もやった方が良いよ?】
「う~わ、無数の子種とかそれは気持ち悪っ!」
でも漢方薬は元々乾燥してるものだから加熱殺菌しても良いのかな?
それとも冷却した方が良いのかな……。でも殺菌となると加熱……。加熱、かな?
【聖魔法でランプの子種を焼ききれば? 聖魔法なら安心だよ? モンスターにとっては悪であり猛毒だけど、植物とか元来自然のものには無毒だからね……】
マジか……。聖属性の人が少ないのも納得だよね……。
◆
ふっふふ~ん♪
昨日の夜に聖属性魔法で浄化とかで綺麗にしたランプさんの触手~♪ 持ってきた羅漢果糖とブランデーで薬酒にしちゃうんだもんね~♪ 低糖質で健康的だもんね~♪ ……たぶん。
本日作ったランプさんの触手酒のラインナップはコチラ! イカリソウの茎は生薬のインヨウカクと言いまして、大脳を興奮させ、刺激性を敏感にし、末梢血管を拡張して血流を亢進させ、特に、陰茎海綿体を充満させる作用があるらしいのです。実際にこの酒は仙霊脾酒と言うらしいのです(辞書る調べ)。そしてナルコユリの根は漢方の黄精といって、昔、小林一茶が愛用していたらしいよ。52才で結婚し、65才までに3人の妻をめとり、5人の子供をもうけられたのも黄精酒のおかげと言われてるんだってさ……(辞書る調べ)。
……等々、曰くではないけどもそんな物がぎっしりのモンスター。お高い漢方とかも多数あったし、何てお得なんだろう! 使い道がよくわからないけど……。辞書る達が調べてくれた触手は大体が薬膳のものだったり、生薬、漢方の合体したものだった。凄くない? 凄くない? 凄くなぁーい? あ、そうだ。ハーブとか触手を使って薬用養命酒みたいなものも作ってみようかな……。
てか、山薬。別名長芋(自然薯)を見つけたのは嬉しすぎるよ! しかも殺した直後なら生なはずだからいつかはお好み焼きが作れるって事だもんね! ゴボウも然り。早く煮物が作りたい。領地に帰る旅の途中でひょこっと出てこないかな。……って、あれ? 長芋って種芋で育つんだっけ? 種芋でいけるなら植えれば良いのかな? お、あとで調べるかもしくは実験だな~っ♪ と、ご機嫌に鼻歌をしながら作業をしていると誰かがやって来たようでミリアムが対応に出た。今日は料理しないのでミリアムも僕キッチンの中にいるのです。
「ルカ、朝からいったい何をしてるんですか?」
「あ、グレン兄さん。ゼノさんもおはようございます」
昼間は1日お仕事があるから朝御飯前に1人でがちゃがちゃと僕キッチンで作業をしていると2人が声をかけてきた。ミリアムは見守るだけで頼めばきっと手伝ってくれるのだろうが、1人でも十分なのでのほほんと作業をしていた。
「昨日、兄さん達に貰ったのを薬酒として加工してるの!」
「「え……。昨日のって……」」
なにその顔……。顔の至るところに「絶望」って文字が書いてあるんですけど……。今作ってるアマドコロ酒は強壮、強精のほかに美肌の酒でもあるんですからね! ママ達女性のために作ってんだからね! しかも飲みやすいように隠し持ってた本みりん使ってるんだから! 老若男女に効くらしいけど、そんな顔してる兄さん達にはせがまれたってあげないんだからね!
魔法で安心安全なものに生まれ変わったんだからーっ!
ぷっくぷっく頬を膨らましながら作っていると何かを察したミリアムが2人を追い出していた。あ、魔法で安全なんだと伝えてないや……。でも、まぁ……いっか~っ♪
「ルカ様は元がモンスターであろうとなかろうと私達のためになるものをいつも考えてくださっております。邪魔はしないでもらえますか?」
ミリアムの顔は見えないけど声は非常に怖かったのです……。なので顔もかなり怖いんじゃないかなぁ……。後で蜂蜜で作ったアメをあげようかな……。のど飴のつもりで作ったんだけど、ご褒美にもってこいだよね。蜂蜜も高価らしいし? そんなことを思いつつも紙に『アマドコロ酒』と書いて瓶に貼り付けると俺の薬酒コーナーにそれを置いた。
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・
自作の薬酒を作る際は全て自己責任でお願いします。
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