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第10章 そこのけそこのけ男の娘が通る
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しおりを挟む「所でルル様」
「……え?」
とある日の朝食。食事中に声をかけてこないヨハンが珍しく俺に声をかけた。
突然声をかけられたものだからパッと朝御飯から目線をヨハンに移動させると彼は何故かニッコリと笑みを見せた。
笑顔の理由が不明だからその笑顔がマジで怖い!
──なんて事は口が裂けても言えないけども……。
「フォーリスの王都に居たときに仕込んだリンゴのはどうなりました?」
リンゴの……あー、アレかぁ……。
兄さんの水属性は万能なんだよキャンペーンの一貫でやってみたリンゴ酢を作ってみようのコーナーだったよね。
なつかしー! とか思ったものの結果がなぁ……。
「えへへ、実は失敗しちゃって……」
嘘は言ってない。
グレン兄さんの出してくれた水は綺麗すぎて発酵してるのかしてないのかわからなかったし、もうひとつの方もよくわかんないや。
透明の瓶で試作した方が良さそうだよね──と言うかかなり前に棄てちゃいましたけど?
「……ルル様も失敗することがあるんですねぇ」
「そりゃあるよぉ! 僕、経験豊富とは言えない年齢だもん。でも失敗は成功の基っていうし改良したら絶対に作れると思うの」
その言葉に兄と姉も頷いていた。
でも急にどうしたのかと聞くとヨハンがニコリと笑みを浮かべて使用しないなら壺を引き取りますよ……と言ってきた。
おぉ、借りパクしてた事に今更ながら気付いてしまった。
ご飯を食べ終わったら返しに行くねと約束すると姉が壺で何を作ろうとしたのか聞いてきた。
リンゴ酢を作ろうと思ったんだけど失敗しちゃったの~と、笑って誤魔化したら姉が不思議そうな顔をしていた。
「ルルちゃん。リンゴはもしかしてきっちりと洗ったの?」
「んー? リンゴを切る行程は厨房の人に任せちゃってわかんない」
「そっか……。あのね、ルルちゃん。リンゴは洗わずに布巾とかで軽く拭くだけにしないと酵母菌が無くなっちゃうから作れないはずよ? 作れるとしても必要数は増えるかもしれないわね」
……マジか!
「あとね、リンゴ一つに対して水はワンカップの200mlくらいだったと思うわ」
マジか! ドバドバと……。並々とたくさん壺に水をいれたよ?
まぁ、リンゴの香りのする美味しい水としていけるかな? とか思ったけど時間が結構経ってたから怖くて棄てちゃったんどよね。
「あとちゃんと酸素に触れさせないとだし、最初のひと月は二日に一回は容器を揺らすなり、かき混ぜるなりして発酵を促すのよ」
姉のリンゴ酢講座はまだまだ続く。
なんだろうね。物を作るってすごく面倒くさいんだね。
これは持ち込みリンゴ酢を使うときは感謝して使わねばならないなぁ……。
いや、それとも今をもってリンゴ酢様と呼ぶべきなのだろうか……。
姉の講座を真剣に聞いていたのは何故かヨハンで質問をしてるのもヨハンだった。
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