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第10章 そこのけそこのけ男の娘が通る
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しおりを挟む「ゼノさん? ゼノ? おーい、急にどうしたの?」
目の前にある端正な顔をペチペチと頬を叩きまくって声をかけること数十秒。
「…………はっ! あ、あぁ……すまん……。えーっと、ルル? グレンをこれからお兄ちゃんって呼んでやれ? 頼むから」
んっ? 急になんだ? どうしてそんな話題になった?
脳内で会議をしたのか? なら俺もやってみよう。
議題、グレン兄さんをお兄ちゃんと呼ぶ件について。
・「はぁーい、なんかバカにしてると思われそうだから却下で……てか廊下、寒くない?」
・「いやいや、意識改革としてアリではないかと……うん、ものすごく寒い」
・「喜ぶとおもうよぉ? 寒すぎるよね」
・「恥ずかしいから反対でぇす。……さーむーいーっ!」
……よし脳内会議の結果、保留で!
何てことをしながらゼノさんの話を聞きつつも中庭へと進んだ──が、気温に対して薄着過ぎた!
うひっ、寒っ! てか、寒っ! 寒い通り越してもはや痛い!
「グレンが拗ねてんだよ。ヤトは兄、アイルも姉と呼ばれてるのに自分だけは名前つきだから……」
「あ、兄と姉は自分の名前が嫌いにゃんだよぉ~……」
寒さに震えているからか噛みました。
ゼノさん、ガタガタブルブルしてるの気付いて?
気付いてるけどあえての放置? とにかくガタガタ、ガチガチ、ブルブルしていたら中庭の温室で兄さんと兄が剣術の手合わせ……というか、兄がグレン兄さんに軽く受け流されてまして、端から見ても遊ばれてました。
温室は確かに暖かい。でも冷えきった俺にとってはまだまだ寒い。
「え……ちょ、ゼノっ!? ルルが恐ろしく震えてるんですが?」
「うげっ! ルルって元気なイメージだけど意外と体は弱い作りなんだよ? 特に寒さっ」
慌てて剣をその場に捨ててやって来た二人だったが早くついた兄さんに俺は抱っこされた。
おぉ、汗を少しかいてるみたいだけど体を動かしていたからかゼノさんより遥かに暖かい!
「薄着で外に出るなんて……。しかもこんなに冷えきって可哀想に……。ゼノ……?」
「うっわ、唇が紫になってる! これはヤバイ。ゼーノーさぁーん?」
「いや、ルルがさ? グレンに話があるらしくてなぁ……。ヤトとの手合わせは俺が変わるからグレンは着替えがてら部屋にルルと帰って良いよ?」
俺はゼノさんに護衛を放棄された!
ちがう、自分の生存確率をあげるために俺を潔く身代わりにした!
そんな従者はクビだ、クビ! クビ、クビ、クビィ! と言いたいが本当にゼノさんをクビなんかにしたら毎日パパのお膝の上で軟禁生活が待ってるから絶対に言わない。
いろんな事を静かに思っていたがすべて最悪な方向に進んでいくので途中からは寒さの他に恐怖でもガクブルしていた。
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