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物々交換の日 1(St.Valentine's Day)
しおりを挟む「…………やってしまった。僕はやってしまったんだ……」
つい、つい……。そう! 魔が差したというか、本当につい……。辞書るとキュッキュパッド先生の甘言に乗りまして、ミルクから生クリームを作ってしまったのです。
あ、ちなみに手元のミルクは言うなればスーパー等で売ってる加工がされたものではなくて、牧場から直で仕入れたものなのです。加熱処理くらいはしてると思うけども……。いやぁ、ミルクからバターが出来るのもやり方も知ってたけど、生クリームの作り方を知っているのなら個人的な意見として早く言って欲しかった。これに尽きると思うんだ。早く教えてくれてれば俺の中で生クリームがあればお菓子やら飲み物全てにおいて大革命が起きていたのに!!
とりあえず数日前に何とか出来上がった生クリームを兄がこの世界に持ち込んでいた紙皿に取り分け、フ・クセイさん任せに複製をしまくりまして、やっとスーパーで売られている量にまで増えたのだ。そこから更に更に複製をしましてやっとこさ気兼ねなく使える量となった。
そして計算したかのようにこの時期にやっと……。うん、この時期に大量に手に入れることができるとはなんたる僥倖か。
キュッキュパッド先生~っ!
【はいはい、なんですのヨ】
えっとですね? 手持ちのドリップコーヒーでソフトキャンディを作りたいのですっ!
【……わかったのですのヨ】
◆
「ふふふ~ん!」
あれ? そう言えば辞書るさん。辞書るさん? 辞書る達ってやっぱりご飯とか食べないの?
【うーん、何て言うのかなぁ……。あれば食べるけど、なくても死なない。俺達は人間とは違う構造をしてるからねぇ……。で? ルカがそんなことを言うってことは俺たちにもくれるってフラグなのかな?】
ん? うん、食べれないなら俺が心の底から感謝するしかないんだけど、食べられるならちゃんと材料以外はフ・クセイさんに複製してもらわずに全て作るつもりだよ。
【え! ほんとに? マジで? マジで? やったぁ!】
【私も食べて良いんですのヨ?】
うん、食べて食べて? もしたくさん食べる予定なら足りない分はフ・クセイさんにたくさん複製してもらってね?
【【うん! もちろん!】ですのヨ!】
俺の特典さんは仲良しこよし。良いことだと思います!
一度作れば大体わかるのでキュッキュパッド先生には先生自身の個人的なお仕事を頑張ってもらうことにして俺は一人で作業をしていた。
でも辞書る達があんなにも喜んでくれるなんて思わなかったなぁ……。あんなに喜んでくれるならもっと早くに違うものとかあげていればよかったかな……。そんなことを思っていたら辞書るに今、大丈夫? と脳内だが声をかけられた。
【ねぇ、ルカ? ものは相談なんだけど……】
ん? 辞書る? どしたの? お仕事は?
【あ、うん……。少ししたら戻るよ……。あのさ? ム・ゲンにストックされている料理なんだけど……。俺たちも複製して食べても良いかな……】
そんなことなら気にしないで太らない程度に好きに食べたら良いと思う。たぶんスペースを借りてるのは俺だと思うし……。でもね、食べ過ぎ注意だよ!
【うん! ありがとう! 早速ドリップコーヒーを複製させて頂くね?】
そうしてプツッと通信は切れた。うーん、何て言うか俺の脳内が
筒抜けだとさすがに怖いけど、辞書るがスマホの通知みたいにピンコーンと小さな音を出してくれるので安心です。…………何て言うか辞書る達が何の仕事をしてるのかは知らないけど、眠くなる仕事をするのにはコーヒーは鉄板だよね……。
「あ、どうしよう……」
フ・クセイさん。フ・クセイさん! 砂糖のラカ○トと生クリームもしくはミルクを複製してして辞書るに渡して下さい。ドリップコーヒーなのてすが、あれは、あれは……。兄好みのエスプレッソとは言わないけども超濃いめのブラックコーヒーなんです……。胃がやられる!
【あー、わかったのでアール……】
あと飲みすぎ注意でよろしくね? なんかカフェインはどうやら摂取しすぎると依存症になるらしいから一日三杯までね! 厳守ね? 厳守! 【わかったのでアール】と良い返事を聞いたので、話はそれまでにして、それ以降は一心不乱にアメを作りまくった。いやぁ、作りに作りまくったので目の前には結構な量がありましたよ。ム・ゲンさんにまだ食べちゃダメだからね! と釘を差してから預けた。だって渡したい日付は明日なんだもの。
あ、そう言えばアメって湿気とか大敵なんじゃね? ソフトキャンディーだし、ハードキャンディよりもベッタベタになる予感……。なんていうか、これからあげる人たちって食べずに大切に保存しそうな気がするんだよね。さて、これは考えすぎなくらい対策した方が良さげなので本気で考えよう。なんといいますか、心を込めてプレゼントしたのにさ、湿気なんかでアメがベッタベタの一塊になっちゃうとか悲しすぎるもんね。ここは乾燥剤と言えば定番のシリカゲルをつくるべきなのだろうか……。
「……シリカゲル?」
あ、うん、ごめんなさい。ちょっと所ではなく材料が分からないや。それに俺や兄はシリカゲルの存在を知ってるけど、なにも知らないパパ達が誤飲とかしたら大変だから得体の知れないものは却下の方向だよね! 安心安全第一!
「……湿気……。湿気……。湿気かぁ……。うーん、たしか日本でバスマットに使ってた板は土だったよねぇ……」
たしか珪藻土って名前だった気がするんだよね……。珪藻土ってことは土。……土だよね? 土…………。 土? なんか貝がなんとか~とか言ってなかったっけ? うーん、…………これもさすがに材料がわからないけど、シリカゲルよりはイメージしやすいかな? 吸収した水分が一定量に達すると、自立呼吸をして水分を放出するのが売りなんだからそのイメージで箱を作れば良いよね! オーソドックスな一面空いた箱に一回り大きい箱を被せる簡単なのもので良いよねぇ……。あ、一応土なんだから完全に被せるとさすがに重いはずだし、二センチくらいで良いのかな? うーん、でも強度として、厚みは一センチは必要? てかそれくらいは欲しいよね! 大きさは10立方…………は深すぎると手が大きいパパ達はアメが取り出しにくいか……。 10×10×5くらいの箱で良いのかな? 小さい? いや考えるの面倒だし、時間もないし、もうそれで良いや! 土の箱……。土はソイルだから……よし! やってみるか!
「………………えぇーい! ソイル・ボックス~っ!」
あ、ヤバイヤバイ。青いタヌキのロボットみたいな感じで言ってしまった。うわ、恥ずかしっ! だがしかし目の前には出来立てホヤホヤのイメージ通りの形の真っ白な箱が現れた。
「やったぁ~っ! ちゃんと箱!」
そして一喜一憂する前に冷静に近くにおいてあった水を少し蓋を目掛けて溢すとじわじわと吸い上げて中へは貫通しない見事な珪藻土風の箱が出来上がった。
「くっくっく……。これは俺か兄以外はきっと作れない代物なはずだからガッチリマネー、ゲットぉ!!」
思わずガッツポーズをしてしまったのは仕方ない。
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