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第9章 いつもより羽目を外した気がするの

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 ピョコーンっとパパの腕が緩んでいる隙に膝から飛び降りてササッと彼のもとへ駆け足で移動すると小声で「足、無理……」と呟かれた。
 ゴメンねぇ、俺ったら馬車での移動があまりにも苦痛過ぎて、疲労から思いきり熟睡モードに突入してたよ?
 しかも夢の世界ではミリアム達がやらかしてそれを諌めたり、改善提案をしたりして精神的にも疲れたの。

「でも駆け足で側に行ったわりにはなにもせず見つめるだけで助けてあげないとかルカぴょんも可愛い顔してなかなか──」

 ……はっ! ここ最近は特に現実逃避が癖になってて、またもや現実逃避モードに突入してたよ。
 なのでトンっと慌ててゼノさんの胸辺りを押すと後ろに倒れそうになった彼が腕で体を支えた瞬間一気にやって来た血の巡りに痺れと言う地獄がやって来たらしい。
 プルプルしている彼を見つつもそっと足を触れば、ぎゃっと言う悲鳴をあげられました。
 ぎゃってさ、なんて色気もなにもない。
 とっさに出る悲鳴ってそんなもんなのかな? まぁ、俺は息を呑んで黙ってしまうタイプだから悲鳴を出せる人は尊敬しちゃうけどね。

「うーん、やっぱりルカくんはそれなりにいじめっ子だよねぇ」
「え! ちょっとゼツさん、それはさすがに言いがかりだよ! 僕はただゼノさんの状態を確認しただけだよ?」

 ヒールを使ったが状態は変わらなかった。
 うん。まぁ、そうだろうなとは……。痺れごときに傷を癒すヒールは効かないんだろうな~とは奥底では思ってたよ。
 うんうん、何となくわかってたぁ~……。ええ、ええ、わかってましたとも!
 新たにヒール魔法を作成しろと言うことだよね?

「…………ヒール(状態異常解除)」
「…………お? 今度は治った! お前、やっぱりすげぇなぁ~……」

 成る程ね。ヒールは怪我などの回復の魔法であって毒とか麻痺とか眠りとか解除するものではないっぽい。
 さてここでクエスチョン。状態異常と思われる疲労にヒールが効果があるのはなぜか。
 個人的アンサーとするならば、疲労に効果があると言うことは疲労は精神が傷を負ってると言う認識なんだろうね。
 つまりはこのクソゲーは綺麗にするだけクリーンや乾燥させるだけのドライ同様で、怪我の回復のみのヒールしか存在しないっぽい。
 うーん、それはそれで困ったねぇ……。
 癌に関しては体の中で自然に出来た怪我の一種と思いたい。
 そもそも癌は体の細胞を壊すイメージなんだし、広い意味で怪我で良いと思う。
 あ、そうか。状態異常解除のヒールでインフルエンザとか怪我じゃない病気とかも治せるんじゃね?
 患者を用意してくれないかなぁ……。いや、でも聖属性保有者がそもそも少ないのだから、やぶではない医者をこの国に増やした方が俺のためになるか……。
 うん、その方が世界のためにもなる。……なる、よね?
 専門学校に最終的は小さな集落にも医院を建てる。
 そして王都にはここなら必ず治るだろう的なイメージで大学病院的な大きな病院を作らないといけないのか。

「うーん……」

 立ち上がったゼノさんの手をもって考え事をしながらドアへと歩き出すと急に入ってきた人に俵持ちされた。

「うわぁぁぁっ! な、なに? 何事?」




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