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第10章 そこのけそこのけ男の娘が通る
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しおりを挟む俺のそばでおかわりの水を注いでくれたミリアムにヨハンはどうしちゃったのかと聞いたら今年、この城の敷地内にあるリンゴ園が珍しく鳥害に遭わなかったこともあって豊作で、しかも腐りそうな程あると言うことで俺の実験をふと思い出したのだとか──。
へぇ、俺の知らない敷地内にリンゴ園があるのかぁ……。
それにリンゴが腐るほどあるなら水につけてフルーツウォーター作ってくれても良いのになぁ。
暇なときにでもミリアムにコソッと教えとくかな。
「あ、姉ぇ。リンゴ酵母を作ったらフワフワのパン焼ける?」
「そうねぇ、詳しく言えばその酵母を育てていくと酢になるのよ」
そうなんだぁ! 久し振りにフワフワのパン食べたいなぁ……。
このカッチカチのパンは顎の疲労と共に味にも飽きたのよなぁ……。
スープにつけて食べるために硬いのかもしれないけどさ?
そのスープもそこまで美味しい訳じゃないんだよね。
ほどほど……以下? 鶏ガラスープ、とんこつスープ、牛のテールスープ、魚骨スープも良いなぁ……。
骨とその周辺の肉から良い出汁が出るんだよね。
「ねぇ、兄。コンソメスープ飲みたいんだけどどうすればいいの?」
「一から?」
「一から!」
おもむろに嫌そうな顔をしてため息を吐かれた。
なんか酷くないか? 美味しいものを食べたいだけなのにさ。
いや、今でも当初と比べてだいぶ改善はしてんのよ?
でも更に美味しいものを食べたいのは日本人の性でしょ?
「すね肉でもなんでも良いから牛肉を下茹で。灰汁などを洗い流して玉ねぎ、ニンジンと言った野菜をざく切りにして水と一緒に強火で煮詰める。煮たったら弱火にして三時間くらい煮る。出てきた灰汁は全て取り除く。肉と野菜を取りだしてスープを濾す。塩コショウで整える。終了」
…………面倒くさい。やーめた!
やっぱりいいや……と言うと兄に呆れたような顔をされた。
どうしたのかと聞いたら「既に手遅れ」と言われ、我関せずと食事を兄は開始した。
食事が終わると姉はヨハンにガッチリ両方の肩をつかまれて捕まり、俺はローラに抱っこではなく肩に担がれた。
ヨハンとローラの立ち位置と言うか行動が逆じゃね?
「うわぁーん、なんで僕~っ!」
「ヤト様の説明を理解してそうだったので」
兄は手を振って迎えに来たアンドレアさんと出ていった。
朝御飯は家族のみで今日の予定などの話をしたりするため、従者は別室で食事をとっている。
ジタバタと足を封じられているために腕だけでもがいている間に迎えに来たゼノさんはローラに捕まっている俺を見て何をしでかしたんだ? とミリアムに聞いていた。
なぜ俺が何かをしでかした前提で質問をするんだ。
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