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僕(の)キッチン!
しおりを挟む「えへへ~♪」
にこにこと朝御飯を食べるルカに義理の両親含め、使用人までもが「可愛い!」と心のなかで悶絶していた。
今日の午前中のヨハン達のチェックが終わったら、ミニキッチンはすぐに使えるってことだよね!? うわぁ、どうしようかな! 何を作ろうかな! えへへ、まーよーうーっ!
パクッとパンをソースに絡めて口へ運ぶと日本とは違って柔らかくない。……成る程、パンか。うん、作るならやっぱりフワフワのパンだよね。炭水化物に炭水化物と言う発明とも言える焼きそばパンを作るのは夢だね! それにこの世界にケーキが少なからずあるのだからベーキングパウダーもしくは重曹があるはず──。
実は俺、イースト菌で焼くオーソドックスなやり方知らないし……。あ、でも本で読んだけどマリー・アントワネットの時代ってイースト菌で作った焼き菓子とか言ってたかな? もしかしてないかもしれない? 出来れば重曹が欲しいんだけどなぁ……。重曹は確か岩塩の塩水を電気分解するんだっけ? んで炭酸ガスを添加させて…………無理無理無理無理! 電気ないもん! 魔法でなんでもやっちゃうんだから電気とか無い! でも重曹かぁ~……。あるかな? あるといいなぁ~っ! パン、フワフワのパン作るんだぁ~っ! カッチカチのフランスパンとは違うパンを作るんだぁ~っ! そして俺的に万能だと思うコッペパンを作るんだぁ~っ!
思わずニコニコしてスープに浸したパンを口に運んだ。
「ルカ、何か良いことでもあったのかな?」
「えっ!? あ……すみません……。前にパパが作ってくれるって言ったキッチンが今日出来上がるから凄く楽しみで……」
「ルカちゃんはあそこで何を作るのかしらね」
「えへへ、まだ決まってないけど凄く楽しみで……」
弛む頬に手を添えて恥ずかしそうにする姿はもはや女の子だった。
◆
ヨハンに頼んでキッチンにある調味料の全てを少し分けてもらった。それと同時にパパが今、市井で大人気。可愛いと評判な調理器具を昨日お土産と言って買ってくれたのでそれを見つめた。なんかダッチオーブンとかル・クルーゼっぽい。ちょっと重いけどなんか可愛いな。もしかして無加水鍋として使える? だとしたらスパイスをたくさん手にいれて米をどこかで探してカレー作りたいなぁ~……。
今、ヨハンとローラやミリアム達は業者から手順の説明を受けていて、今のうちにとコピー用紙に分けてもらった調味料を更に分けてフ・クセイに複製を頼んだ。とりあえず小麦粉、砂糖、重曹、サフラン、アーモンド、カルダモン。
なんと! 重曹がありました!! しかもたくさん。
そして本当に貴重らしく分けてくれたのも少量だったシナモン、ナツメグ、クローブ、胡椒は全てを包んでフ・クセイさんに託し、一つ出来上がったらそれを取り出して元の皿に戻した。実は気付くとミリアムがずっと見ているときがある。気のせいだとは思うが、あぁも見られていると見張られている気がするのでこうやって離れている時、もしくは寝ている時にしか作業ができないのは結構つらい。昨日までに着々と進めて、現代から持ち込んでいた複製した瓶にドライハーブを満タンになるまで複製し、満タンになったものを一つコピーした。瓶がどんどん増えていくのはその内なんとかしなければ──。取り急ぎ出来たのはカモミール、ローズマリー、カレンデュラ、タイム、ミント三種(スペアミント、ペパーミント、アップルミント)。そして昨日出来上がったばかりのネトル、メリッサ、アーティチョーク、アニスシード、マジョラム。いやぁ、ほんとにハーブも増えてきたなぁ……。でも堂々と棚に出せるのはネトル、タイム、ミント、カレンデュラ、カモミールだけって言うなんとも言えないけどね。ラベンダーの苗はあるけどまだ咲いてない状態でム・ゲンが保管してるから今度どこかに植えるしかない。
◆
数日後。僕キッチンを作ってもらったのにも関わらず俺はなにもせずに大人しくしてました。あ、でも一度だけ自分でお茶を淹れたよ! そうしないとミリアム達が使いにくいんだってさ……。俺、使うのが初めてじゃなくても全然気にしないけどなぁ……。
──うん、それは無理な話か。
さて、小麦粉もかなりというか大分増えたし? そろそろパンを作ろうかなぁ~……。作ってもなくならない量は手にしている。あ、そうだ! パンの生地にローズマリーとタイムを入れよう! 何せ現在、お目付け役のミリアムが側にいない今こそチャンス! え、ミリアムは普通に休日で友人にお茶の誘いを受けたそうだ。俺は快く送り出しましたよ? 「久し振りなんだろうし、羽を伸ばしてきなよ」と……。そしてママもモニカと侍女一人を連れてどっかの貴族のお茶会に──。ローラとヨハンも何やら忙しそうなので「僕のことは気にしないで仕事して?」と伝えた。もうね、チャンスとしか思えないんだよ! だから俺、やっちゃいまぁーす!
