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片付け(The Doll's Festival)
しおりを挟む「あかりをつけましょ、ぼんぼりにぃ~♪ おはなをあげましょ……」
竹海家のアイドル。可愛い可愛い末っ子の瑠架が舌足らずな感じで可愛らしく歌っていた。今歌っている「うれしいひなまつり」は通っている幼稚園で時期も時期だからか今よく歌う歌なのだとか……。まぁ、確かに俺も幼稚園に通っていた頃はこの時期はよく歌わされた気がする。でもなぁ、前にテレビの情報バラエティ番組で言ってたけど、一番上の二人がお内裏様で雛壇にいる人形全てがお雛様らしい。つまりは男雛は次期天皇つまりは東宮かなにかで、女雛は東宮妃ってとこか……。あれ? 五人囃子が大臣達より上段で良いのか? ……ん? 気が向いたら調べてみるかな……。うん、たぶん調べないな、俺は……。
「るーちゃん。お歌はお人形を出してからにしましょうね。手伝ってちょうだい」
「あーい!」
箱から母親が取り出すと瑠架はお人形を手に持って目を輝かせてみていた。
「母さん、これはどこに置くの?」
「それはやっくんのだから左ね。あら、これはるーちゃんのだから真ん中にしましょうね」
「えー……。るーは姉のが真ん中が良いと思うの……。るーのははじっこでいいのぉ~っ」
瑠架がそう言うので母さんのなにか言いたげなのを無視して俺は瑠架のを右側に置いた。ちなみに我が家は何故か雛人形の親王飾りは男である俺も瑠架も持っていて、尚且つ五月人形は女である愛流も持っていた。
「姉のおひなさま可愛いのぉ~♪」
「うん、まぁ……可愛いっちゃ可愛いよな……。なんでかリ○ちゃんの雛人形を選んだからなぁ、アイツ……」
俺はシンプルに赤一色の着物を着ている男雛と全体的に白~ピンクっぽい着物の女雛の親王飾り。背景は少しばかりゴージャスなのかよくわからないが蒔絵っぽい。
愛流のはさっきも言ったようにきせかえ人形で有名なリ○ちゃんの雛人形である。しかも茶髪で、現在にするとイケメンの彼氏が旦那である。ただなぁ……。なんていうか、実際はもう男雛は元カレなんじゃね?
………………縁起わるっ!
まぁ、元カレ云々はあえて放置するけど、リ○ちゃんだから白塗りの親王飾りよりも遥かに微笑ましく、確かに端から見たら可愛いのだろうが、でもなんだか異色である。
そして最愛の弟である瑠架の人形も同じく親王飾りなのだけれど、俺と愛流のは座っているのだが、瑠架のは立っているタイプのもの。
三人三様で面白いと言えば面白いが男の俺と瑠架に雛人形ははたして必要なのだろうか……。
「あかりをつけましょ、ぼんぼりに~♪」
瑠架はゆらん、ゆらん、と体を大きく左右に動かしながら歌っていた。うん、俺の瑠架は誰かなんと言おうと世界一可愛い! いや、宇宙一? 銀河一?
◆
ひな祭りが終わると大抵の家は人形を早い段階で片す──が、うちは大体4月くらいまで人形を放置している。
「兄~っ! 早く片さないとおヨメに行けなくなっちゃうよ~?」
「瑠架。俺と瑠架は男だからそもそも嫁には行かないの。だから人形を片すのがどんなに遅くても良いの」
「えー? でも、それじゃぁ……姉のは? 片さないと……」
「るーちゃん。私はお婿さんをとるからお嫁には行かないの! だから私の人形も片すのがどんなに遅くなっても良いの」
キッパリと言い切った愛流に対して、俺としては今すぐ嫁に行ってしまえと思うのだがコイツは女だけあって父さんや俺、るーに言い寄る女の対策方法を考えることに関してはかなり有能だ。だからまぁ、嫁に行かなくても良いのかもしれないと一瞬だが思ってしまったのは仕方ないと思う。
話は戻すが俺と愛流が「嫁に行かないから片すのが遅くてもいい」そう言うと瑠架は首をかしげてから何やら納得したのか、気にしないことにしたのか、それはわからないが雛人形を見てゆーらゆらしていた。きっと脳内でひな祭りの歌を歌っていると思われる。もしかして雛祭りは日にちとして少し前に終わってしまったので声に出すのが恥ずかしいのかな?
