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第8章 戻ってきた日常……?

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「ダウトぉ~って……。なんとも無邪気に止めを刺したな……」
「でもルカにあそこまで言われれば母上も少しは──」

 …………うーん、とりあえずミリアムにみんなにお茶を淹れてと催促するとパパにゴツンと脳天に拳骨されました。
 あまりの痛さに殴られたところを撫で撫でしているとパパが三人掛けのソファーに座ったので空いてる一人用のソファーにグレン兄さんと兄、ヨハンと男三人係りでママらしき人を持ち上げて座らせるとギシィーッ! と言う聞いたこともない軋む音を全員が聞いてしまい、部屋は更に静かになった。
 そもそも気を失ってるとはいえ、女一人に男三人で移動とかありえなくね?
 寝てるママから目的地までそんなに距離もないからパパもヨハンも魔法を使うまでもない……。
 でも、みんなの沈黙の原因はこんなにソファーの悲鳴が出るほど太っ……肥っているとは思わなかったか──。
 それとも一人掛けのソファーにギリギリ収まっている姿に驚愕してるか──。

 うん、前者後者ではなくて両方かもしれない!


「……えっと、さ……? なんであんなに太っ──じゃなくて肥えたの?」

 俺はちゃんと言葉を選んだはずなのに兄にデコピンされました。
 え? 選んでない? 

「でもあの日パパ達と別れたときは今の2/3くらいだったような気がするんだけどな……。僕の記憶違いだったのかなぁ~なんて……」

 あはは……と、笑ってごまかしたがこの家に居残った人たちは無言だった。

「私は書類などの仕事はしてましたが部屋にずっと引きこもってましたので詳細はちょっと……」

 あー、確かに兄さんはニートよろしく引きこもって部屋から一切出てなかったよね……。
 書類はあの憎き俺型にくり貫かれた出入り口。
 俺通路から毎回俺がパパに届けてたもんね……ってあの辱しめは許さじ!

「私も貯まりに貯まった書類仕事をヨハンとしてたからな……。な、ヨハン?」
「途中からゼツ様がいらしてくれてあの時は本当に助かりましたね……」

 二人は遠い目をしていたので恐ろしい書類の山だったと推測する。
 確かに俺が秘書じゃなくて従者として書類を届けたときも床に書類タワーがあったと記憶してる。
 なので必然とみんなの視線はママの専属侍女のモニカへ行くわけだが……。

「お菓子を取り上げても取り上げても、何故かどこかから湧いて出てきまして……。私共が目を離すと口にされてました」

 おい、ガキかよ……と兄から聞こえたがまさにそう!
 なんでお菓子ばかり食ってんの? マリーアントワネットになりたいの?
 パンがなければお菓子を食べればいいじゃな、いいじゃな、いいじゃない~♪ ってか!?

「あの? 確か、建国のパーティーとか各国の著名人を招待したり、独立の宣言の後に国民に王様と王妃様ですよぉ~って、お披露目とかするんですよね? 予定では……」

 俺が質問ぎみに言うとテオさんが「そうですよ? それと王子王女のお披露目もありますから、ルカ様は他人事と思わない様に!」と釘を刺されました。

 あ、いつも感じてたテオさんのチクチクする太めの針は釘かぁ!

 太めの針の謎が解けて個人的にちょっとスッキリしたわ。
 ……じゃなくてですね、テオさんの言葉に俺と兄は「すべての女性の模範となる王妃様、ねぇ~」と呟きながらママをガン見していて、パパと兄さんは気まずそうに視線を反らした。

「えーっと、兄! 短期間で痩せるにはなんちゃらブートキャンプとキックボクシングってどっちがいいの?」
「ハードなものを情報から取り出してきたな。でもその前にストレッチからの簡単な筋トレとランニングだろ? 絶対に動けないぞ、この肉の塊──じゃなくて脂身。でもなくて肥満体というかメタボ?」

 兄が気を使ったのではなくパパたちにママの状況はヤバすぎっすよ~という警告も兼ねているらしい。
 警告するまでもなく、誰が見たってヤバイと思うけどね!
 一人掛けなんて何て言うか、俺が二人でも楽々に座れるんだからね?
 そしてママの我が儘ボディー改善は兄さんと兄が交代で見張りを行うこととなった。




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