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うちの子 3

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 現在、ルカくんは昔のグレンの着ていた服を出してきたローラとミリアムにモニカ。そしてサラにより着せ替え人形のように服を着せられている。放置された俺達はまだ整っていない部屋にあるソファーに座り、ヨハンの淹れた紅茶を飲んで見守っていた。

「グレン。彼はとても可愛らしいけど何歳なのかな?」
「本人は17と言い張るのですがソレはさすがにないかなと一応13にしましたが……。12の方が良かったですかねぇ」

 それからは討伐であったことの話をして着せ替えを見つめていた。サラが最終的に選んだのは黒のベロア生地で詰め襟のロングジャケット、同素材のベスト。黒のスラッとしたズボン、白のシャツに白のシャボ。瞳と同じ色の翡翠の飾りをつけていた。そしてルカの長めの襟足はミリアムが一纏めにしてスッキリさせていた。

「ルカ、似合ってますよ? とても可愛いです」
「男に可愛いは褒めてないと思うの……」

 グレンは弟ができて嬉しいのか、また別の理由があるのか……。スキンシップが多く、今もルカくんを抱っこしていた。そして昼食を皆で頂いているとサラが口を開いた。

「ルカちゃん。本当に新しいお洋服はいらないの?」
「うん。グレンさ……えっと、兄さんの服が良いの……。ダメですか?」

 コテン……と首を倒して様子を伺うその姿はさすがにあざとい。でも可愛い! あざと可愛いってこんな感じの事を言うらしいことを俺は今日、勉強した。理解したら理解したで、ぐっちゃんの服が良いとか……。この子はブラコンかっ! ──あ、でもそうか……。この子はグレン自身を見てくれている子なのかもしれない。サラも他の皆も気が付いたのか目がうるっとしていた。それからは色々と話をして俺はルカくんにこれからは親子なのだから君を「ルカ」と呼ぶからね──と言うと「あの……。パパ、ママ。これからよろしくお願いします」と頭を下げて言った。

 やだ! 可愛い! この子の年齢の時はグレたぐっちゃんしか見てないからすごく新鮮!

 そんな久しぶりに訪れたほのぼのとした食事を終えるとルカの魔法属性を調べないといけないとグレンが言い、俺とサラは一瞬にして目が据わった気がする。如何せん。あの場所は上に立つ師団長、そして副団長は特に普通だか、下に行けば行くほど水属性のグレンを心底バカにしているのだ。アイツ等はショボい魔法でしか戦えないくせに……。その中でも男爵家出身の平魔導師がいつもいつも、いっつもグレンに嫌みというか突っかかってくるのだ。正直に言えばさっさと殺したい。そろそろ本格的に親の方へ訴える準備を始めることを告げるか──。
 そして案の定突っかかって来た。たかが男爵家の次男が伯爵家の次代であるグレンによくもまぁ、言いたい放題するよなぁ。そんなことを思いながらチラリと見ていればルカは我関せずと検定を受けていた。うん、この子の神経はなかなかの図太さだと思う。

 結果はもっとも珍しい聖属性。ちょっぴり土属性。本来ならば喜ばしいことなのだけれど、ルカ本人は心底水属性が良かったのだろう。今にも泣きそうな顔をしていた。

「やだぁっ! 兄さんと同じ水がいい……。神様にお願いしたのに……。土しかくれなかった! 神様のケチ!」

 ショックだったらしくルカはグレンに抱きつくとそのまま拗ねていた。神様にお願いとかどんだけ可愛いんだ、ルカは! でも俺の耳に届く言葉は「聖属性より水がいいってマジかよ」「水の魅力って……」と水属性を軽視する言葉だった。思わず軽い風魔法で奴等の髪を少しスパッと切るとニコッと笑った俺と目が合った者から順に青い顔をして口を閉じた。


 お前らの顔、覚えたからな! 今のうちに悔やんどけ! 後悔なんかさせねぇからなっ!


