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第1章 気がつけば異世界

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 そしてドーン! という建物に響く鈍い音は消え、ドアに耳を付けて聞き耳をたてるがこのドアは分厚いらしく声はなにも聞こえない。
 暫くして、遠くからドカドカッという人の足音に近いものが振動として伝わって聞こえた。耳を離してドアから距離を取る。
 どうしたものか、こちらを目指してやって来るらしい。ここでこの部屋に来る人に焦点を当てると考えられるのは──。

 1、味方かどうかは別として助けに来てくれた人。
 2、奴隷商人から略奪するために来た盗賊かなにか。
 3、攻めてきた人を倒した奴隷商人側。

 2と3は確実に死亡フラグっ!

 取り合えず腰にぶら下げている刀は例え模造刀だとしても抜けばこの場に居る子供はビックリしてしまうのではないだろうか。
トラウマにはならないだろうか……。

 ならば──。



   ◆



 ガチャリ……

 ドアが開かれるタイミングを狙って始めに入ってきたやつの肩透かしを狙う! 一人でも気絶できたら武器を奪って遠くに蹴り飛ばそう。出来るかどうかは別として……。俺は思いきり手に持っているものを振り下ろした。

 ガンっ!

「……おやおや、助けに来たのになかなか酷い出迎えようですね」

 俺が出来る範囲で振りかぶった棒を意図も簡単に剣で防御された。しかも手に持っていた最弱武器のひのきの棒──ではなくホウキの棒は綺麗にスパンっと剣によって切られていた。俺は静かに床に転がった先端を見つめて、次に自分の手に持っている棒の先端。それはそれは綺麗に斜めに切られた切り口を見つめた。

 あらまぁ、もしかして本物をお持ちですか……。よく手入れのされた切れる剣ですね──。

 棒を握る手にリアルみたいな衝撃を感じた。
 おかしいなぁ~……。普通、夢だと頬をつねっても全く痛くないのがセオリーなのに──。棒を切られたときの衝撃で少し手が痺れてる。

 どうしたものか──。あ、そう言えばつい先程、彼は助けに来たとか言っていたんだし、俺はこの人に切られることは(たぶん)なさそうだからちょっと大人しくしておこうかなぁ──。
 中に入ってきた人は身なりというか格好からしたって綺麗だし、軽装とはいえ装備もちゃんとしてるから盗賊ではないみたいだし? どこから見てもゲームでよくある甲冑ではない騎士服みたいなデザインだし……ってことは騎士なの?

「助け……? えーっと、すみません。貴方は奴隷商人の人ではない?」
「手荒い歓迎ですね。この国では禁止とされているはずの奴隷。その商人及び売人の捕縛。囚われた者の保護に来たというのに……」

 うっわ、好みのイケボ……。まじで声優やったら良いと思う。
 とは言え、この人の顔が服を見ればわかるだろ? みたいな顔をしてる気がするよ? 知らねぇよ! と心の中で叫んでみた。

「……あ、すみません……。奴隷商人の人か、もしくは盗賊かなにかだと思ったので……」

 おとなしく謝ると中にがたいの良い男の人達が次々と入ってきた。
 ……あっれぇ~? 見たことないって言ったけどなんか見たことある気がしてきたんですけど……。何でだろうと考え始めると奥に隠れていた子供たちは中に入ってきた騎士らしき人に布か何にくるまれて抱き上げられると部屋から出ていった。

「さぁ、君も…………おや? 君は武器を持っているのに貧弱な棒で攻撃したんですか?」
「…………盗賊もしくは新たに連れてこられた子という線も捨てきれなかったので……。それに小さな子の前で抜くのもどうなのかなって……。とりあえず助けに来てくれた人と言う線もありましたから──。元からこの部屋にあったホウキをバラしたんです。ありがとうございました。お陰で皆、助かりました」

 片割れの棒が寝転がるところにポイっと放り投げた。

 それにしたってこのイケメン。どこで見たんだろう? なかなかの美人さんだから忘れることなんて出来そうにないけどなぁ。
 優しそうな顔の作りなのに目の奥は何だか冷たい。んでもって目は開けてるけど何も見てなさそうだし、人生つまらなそう。しかも表面は微笑んでいるのに目が死んでるとか、チグハグすぎて少し怖い。美人さんだからそう感じるだけなのかな……。

 身長差があるから俺は見上げる形になるけど不躾にジーっと見ているとやっと彼の目と合った気がした。

「どうかしましたか?」

 うん、なんかよくわからないけどやっぱりこの人見たことある気がする──。



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