クソゲーの異世界で俺、どうしたらいいんですか?

けいき

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第5章 引っ越した報告してないけど、まぁ~いっか。

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 朝……かな……。何だかよく寝れなかった気がする……。
 いや、もしかしたら逆に寝すぎたのかもしれない。
 頭が何だかいつもよりもボンヤリするからよくわからない……。
 クリーンで身支度を整えても、体をほぐす体操しても、ボンヤリする……。
 兄、どこ行ったのかな……。

「お? るー、起き…………うん、ごめん」

 起こしに来てくれたのか、少し部屋から出ていた兄は戻ってくるなり俺をギュッと抱き締めたまま優しい声で謝ってきた。

「見知らぬ土地に一人とか怖かったな……。ごめん……」

 優しく頭を撫でられ兄の体の温かさに慣れてくると涙がぶわっと溢れ出した。

「兄……。兄、あにぃ~……」
「大丈夫。るー、大丈夫だ。ここはアンドレアさんの家だから俺も気を抜いてた。ごめん……。寂しかったな。怖かったな……」
「ん……」

 あぁ、そっか……。俺、また独りぼっち。
 この世界の何処かにまた捨てられたのかと怖かったんだ……。
 ……また? 違う。自分でウォルターの家を出てきたのに、捨てられたなんて感じてるなんてバカだ。

「るーは甘えん坊だもんな。何とかしないといけないよな。兄ちゃんに任せておけ? ーーな?」
「ふぇ……。うっ、うぅ……あにぃ~……」

 声をあげて泣き出すと兄は優しく背中をポンポンしながら泣き止むまで待ってくれていた。
 でも久し振りに声を出して泣いたら頭が痛くて、目が痛くて、喉も痛い。

 そして何よりも眠いーー。

「るー、大丈夫だよ。お前の事を誰も捨ててなんかいないから……。安心して今は寝ような……。今度は絶対に起きるまで傍に居る。約束ーーな?」

 そんなあやすような優しい声に俺は兄の服をギュッと掴んで眠りについた。



 どれくらいの時間が経ったのかーー。
 目を覚ますと目の前には兄がいて、いつもより優しい瞳をした彼が俺を抱っこして本を読んでいた。

「るー、起きる? まだこのままでいる?」

 素直に甘えるため嫌々してから頷くと兄はそっと頭を撫でて笑っていた。
 自分でも本当に子供っぽいとは思う。
 思うんだけど、でも何だか今日は凄く不安なんだ。
 グレン兄さんがいたらもっと、もっと安心できるのにーー。
 兄とグレン兄さんが傍にいれば2倍。いや、数倍安心できる……。
 そんなことを思いながら俺はそっと目を閉じた。

 兄は俺が物心ついたときから大好き。
 でもグレン兄さんも同じくらい大好きーー。

 この離ればなれの状況は僕が強欲だから神様の僕への罰なのかな……。




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