 脅しもしたし、そろそろ帰ろうかと差し掛かった頃、あのバカが今度はルカに絡み始めた。助けてあげないと──と思って口を開こうとしたらルカが思いきりヤツを睨んでいた。

「なぁ、お前さ? さっきから何なの? 兄さんが優しいからそれに甘えて好き勝手言ってるけどさ……。パパと話してた人が言ってたの聞いてなかったの? 一向に構いませんが、代わりの人を用意していただけますか? って言ってたよね? 募集して採用試験するの面倒だからパパに代わりの人を見つけてくれればすぐに引き渡すって意味でしょ? 考えなしに嫌みしか言えないのならお前のあだ名は今日から『イヤミ』になってしまえ! そしてイヤミは今日から一ヶ月、怪我が治りにくくなってしまえばいい!」

 と、ビシッと指差して言ったらルカの指先からなにやら小さな光が出て、何らかの魔法を使ったらしく少しフラッとしたのをグレンが支えた。なんの魔法かなぁ……。聖魔法だとは思うんだけど……。扱える人が少なくて聖魔法は回復以外、どういうものがあるのかなど解っていないのが現状だ。

「ルカ、大丈夫ですか? 何かの魔法を使ったみたいですけど……」
「うぅ……。もう帰る……。イヤミの傍にいたくない。グレン兄さん、抱っこ……」
「くすくす、今日のルカは甘えん坊ですね……。帰りましょうか」
「うん! あの兄さん。俺、後でオハナシがあるんだ~……」

 ルカは抱っこされて宥められていたので俺は「良くやった。ルカは偉いぞ~っ!」と言って頭を撫で、サラは「ルカちゃんはお兄ちゃんっ子ねえっ!」と褒めながらもキュンッとしていた。そうしてまたもやウォルター家に舞い戻って来るとグレンは笑顔でルカの頭を撫でた。ぐっちゃん。弟が……。ルカが可愛いのはわかったけど、スキンシップがさすがに多いと思うよ?

「では、父上、母上も。私は騎士団寮に戻りますのでルカをお願いしますね? ルカ、非番の時には帰ってきますから良い子にしているんですよ?」
「ちょっ! 兄さん、グレンさんっ!」

 あーあ、あれは逃げたな……。先程、一瞬だけルカの目が据わった感じでオハナシって言ってたからなぁ……。全く仕方のない子だねぇ……。誰に似たのかな?

「さぁ、ルカ。君の部屋へ行こうか。足りないものはすぐに言うんだよ?」
「ルカちゃん。急拵えだったから欲しいものがあったら言って頂戴ね?」

 ルカの部屋はグレンの隣の部屋に急拵えに整えた。元はゲストルームとして用意していた部屋だったのだが、そこに机やら色々と用意したので足りないものもあるだろう。クローゼットは出掛けている間にローラ達が手直ししたようで全て収まっていた。うちの侍女達は仕事が早くて助かるな──。

「ルカ、欲しいものは無いのかい? 今日から私たちは親子なんだ。遠慮なく言ってくれて構わないんだよ?」
「できる範囲のものになってしまうけど、言って頂戴な!」

 甘えられなかっただろう君を甘やかしたくて仕方ないのはグレンだけじゃないってことを知って欲しい。

「あ、あの……。俺、小さくて良いのですけど、自分用の調理場? が欲しいです……」
「えっと、ルカ? それは何に使うのかな……」
「あの……。更に少しでも懐が潤う様に特産品の開発とかしたいなって……」

 懐か……。実際、酪農や農業。機織りなどランドルフ領地は何処よりも栄えているといっても過言ではない。しかもそこら辺の貴族。侯爵や公爵であってもそれらよりも潤っているのも否定しない。実はお金はあるんだよ。

「あぁ、そう言えばグレンがルカは絶対に我が家のためになりますって弟にするのに力説してたねぇ……。手紙で」

 グレンというよりもゼノ君だけどね……。

 そして翌日。ゼノ君の手紙にあった「常識的な部分は欠如しているが、自分達では思い付かないことを知っていたり、発見するのでかなり有用」というのを少し理解した。ルカは何故か魔法という通常の概念が理解出来ないらしく、普通にクリーンを使っているようで実はオリジナル魔法なのではないかというくらい細分化していた。ルカに使ってもらったクリーンは髪のケアに特化しているらしく、自分でも驚くほどの艶と触り心地に驚いた。そしてミリアムもルカの理論を少し理解したのか冷めてしまった料理を温めるだけと言う火属性の魔法を完成させてしまい、ソレはそれで頭が痛くなったのは仕方ないことだと思う……。

 でも、これだけは言いたい。

 ぐっちゃんは少しつれないけど目に入れても絶対に痛くないくらい可愛い!
 そしてルカはまだ親子生活初日だけど、食べちゃいたいくらいに可愛い!


 俺の……。うちの子は皆、死ぬかと思うくらい尊くて可愛い!




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