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第1章 気がつけば異世界

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 何か、色々ありすぎて本気で脳がパンク状態というか、疲れたらしい。奴隷商人の所で起きたばかりだというのに何なのか、眠い。物凄く眠い! とりあえずこのまま寝てしまう前に頭を少し整理してみる事にした。出発前の家から思い返すと泣きそうだからやめよう──。


・同級生と昼からカラオケに行った帰り道、いろんな買い物を経て怪しげな古本屋を見つけて入店。
・目当ての本はなかったものの、マイナーで絶版した本を見つけて意気揚々と購入。
・店主と武器の話で盛り上がり、おまけとして日本刀を模したペーパーナイフを貰った。
・遠くに兄が迎えに来てくれたのが確認できた直後に交通事故らしきものに遭い、その場で気を失う。
・緑の髪の女の子に起こされて目を覚ますと奴隷商人の家のかくし部屋だった。
・古本屋の店主の謎の言葉と共に貰ったペーパーナイフと同じデザインの日本刀を帯刀していた。(でも本は手元にない)
・クソゲーとして有名な作品の中に出てくるイケメン。池様? とりあえずイケメンだらけの騎士団が助けに来た。
・夢だと思っていたのにまさかのラノベ展開……。ベタな異世界トリップものの──。
・それが確認できたのが自分のドジによるものなのでかなり恥ずかしい。
・現代で言う職務質問の末、可哀想な子認定されたらしい。でもご飯もたくさんくれた。でも不味い。しかしミルクは超美味い。
・そして腹が満足したゆえに超眠い。《今ココ》


 うーん、ラノベって異世界トリップしたら元の世界に戻れるっけ? てか、俺の体って無事なんですかね? 確かガードレールと車に挟まれたから、内臓とか骨もたくさん折れてると思うんだけど──。

 やっぱり死んだのかな。でなければこんな状況にならなさそうだし……。てか、ねむっ! ご飯食べて満腹になって寝るとか子供かっ!
 そんなことを他人事のように思いつつ、地面にパタリと倒れる前に誰かが支えてくれたような気がしたけど誰だったのかな……。後でお礼言わなきゃ……。
 いや、でも本当にご飯食べて眠くなるってガキそのものだよね? でもすみません。恥ずかしいけど、眠さには勝てない。欲求には勝てないのです。


 ──あぁ、日本に……。大好きな家族のところに帰りたいな……。兄に抱っこしてもらうの好きだったのにな──。兄に会いたい。帰りたい……。出来ることならカラオケにいく手前に時間が戻ればいいのに──。


   ◆


「ん……」

 寒い……。俺の羽毛布団はいったい何処にお出掛けしたの? 床に落ちてないんですけど……。秋の肌寒くなってくる季節に毛布だけとかどんな苛めなの? 俺、そんなに寝相悪かったっけ?
 でもまだまだ起きたくなくて本能で手をバタバタと動かして温かいものを探す。少しして伸ばした手にしっとりとした肌触りの温かいなにかを見つけて無意識にすり寄る。
 だって俺は凄く眠いんだ……。人っぽいからもしかして兄かな? あぁ──なんだか安心する。あったかい。うん、あったかいなぁ……。
 心地いい温度によりすぐに寝付くこと、どれくらいの時間が経ったのかな──。そろそろ起きようかと瞼をゆっくりあければ視界は白味の強い肌色。そして染めていない自然な色の布。

 ……え、肌色? 生成の布?

 ぽやーんと低血圧なのかまだ脳が動かない。脳は動かないけど兄じゃないのは理解できた。




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