……あ、でもどうしよう? 焼きたてパンって臭いが充満してバレちゃうんだよね……。
「あ! そうか! 魔法で壁を作っちゃおう!」
鶴の恩返し的なイメージで……。そう、あの例の「絶対に覗かないで下さい」的な──。いや、ドアの内側に壁を作ったのだからそもそも覗かせない! 食材とかもアンリさんに我が儘言って少しもらったのを複写しまくったからマジ完璧だよ! ハム、茹で玉子、なんかのミルク、とり肉のソテー、ソーセージ、野菜各種とほんとに様々。食材はそんなに変わらないのになんでこんなに美味しくないんだろうね。マジ不思議。
「さてと、ぱぱっとやっちゃって……。あ、そうだ、チーズも作らなきゃ……。んで複写しないとだから……。先にチーズかな?」
鍋にミルクと酢をいれて温めながら分離するのを待つ。しばらくするとカッテージチーズが出来上がったので少し立方体にして纏める。
よし! フ・クセイさん、やってしまいなさい!
【任せるのでアール!】
チーズは手元から消えた。これからはチーズが食べ放題だね! んで、チーズを作った残りのホエーをパン生地に入れて──。
「やっぱりサンドイッチとかサンド系って、時々食べたくなるよねぇ」
【……ですのヨ】
……ん? のヨ? ってことはキュッキュパッドせんせー? どうしたの?
【なんで料理ですのに私を呼ばないんですのヨ!】
…………あ、うん……。えっと、ごめん……。チーズをつくったら呼ぼうと思ってたんだ! えっとね? イースト菌使わないで重曹を使うハーブパンが作りたいんだけど……。あとホエーも使いたい! 教えて? キュッキュパッドせんせー!
【……そ、それならよろしいんですのヨ! 先ずは──】
……キュッキュパッドせんせーはなんというかちょっとチョロい。
◆
おぉ、美味しそうに焼けた……。さすがキュッキュパッドせんせー! ありがとう!
【もっと褒めるが良いですのヨ! これからはちゃんと呼ぶですのヨ!?】
通信をブツンッと一方的に繋がれ、そして切られた。…………うん、なんかさ……。うん……。ちょっとツンデレだよね! キュッキュパッドせんせーって……。いや、ツンが弱いから、チュンデレ?
焼けたパンを少し冷ましてから斜めに横切りして切りすぎないようにしながら切り込みをいれていく。少し前に夜な夜な頑張って振りに振りまくって作った無塩バター。それを半分にして一つは無塩バターのまま、もう一つは塩を加えたバターをつくって一日フ・クセイさんに託して放置した。もうさ、瓶を振りまくったから腕パンパンで初めて楽になりたい一心でヒールを使ったよね。
そうだ! 塩バターを複写してガーリックバターとハーブバターを作ろう! これはミルクから作るからパパに振りに振ってもらってバター作り体験をさせてしまおう! ラード同様商品になるよね! んでパンにつけて食べて、そしてバターを気に入ったらきっと特産品になるよね!
ふふっ、チーズはまだ内緒。だってゼノさんが調査頑張ってるらしいからさ……。お前は何か知らないかって言われたから、そう言えばミルクを入れる前って何をいれてたんですかねと言って知らん顔してきたよ? 考えるは身になる! って学習系のCMで言ってた気がする!
とりあえず脱線してしまったので話を戻すと焼きたてのパンに切れ込みを入れるとまだまだ暖かいのでバターを薄く塗った。
そこに大量のハムやゆで玉子と言った食材を挟み、幾つかのコッペ型のサンドイッチを作った。
「うわぁ、美味しそう! でも食べない! ム・ゲンに預けていつかの非常食!」
パンが一つと食材が少しずつ残ったので全て挟むとパクッと口に運んだ。
「んっ! うみゃひ……」
ハーブ混ぜてよかった! 美味しい! 食べ終わるとてきぱきと使った器具をクリーン(除菌洗浄)で綺麗にしていく。
「さてと、空間除菌消臭? いや脱臭しないと一発でバレるよね……」
空間除菌消臭。空間除菌脱臭ってさ……。空気清浄機ってことでいいのかな?
「よし! クリーン(空間除菌脱臭)!」
…………なぁーんて無理か……って思ったけど何処と無く漂白剤のような若干ツンとする香りがした。うん、何て言うか出来てたわ……。そう、何て言うか。なんと言うべきなのか……。嬉しいけど、ほわっとした幸せ感じるパンが部屋のどこにもいない。
俺には魔法の名前にしていい定義がちょっと……。仕組みがわかりません!
チラッと時計を見るとそろそろタイムリミットっぽいので土魔法を解除すると心配そうな顔をしたヨハンが立っていて、そして怒られました。ちなみにパパにチクられました。そのせいでパパに怒られ、今日はサロンで就寝までの間はパパのお膝の上で抱っこの刑に処されましたが俺は羞恥になんか負けません!
…………何て言うかパパのお膝抱っこもなかなか座り心地がいいな。
兄≧グレンさん>パパかな、今のところ……。兄とグレン兄さんはあまり大差ない気がするんだよねぇ……。
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