クソゲーの異世界で俺、どうしたらいいんですか?

けいき

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第8章 戻ってきた日常……?

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「ゼノさん、僕たちもそろそろご飯を食べましょうか」
「おう! 今日はなんだ? マジで腹へったわ」
「いつもより遅くなっちゃいましたもんね。うーん、今日はそうですねぇ……。ここ最近この診療所もかなり落ち着いて来たのもあって、今日は特に時間もありそうですし、うーん……。そうだ、(個人的に身に覚えのない)しょうが焼き定食にしますか」

 取り出してみればご飯、味噌汁、しょうが焼き。小鉢に漬け物。
 なんか町の食堂やファミレスとかでよく見るお盆の上にセットされた物が出てきた。
 いつも忙しくて食べるものは丼と言う、変なところで時短生活をしてたからかな?
 一汁三菜とか普通の食事は久し振りに見たし、食べる気がするなぁ。
 二人で仲良く「いただきます」をしてお肉を口に頬張るとすごく美味しかった。

「──これ、兄が作ったやつだ……。あれ? でも漬け物は姉なんだよなぁ……。珍しく一緒に作ったのかな……」
「え、何でそんなのわかんの?」

 なんか兄のしょうが焼きは生姜がとにかく、とにかく、とにかくと言って良いのかわからないけど、かなり多いんだよね。
 細かく擦りおろしたのと、かなり細かく千切りにされたのと、適度に切られた薄くスライスしたものが入っててさ……。
 言うなれば生姜がメインみたいな?
 んでもって姉の作る漬け物は種類と言うか分類としては浅漬けなんだけども、特徴と言うか塩昆布が絶対に使われてる。
 昆布の甘味もあっても個人的には好き。
 と、なるとこの小鉢は……。
 パクリと口に入れて咀嚼すると口に広がったのはお父さんの味だった。

「ふむ、なるほどね。お母さんの作ったのは味噌汁ってことかな? つまりはしょっぱいってことね……。えーっと、ゼノさん。もしかしたら味噌汁はしょっぱいかもしれないからお湯で好みに割ってね?」

 俺はお茶用に沸かした湯で味噌汁を割った。

「あのさ、だからな? 何でヤト達がつくったってわかんだよ」
「うーん。家族だからわかるって言うのもあるんだけど、これね? たぶん僕を甘やかすというかご褒美として兄が主体で用意してくれたんだと思う」

 その瞬間、何故だか優しい目をしたゼノさんが俺の頭を優しく何度も何度も撫でてくれた。
 そして手を離すときに早く収束させてお城に帰ろうな……と言ってくれたが思わず思ってしまったのは「どうだろうね」の一言だった。
 夜な夜な診療所が寝静まった頃に俺が建物全体にエリアヒールをかけて全員の疲労回復と予防。更には病後の回復を促すようにやってるけど潜伏期間というのが何事にもあるわけだし……。
 そもそも魔法が病気を消すと言うのは幻想な気がする。
 魔法で病気が治るならここまで時間はかかってないと思うし──。

 あ、そっか。俺自身が心のなかで疲労回復と予防の為にエリアヒールを使ってるから病気に効果ないのは当たり前か!

 やっぱり魔法って万能ではないんだねぇ──。



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