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第2章 新生活スタート

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「そう言えば兄はさ? ちゃんと寿命まで生きたの?」
「いや? さっきサラッと言ったけどさ? お前を殺したやつが数年後に出所してな? 逆恨みで仕事帰りの俺を刺したんだよ。ちなみにお前が死んだあとなぁ、お前の通ってた学校の生徒職員全てが署名活動したりしてなんか俺たち泣くに泣けなくなっちゃって……。でも愛流が急にいなくなったお前への愛をこじらせてな? 薄い本を描きまくってた」

 薄い本……。姉はなぁ……。何て言うか兄×俺がモデルでの薄い本描いてたからなぁ……。なんだっけ? 兄の名前のナイトを変形してカイト。俺のルカを変形してルナだかユカだか女の子みたいな名前にしてたな。だからどうしたって感じだけど、締め切りに追われると俺達はネタを無理矢理作るというか提供求められて大変だったんだよねぇ……。こっちは仲良くパズルゲームしてたのに、兄にセクハラみたいに耳ハムハムとかさ……。集中できないっての!

「あー、姉は本当に仕方無いなぁ……。しかも絶対にお母さんも悪のりしたんでしょ? ま、仕方無いよ。んでさ? 兄はさ? 王子とはいえこの最低な国を見限ることはないの?」

 核心をつく質問をすると兄の手が少し止まってからまた動き始めた。兄が言うには城で計算が得意なだけのバカ殿というか殿下をしてるから王子が一人居なくなっても構わないのだろうが、前々から父である王様に俺は冒険者として世界を旅すると言っているのだそうだ。そろそろ許可出ると思うと兄が言うと俺はパパをじーっと見つめた。

「パパ~っ! 僕、お兄さんがもう一人欲しい!」
『は?』

 兄までもがなんとも言えない顔をして見つめていた。

「パパ、早いうちにこの国は捨てた方が良いよ~……。嫌な予感しかしないんだよ~っ!」
「るー、とりあえず落ち着け。あのな? 商売人も政治家もタイミングってのは必要だ。わかるな? 俺はまだ王子であの色欲魔であっても王である父はやはり一筋縄ではいかないんだよ。とにかく時期を見誤るな」
「むぅ~っ! 兄にせっかく会えたのに! グレン兄さんと兄がいれば本当に最強なのに!」

 プンプンと怒っているとグレンさんが側にやって来た。そして俺の癇癪を優しく宥めてくれた。頭を撫でられると少し安心するせいか、気分は落ち着いた。

「ルカ、またすぐに会えるからそんなに心配するな。お前にその刀があるように俺にはこの剣がある。そうそう死にはしないさ」
「…………兄ぃ、その剣の名前はなに? 僕のムラマシャールって言うんだって……」
「ムラマシャー……あぁ、なるほど。村正、村正か……。そりゃお前も大変だわな。俺のはダインスレイヴだな……。揃いも揃って物騒な名前だな……。ちなみに愛称はヒイロだそうだ」
「僕のはミドリちゃんだよ」

 確かに俺のミドリちゃんは手に持つ柄の部分が緑色。対して兄の剣は俺と同じく手に持つ部分がとても綺麗な朱色と言うか紅色だった。鞘も少しばかり装飾がされていてお洒落だった。ミドリちゃんの鞘はオーソドックスだけど少し装飾されててシンプルな感じが俺は好き。

「なぁ、ルカ? お前は何で殿下を兄と読んでるんだ? ほら、グレンはグレン兄さんと呼ぶだろ?」
「あー、俺が前世の名前を好きじゃなかったからだね……」

 実は兄の名前は夜の都って書いてナイトって言うんだよね……。所謂キラキラネームってやつ? 何でそんな名前になったのかというとお母さんがその時、小説でも漫画でもアニメ、ゲーム何でも良いけど、『騎士』に嵌まってて本当は騎士って書いてナイトと呼ぶ予定だったらしい。しかしお父さんがもう少し漢字だけは格好よくしてあげない? と提案して、大きくなってホストとか始めても格好がつくようにって夜の都になったらしい。
 姉も姉で愛が流れると書いてアイルなもんで反抗期なのか揃いも揃って自分の名前が嫌い。ちなみに某狩ゲーではなく新婚旅行で訪れたアメリカの国立公園に感激したから付けたかったらしいんだけど……。姉が少し大きくなってからあのゲームが出たからさぁ……。その頃には俺は兄と姉が自身の名前を嫌ってるのを身に染みて知ってたと言うか理解してたし、気を利かせて名前はつけないでお兄ちゃん、お姉ちゃんと呼ぼうとしたんだけど名前のせいなのか母譲りの気質なのか周囲とは違う変わった呼ばれ方がいいと言うことで『兄』『姉』呼びに落ち着いたのだ。
 それにしたってお母さんの名付けセンスが本気で変というか……。センスがかなり悪すぎてマジで怖い。俺、お父さんが寝ぼけて『イカ』を選択したらと思うと……。物心ついて名前であるイカの意味を知ったら絶対に自殺してると思うね!


 いやもう、イカはさすがに候補にいれないでって思うよね!




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