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第2章 新生活スタート

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「ようこそいらっしゃいました」
「急な我儘を言ってすまない、ランドルフ伯爵」

 きっと今頃玄関ロビーでそんな優雅な会話をしているに違いない。くそぉっ……。とうとう到着してしまったか……。先程、パパとママが第四王子を出迎える為に部屋を出て行きまして、俺は……俺は……現在一階にある応接間と言うか、家族用とは別の客をもてなす為のサロンにて三人掛けのソファーに縄で拘束されて放置されているのです。理由を上げるならば予定時刻が近づくにつれ、やっぱり会いたくない気持ちが勝ちまして……。脱兎のごとく逃げようとしたらパパの風魔法により逃げる前に捕まりました。酷い話だが、走って逃げ回らないように魔法で空中に漂うようにフヨフヨと浮かされ、放置されたのです。でも拘束とは言え、滅多に味わえない宙に浮くと言う行為が少し楽しかったのは仕方ない。
 そしてパパが王子の出迎えに少し席を外す時になって魔法が維持できなくなり、俺が逃げ出すのではないかと言う心配が最高潮に高まり、ヨハンに縄を持ってこさせると俺はパパとヨハン、ローラによって手と腰を一緒に、そして足首の二ヶ所を拘束されたのデス。

「ミリアム~っ! お願いだからほどいてよぉ」
「…………ダメです。…………うっ! そんな顔してもダ、ダメです……」

 瞳をうるうるさせての泣き落としはダメでした。ならば仕方ない。足を床につけてピョンピョン跳ねながらミリアムに近付くとミリアムはバッと両手を軽く顔辺りまで上げてホールドアップ状態。

 俺は拳銃と同等なんですかっ!?

「ミリアム~……。せめて、せめて、足だけでもぉ~……」
「申し訳ありません」

 ちっ、仕方ない。

「ヨハン~……」
「ダメです」

 あ、こっちは執事の完璧な笑顔で断られた。ちなみにヨハン達がここにいるのは俺の見張りです。

「こちらですよ」

 カチャリと音を立ててドアが開かれた。あぁ、俺の逃亡計画は、終わった……。

「あらあら、まぁまぁ! ルカちゃんはまだ逃げようとしてたのね。ダメでしょう?」

 なんて優しく言ってますがママの目はなんと言いますか、犯罪しゃ……違うな……。とにかく凄みがありました。簡単に言えば怖かったです。そしてグレン兄さんとゼノさんが王子の護衛をしていたらしく部屋にいて、その間に見たことない美青年。いや青少年? が一人いた。
 おー! 確かに他の王子さまは嫉妬するかも! イケメンだぁ! グレン兄さんとは違うイケメン様がいる~っ! なんか少し日本人っぽくて二人の間にいると可愛く見える不思議さ。なんていうの? 小柄で仲間意識が芽生えそう。

「えっと、父上? ルカはなぜあの様なぐるぐる巻きに……」
「あぁ、時間が近づくに連れて気持ちの変化なのか逃げ出そうとするからね……。私達が出迎えている間に逃げちゃうでしょう? だから、ね……。ヨハン達には見張りを頼んだんだよ」

 その説明をすると部屋は静かだったのにブハッ! と吹き出すように笑い出したのは王子その人だった。

「なるほど、お前はこっちに来たばかりなのかな? ならそれも仕方ないねぇ」

 その不思議な言い回しに首をかしげたのは俺だけじゃない。そんなとき、某初代ロボット戦士アニメのようにキュピーンと……。

 特に何かを感じるわけはないので、じーっと俺は見つめていた。

「瞳と髪の色。髪型も違うからわからない? 『るー』いや『瑠架』?」

 王子はそう言うと下ろしていた前髪をガッと掻き上げるように後ろへ流すと顔がはっきりと確認できた。

 この顔は……。俺をあんな風に呼ぶのは一人しかいない。でも、どうしてココに?

 会いたかった人が目の前にいる。頭や心の中よりも体は素直なものでボロボロと涙を溢していた。俺は頑張って、頑張って、頑張ってピョンピョン跳ねながら近づいて、そして床でツルッと滑ったら第四王子の鳩尾にヘッドアタックしてしまった。

「ぐっ! おーまーえーっ!」
「わざとじゃない! わざとじゃないのっ! わざとじゃないのーーっ!」

 鳩尾に向かってヘッドアタックと言う最大にやらかしたことにより俺の涙はどこへやら。そして逆に一応第四王子に俺がやらかしたことにより全員が顔を青くしていた。

「あっ、やだ! 兄ぃ、グリグリ痛いからやだ!」
「俺のが痛いわっ! このド阿呆が!」

 拘束されている俺は容赦なくこめかみをグリグリされました。酷すぎる……。そして俺と王子の物理的な痛みが落ち着いた頃、パパが落ち着きを取り戻したのか、どういう関係なの? と質問をして来た。


 ……ですよね。気にならない方がおかしいですよね~っ!




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