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第2章 新生活スタート

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「ルカ、日を改めてこの森に連れてきてあげますから今日のところは大人しく帰りなさい。父上達が心配しているでしょうから、ね?」

 日を改めて連れてくるというのは、どうやらグレン兄さんの精一杯の譲歩らしい。うん。まぁ、確かに仕事中に乱入してるもんね、俺……。邪魔と言うか立ち入りを禁ずるというのは仕方ないことだよね。解る、解るよ。でもゴメンね? 俺、手ぶらで帰るのは時間の無駄すぎて嫌なの~っ! 日を改めて取りに来る時間を別のことに使いたい。強いて言えば移動時間すら勿体ないのよ。お願い、理解して(笑)的な?

「……でもっ、でもぉ~っ! 僕にとっての宝の山が目の前に! そこら辺の金持ちのおば様でいう宝石と一緒なの~っ! 行くったら行くのぉ! 採取するったらするの!」

兄さんのものは俺のもの! 俺のものは俺のもの! あれ? なんか違うな……。そこら辺の雑草という名のハーブは俺のもの! ……か? とりあえず雑草という名の植物などない! うん、これ鉄則! 俺は心のなかで頷いた。

「あー、もう! 兄弟ゲンカするな! グレン、前みたいに俺が怪我しないようにルカにちゃんと付いてるから……。お前は討伐に行け。報告はちゃんとする。詳細に報告するから! それとルカ、森に入るのは午前中だけだぞ。昼になったら絶対に帰るんだぞ。いいな?」
「はーい!」

 その時間だけで全然OK! 無問題! 俺にはマップルマップル~っ! がついている。手に入れてないものを最短距離でピックアップしてくれる優秀なマップルさんが俺にはいるのです! よっしゃ、やるぞぉ~っ!



   ◆



 ……な、のですかその前に! やらねばならぬことがある!

「ルカ、お前は何をしたいんだ……。あれほど採取採取と喚いていたよな」
「えーっと、とりあえずこんだけ離れれば良いかな?」

 お泊まりした野営地から離れた木の影で昨夜のように土で壁を作ってテントみたいな風避けを作った。もちろん一酸化炭素中毒にならないように穴もそれなりに空いている。でも明かり取りにはならないので照明代わりのライトという魔法を使って外と同じくらいの明るさにして手元がよく見えるようにした。それからというもののゼノさんは俺が収納持ちというのを知っているのでそこは気にせずにム・ゲンさんから色々と道具を出した。

「…………ルカ……。あのな? お前はちょっとは人の話を聞け?」
「んもぉ! 午前中しか時間無いから早く終わらせたいの! 採取したいの! だからゼノさん、早く火をつけて! 早くぅ! 時間が刻一刻と無くなるでしょ!?」

 捲し立ててマシンガンのようにあーだこーだ言っていたら小言をいうのを諦めたのか魔法で火を起こしてくれた。ゼノさんがいなければライターとタバコで調理開始してたのは言うまでもない。それからは手早く鍋に兄がコピーしたワインを複写したものを適当に入れて手持ちのオレンジとリンゴ。シナモンにカルダモンと言ったお値段の高いスパイスを入れてグツグツ煮込み始めた。

「なに作ってんだ? ワインに……」
「今日の夜、絶対に寒いからホットワインを作ってるの!」

 火のついた枝を手にもって鍋に近づけるとワインに残っていたアルコールを一気に飛ばす。おぉ、なかなかの量が残っていたのか鍋のなかは一気に火の海。あれ? ちょっぴりゼノさんが引いてないか? おや? もしかしてこんな調理方法はないということか? うむ、僕たち二人の秘密だね! とか気を利かせて言うべきなのだろうか……。

「おいおい、しかもその木みたいなのはシナモンじゃないのか? 高級品だぞ! なにそんな勿体ない使い方してんだよ!」
「ん? あぁ、複写したからいっぱいあるよ、大丈夫。それよりも、ねぇ? ゼノさん。ゼノさんから見て第四騎士団の面々ってさグレンさんを……。団長のグレン兄さんをどう思ってるの?」

 鍋をかき混ぜながら言うと変な間を開けてから優しく頭を撫でられた。なんと言うか彼の返事の内容によっては俺もやり方を考えねばならん。

「お前はほんとにブラコンだな。ナイトリンガー殿下も心配するわなぁ……。うーん……。そうだなぁ、アイツらは正直な話、心配はいらねぇよ? グレンが団長の就任の時はそりゃ何かと色々あったが結局騎士団は戦う術は魔法じゃないからな。今はグレンを慕ってるやつばかりだぞ」
「うーん。じゃあ、例えば兄さんが騎士団をやめたらゼノさんはどうするの?」

 その返答は「別にどうもしない」の一言だった。どういうことかな、と聞いていればグレン兄さんの団長を辞める理由にもよるそうだ。例えば自分本意。つまりは一身上の理由なら辞められそうもないけど、不本意な理由でやめさせられた場合は抗議の意味でゼノさんとアンドレアさんは一緒に辞めると思うし、数日前に話していた状況ならばこの二人は領地についていくから必然と辞めるだろうなとのこと。

「でもアイツらはアイツらでそれぞれ家族や生活って言うものがあるからどうかなぁ……。いや、付いてきそうな気もするなぁ……。もし辞めることを前もって教えれば家族を先にランドルフ領地に行けと指示して本人は飄々と俺達についてきそうな気さえする」

 あぁ、グレン兄さんは貴族みたいなバカっぽい色眼鏡では見られていないみたいでよかった。最初の頃はさすがにあったみたいだけども……。

「あー、そうなんだ……。じゃあ、僕も安心してやれるかな」

 ホットワインが出来上がったのでとりあえずゼノさんに味見してもらうと「何これ、スゲーうまい!」とほめられた。よし、完成! 熱々を兄からもらった紙コップに入れてフ・クセイさんに預け、しばらく土の上に置いて鍋を冷ましていたがだいぶ温くなったので液体を皮袋にしまうとそのまま更にフ・クセイさんに預けた。これでいつでも飲めるはず!

「コピー……。えーっと、複製したら俺が帰る時に渡しますね。今日の夜は本気で寒くなると思うし、寒くなった時にでも温めて皆で飲んでください。それだけでも暖まるはずなので。あとアルコールは飛ばしてあるから酔わないはずですよ? たぶん……。吹き付ける風がひどくなったら土の壁でも出して風避けしてくださいね?」

 ……っていうかさ? 布のテントなんて使わないで魔法でテント作ればよくない? とはあえて言うのはやめよう……。悲しくさせたくないし──。どちらかと言えばこの国で流行らせたくなどない。俺はせっせとクリーンを使って鍋などを片付け、土魔法のテントも解除した。

 残りの時間は全て採取! ゼノさんはなにか言いたそうだったけどガン無視をして時間の許す限りハーブや食べれるキノコ、木の実を取りまくったのは言うまでもない。





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