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第8章 戻ってきた日常……?
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しおりを挟む「僕、普通の子供でいいんだってば! 『王子』とか『殿下』とか『神』とか『聖人』とか、そんな厄介な称号は一つもいらないの!」
「いや、お前がそう思ってても既に王族だから王子で殿下だし、現にこの診療所に運ばれた人は全員回復して、しかも今まで以上に元気になって帰っていったから火消しは無理だ。今回、ここに運ばれることなく亡くなった人はやっぱり少なくはないんだよ」
「あー……。それって僕のことを魔女に近い事を言う輩も多いってことじゃんか……。しかも恨むとしたら医者を生業としてやってる人と、薬師、あとは運ばれずに亡くなった方の遺族か?」
俺、近いうちにその人たちに暗殺されるんじゃね?
そんな実感のない危機的状況を思っていたらゼノさんがニヤリと悪そうな笑みを見せて「ご名答」と言うので大きなため息をついてしまった。
無駄に格好よく「ご名答」──じゃねぇよ! 何もできなくなるじゃんか!
「ルカ。安心しろ? 俺を誰だと思ってる?」
「あー、うん。そこは、そこら辺に関してはすごく信頼してるんだよ。ゼツさん含めてね。ただ、ただ僕としては毎日を穏やかに暮らすのが希望と言うかしたい事なのよ。出来れば少し前の食っちゃ寝のママみたいな暮らしを希望なのよ」
「お前、ルカの代わりにアンリとユリアンを密かに食べ物の神。つまりは食聖にしようとしてたもんなぁ……。確実に無理なのに──」
うわ、それを言われると心が痛む!
た、確かにアンリ達が暇だからとレシピを初見で作れるのか実験しましたけどね?
あわよくばアレンジをできるようになったら俺が裏にいるのを隠せるかも! とか狙ってもいましたけどね?
…………すみませんでした。
「そもそもお前は知らないがな? あの馬の骨事件のすぐ後にアンリとユリアンは城の料理人たちと和解をして、お前の素晴らしさを説き伏せてたんだぞ? しかもソースは完成してたから、習いたてのオコノミヤキをその場で作って振る舞ってこれはルカ様の書いたレシピを再現したものだ! と言ってな? それを見ていた部下からの報告では食べたやつからお前を神と崇めてたらしいぞ?」
詰んだ。チェックメイトされた。
逃げ道を塞がれて王手をかけられた。
しかもそれを白けた目で見てた王都にいた侍従達がお前らが最近遊んでたオセロもカードゲームもルカ様発だからな! って言って、侍女もルカ様は見たことのない美味しい菓子を作れて、とても美味しいお茶も作れるのよ! と参戦。
医薬聖と食聖以外に俺の肩書きがどんどん増えてました。
しかも全て「聖」人。
即座に遊○王じゃなくてよかったぁ~!
とは思いましたけどね? 思ったけどさ、これ確実に暗殺案件やんか!
「だから、お前のことは絶対に守るから家出とかお忍びで町に行くとかはやめろ? あと採取な! お前も記憶にあるだろうがハイネ様と父様、ヤトの四人で視察に行ったときに男が突進してきたろ? あれは金で雇われたスラムの人間で、お前からしたら暗殺者だからな?」
おー、マジか! そう言えばいつになくあのゼツさんが町で笑わないと思った。
あの串焼き食べるときにパパが抱っこしたのはそう言うことなの?
俺が無防備だから抱っこして防御的な?
そう言えば兄がゼツさんに入口3、裏2、上2……とか暗号的なものを呟いてたなぁ。
あれは席につく前に敵意のある人を索敵して教えてたのかぁ~……。
俺、なにも知らずに無邪気に楽しんでましたけど──。
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