クソゲーの異世界で俺、どうしたらいいんですか？

第３章 事前の準備は必須です

５

「えっと、ルカのご両親は医師なのかな？」
「正確に言えばパパ達が思う医師とは違いますね……。時々歯が痛いとかありません？　そういうのを治療する口の中専門です」

　歯科医２人、理美容師１人、アーユルヴェーダセラピストてかエステティシャン１人。
　ここに薬膳師が入ったらいったい何を目指す家庭なのかと……。

　歯の健康、ホワイトニングもして髪をきれいにして、髭剃りも出来て、アーユルヴェーダで身も心も整って薬膳を食べる？
　え、マジでうちの家族は何を目指してんの？　いや、目指してたの？

　今度、兄に聞いておくか……。

「そう……。なるほど、そう言った環境ならルカも聡明になるよね……」

　聡明……。聡明？

【頭がさえ、理解力があり、人格に優れ、賢いこと。それが聡明だよ】

　おぉ、辞書るが辞書らしいことを久しぶりにした！

「僕は聡明じゃないですよ。パパやグレン兄さんみたいな人を聡明って言うと思うの」
「ルカ……。はぁ……、どうしたものか……」

　顔は布で遮られてるからわからないけど何やらパパは頭上で悩み始めてしまったようだ。
　俺もなんか頭を撫でられ過ぎてさっきから眠いんだよね……。

　寝てもいいのかな……。寝ちゃうからね？
　車酔いとかしたら寝るように躾られて抗えない……。
　頑張って起きてた方だと思うのーー。パパ、お、やすーー……。

　ルカが寝落ちした頃、この家の家主であるハイネはいまだにルカの頭を撫でながら真剣に考え事をしていた。

「頭が出来と回転もよくて、料理や魔法なんて考えもつかない知識が豊富みたいだし、一癖二癖三癖もある使用人達に愛されて、言えばすぐとは言わないが理解して聡明って言葉が当てはまるのに……。なのにどうしてこんなに天使みたいな可愛い素直な子に育つんだ……」
「ハイネ様。一癖二癖は良いですが、三癖はさすがに言い過ぎです」

　ローラはそういうと大人しくしていたミリアムは「そこなの？」と思っていた。

「いやいや、ローラとヨハンが筆頭で癖が強いだろう？」
「……ハイネ様。後でヨハンも交えてオハナシしましょうか」
「遠慮しておこうか。ーーそれで？　ローラは慌てていたみたいだがどうしたのかな？　ミリアム、すまないがそこのジャケットをルカに掛けてくれるかい？」

　寝てしまったルカの体に椅子にかけてあった上着を掛けるとローラが真剣な顔をしていた。

「旦那様。旦那様は蜂蜜酒をご存じですか？」
「…………太古の文献で見たことがあるーーとしか言えないな。作り方は書いてないから文字だけの知識だな」

　そう答えると２人も静かに頷いた。

「ですが、ルカ様が何やら造れるようです。それ以外にもルカ様が育ったお国にはたくさんのお酒があったようです。ビア、エール、ワイン、蒸留酒のみだと申し上げましたら驚愕しておりましたので……。更には酒をつくったら罪になるのかと申されましたところを見るとお国では専門の職業の方が作るものらしいですね」