あー、俺の瑠架は本気で可愛すぎる! 食べちゃいたい!
それはそうと何故ひな人形を片さないのか。簡単に言えば母親に俺、愛流の気持ちはひとつなのだ。
瑠架をどこかの馬の骨にやる気は一切ないっ!
そしてどこかの男に嫁にやるなど言語道断っ! もしそんなことになるならブラコン末期のやっくんにやるわーっ! ──と、母さんが突然シャウトというか、叫んだのを愛流が聞き、これまた何故か泣きながらスタンディングオベーション。つまりは立ち上がって大拍手をしていたからである。故に迷信とは解っているが我が家としてはその迷信にあやかりたいので片付けたくないのだ。本来は片付けが出来ない子は嫁の貰い手がないとかそんな理由だったか? でも俺のるーは言わなくてもちゃんとお片付けは出来る良い子からっ! むしろなんでも出来るタイプだと思われる。しかも男の子の癖に「美少女」と称されるくらい凄く可愛いから絶対に今の年齢でも告白されてると思う。
まぁ、幼稚園児の告白なんて微笑ましいだけ………………。
んなことはねぇ! 親の真似をしてキスしようとする奴いるしっ! 一応保険として瑠架には友達だろうとなかろうとに『付き合って』って言葉に対しては『はい』などと無闇に答えずに『どこへ行くのか。どこへ付き合うのか』を絶対に聞くようにと教え込んでおいた。あとは『私のこと、好き?』と聞かれたら『お友達だから好き』と言うのを必ず言うように練習をさせて念には念をいれていた。『好きだよ。お友達だし』なんて強調したとしても友達を後ろにつけたら聞いてないかもしれないしね~……。これは父さんを含めた家族全員の総意である。お蔭で幼稚園で告白してくるマセガキが何人か撃沈しているらしい。
あ、ちなみにこの情報は幼稚園の先生が教えてくれたんだよね……。
こっちが聞かなくても迎えに行ったときに何でも話してくれるから、いちいち調べないでいいから楽だわ。まぁ、既婚者である父さん狙いの先生がいた事から「やっくんも幼稚園とは言えど飢えた独身女が生息してるのだから気を付けろ」と母さんに言われ、先生方とは挨拶を兼ねたて少し話す程度にしているけども……。
あれ? 俺に何でも報告してくるのってもしかして俺は狙われているんだろうか……。それとも父を手にいれるために懐柔しようとしてる?
「夜都~、そろそろ本気でるーちゃんに手を出しちゃえよ~っ。他のやつに取られる前に今のうちにやっちゃえよ! 教育、刷り込みは大事だよ! かの有名な光源氏もやってるでしょ? 」
「刷り込みってお前……。愛流、お前の個人的な萌えに俺の本気を使おうとするな」
「えー? でもさぁ、本気でるーちゃんに手ぇ出すならマジで手伝ってやんよ? ただし、私に全部見せつけろ! チューしろ、チューっ! バード・キスをたくさんしてからベロチューしろ! はよ! はよっ! るーちゃんを腰砕けた感じにヘロヘロにしちゃえよ!」
…………マジで腐海の住人過ぎて面倒くさい。
「ねぇ、ねぇ、兄~っ! るー、ノドかわいたぁ~っ!」
「ん? よし、何飲もっか──」
「えっとねぇ、桃さんのジュース! るー、桃さんのジュースが良い!」
ぱぁ~って花が咲くように笑う姿に愛流が「ぐふぁ!」と心臓を一突きされて瀕死。まぁ、気持ちはわかる。俺も少しヤバかった。思わずギュッて抱き締めてそれこそさっき愛流がいったようにチューをいっぱいしそうになったわ……。
愛流の目の前とかマジ勘弁だわ。薄いくせに内容というか情熱は熱い本のネタにされてしまう……。
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