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第4章 街道は続くよ何処までも

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「おぉ、サッパリしたわ……。頭もスゲー軽く感じる。さてとクリーンよろ」
「あーい!」

 無事バーバーゼノは閉店しました。
 何故かパパは嘆いている気がします。

「可愛かったヤトが一瞬にして……」
「美少女から美少年になりましたね……」
「逆に襲われそうだな」

 皆好き勝手なことを話し出したので兄も何を思ったかその場で髪を黒に変化させてしまった。

『…………エロッ!』

 うん、銀髪だと爽やかさとか可愛い感じだったのに、黒になった瞬間に黒というイメージなのか妖艶さが増えた気がしました。

「おぉ、お父さんを思い出す」

 俺だけが兄をジーっと見つめていた。

「あの、ルカさん? もしかしていつぞやのお父様の話はこれよりも酷いのですか?」
「ジェラールさん。だからね? 前にも言った通り、うちのお父さんは歩く公害なんだってば! なにもしてないのに目があったら男はトイレに駆け込んで性処理して、女は気絶とか想像で妊娠しちゃうのよ」
「なんかよくわからんけど俺、そんな父さんみたいにエロくなんかないと思うけど? 何て言うか失礼じゃね?」

 兄は散らばった髪を回収して消滅させると俺を軽々と抱っこした。

「ねぇ、兄。パパがフリーズしたよ? どうしよう?」
「うーん、そっとしておこうか……」

 改めて兄を見ると見覚えのある姿にホッとする。
 あぁ、兄だぁ~……。

「目の色は変わらないんだね」
「目の色も変えられるっぽいけど、金も薄茶もそんな変わらねぇしなぁ~……。髪が黒になって俺としては安心というか落ち着くわ……。なんか銀髪って反射率の高いだけの白髪みたいに感じてなぁ……」

 若いのに一気に年を取った気分というか、過度なストレスで色味を失った気分というかーー。まぁ、複雑な気分にさせたらしいよ。

 だがしかし! そんなことよりもーー。

「ゼノさーん。オリーブ! オリーブ!」

 兄に抱っこされたまま俺がいうとゼノさんに頭をポンポンされた。

「残念ながら今は収穫の時期じゃねぇのよ。実の収穫は秋だ、秋!」

 その言葉に「なぁーんだ。つまんないの……」と、一気に俺と兄のやる気が低下したのは仕方ない。

「ところでオリーブにどうして拘るんだ? 実も美味しいってわけじゃないだろ?」
「逆にさ、オリーブはどんな使われ方してんの?」

 するとゼツさんとゼノさんがパパを放置して教えてくれました。
 なるほど、オリーブの葉っぱをブランデーに漬けてチンキを作るのか……。
 皮膚病とかの治療なのかな?

「確かにオリーブの葉っぱは抗菌作用があったな」
「と言うことはお茶にしたら風邪予防に使えるかな?」
「チンキをお湯に溶かして飲めばいいんじゃね?」
「それって子供には辛くない? だってチンキってことはアルコールだよ?」

 と誰も割り込むことができないのか延々と続く俺と兄の談義に皆は目を丸くして無言で見つめていた。

「そうだ! 粉茶だ! 粉茶だよ! 兄、石臼だ!」
「あー、なるほど……。石臼ねーー」
「ゼノさん、種類とかなんでもいいからオリーブの葉っぱ多めに頂戴? 今すぐ!」

 仕方ないと思ったのかゼノさんは部屋から出ていき、使用人に頼んだのかすぐにザルに山盛りで戻ってきた。




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