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第2章 新生活スタート
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しおりを挟む散歩をしたら庭がかなり広くて、驚いた。しかも表ではなく中庭と裏庭を歩くことにしたのだが、なんなんだ? この広さは……。狭い土地を活用してる日本人に謝れ! とは思うけど、外国の家って都市じゃなければこんなもんな気もする。しかも貴族となればそこ広さも普通な気がしてくる。うん、俺が居た世界とは違う次元の世界なんだから気にしたら負けなのかも……。
よし、マップルマップル~っ! この家にはハーブティーに出来そうなハーブは無いの?
そんな質問を脳内ですると至るところに矢印があった。ヒハツの時よりも若干押さえ目にしてくれてるのか目に優しい仕様になっていた。マップルさんったらやっさしぃ~っ♪
【ルカーっ! ちょっと待って、触るな! あ、どーも。辞書るだよ~? うんうん、間に合って良かったよぉ~……。それ、トゲがあるから素手で取ったらダメだよ?】
おぉ、辞書るもやっさしぃ~っ♪ みんないつもありがとうね。って事で、散歩がてら裏庭にいるため道具は一切ないのでトゲに気を付けながらツルツルした落ち葉で挟みながら爪でプチっと切り取った。
【パンパカパーン♪ セイヨウイラクサ。ネトルをゲットしました】
「ルカ? その雑草がどうしました? ……もしかして千切ったんですかっ? 指にトゲが刺さったりしてませんね?」
何故か過保護に拍車が掛かったようなグレン兄さんにギュッと手を握られて指すべてをじっくり見られました。えーっと、確かにトゲは凄いなと思ったけどそこまで心配するほどじゃなくない? 毒ではないんだし──。
「え……? 雑草……。あー、雑草と言えば雑草ですよね……。うん、確かに言われてみれば雑草なのか……。えーっと、枯れた葉っぱで挟んで千切ったから大丈夫ですよ?」
でも雑草。雑草かぁ~……。この草は荒れ地によく生息するらしいもんね……。うぐぐ、そうか。やっぱりハーブと呼ばれる物は雑草扱いなのか……。だけど、この葉っぱはチクチクするけど味はなかなかというか、結構好きなんだよね~……。そうだ、いっぱいあるし、お茶を作ろう!
「えへへ、何に使うかはあとで教えてあげるね? 取り合えずこの葉っぱが欲しいの! いぃーーーーっぱい!」
ニコニコしつつも強制的に採ろうと言うと、やはり心優しい兄さんは一緒に取ってくれた。ただしトゲが刺さらないように気を付けましょうねとグレンさんはハサミと布手袋にザルを借りて来てくれて、それからゆっくり切ったので時間がかかったのは仕方ない。
こんなことにも笑顔で付き合ってくれるんだ……。えへへ、やっぱり大好きだなぁ…………。俺、確実にブラコンなんだろうなぁ……。
「グレンさん。あのね? 本当は僕に兄さんと呼ばれるの嫌じゃない?」
「うーん、そうですねぇ……。私はルカに無視される方が嫌ですから好きに呼んで構わないですよ?」
あ、眩しいっ! なんでそんなキラキラした笑みで……。無視なんてするわけないよね! だってこの世界で俺のグレンさんへの依存度は100%だよ? なにか困ったらパパやママより先に相談する確率は99.99%。つまりはエンドレスナインなんだよ?
それからまたサロンへ戻るとママに不思議そうな顔をされた。まぁ、確かに雑草の葉っぱが入ったザルを嬉しそうに俺が持ち、付き合いでもう一つ持たされているグレンさんがいるのだから当たり前の反応か──。
「えっと、ルカ様? それは一体……。確かそれは裏庭に大繁殖してトーマスがトゲがあると怒り心頭の草では……」
「ヨハン。あのね? これはセイヨウイラクサという名前なんですけど、別名ネトルって言って綺麗にしてから乾燥させて紅茶のように淹れると美味しいハーブティーになるんだよ? それに確かこれは生のままスープとかに入れても加熱すれば食べられる葉っぱだったはずだよ?」
『はーぶてぃ?』
あ、やっぱり浸透してなかったか……。しかも全員に不思議そうな雰囲気で言われた気がする。カタカナと言うよりもひらがな。発音が変というか棒読みというか……。俺的には面白かったし、可愛かったから気にならないし、気にしない。
「そうだなぁ、薬草茶ともいうのかな。でも僕個人的には薬草茶だと美味しくなさそうなイメージでしょ? 香草茶でも良いのだけど、ハーブと呼ばれる物は草じゃない物もあるから総称としてハーブティーって呼んでた気がする……」
ズルい戦法ではあるが俺は馬車に轢かれて一部分の記憶がない子を最大限に使いたいと思います。取り合えず今すぐ飲みたい気持ちを抑えつつも俺はニコニコしていた。
「クリーン(除菌洗浄)、ドライ(食品乾燥機)」
乾燥した葉を両手にたくさん持って確認してから数枚をこっそりム・ゲンに収納した。んでもってフ・クセイに頼んだ。思う存分やっちゃってと……。
「わぁーい、完成した~っ! ミリアム、紅茶は何分蒸らすの?」
「……こちらの砂時計が落ちきるまでです」
この世界に砂時計もあったんだねぇ~……。ざっと大きさから見て3分くらいなのかな? なら二回落ちきれば大丈夫かな? 本来は確か7分だったはずだけど……。ティーポットを借りてやろうとするとミリアムに奪われた。えー? 大事なポットを得体の知れないものに使うなってこと?
「ルカ様。私がやりますからやり方だけ教えてください」
あ、そう言うことか……。成程、この世界の貴族の家では自分でやってはいけないのか……。いやいや、着替えくらいは自分でしたいですけど?
「えっとね、コレをまず手でこの乾燥した葉をグシャッとクラッシュさせたらティースプーン2杯。それで熱湯を注いでこの砂時計で二回落ちきれば蒸らしは完成。スプーンでかき混ぜて均等になったら茶漉しを使って注ぐの」
「なるほど、紅茶とあまり変わらないですね。わかりました。少しお待ちください」
ミリアムは出ていったので不思議そうにドアを見ているとローラが湯を取りに行ったのだと教えてくれた。えー、面倒くさいんだね……。わざわざ取りに行くのか……。湯沸かしポットとかあれば良いのに……。
「早く僕のキッチンが出来ればお湯を取りに行く手間が省けて良いんですけどね」
そう言うとローラにモニカ。そして執事であるヨハンまでもが驚いた顔をしていた。
「え、どうしたの?」
「ルカ様。ルカ様に用意されるキッチンをルカ様以外も使ってよろしいのですか?」
「え、当たり前じゃないですか。わざわざ下まで取りに行くの手間でしょう? 仕事が楽になるなら全然構いませんよ?」
独り占めするわけないでしょ? この家にあるのはこの家の人が使っていいと思うんだよね……。
「「ありがとうございます!」」
え、お礼言われることなの? あ、言われることなんだ? ママにルカちゃんは優しい子ね~っ! と言われました。グレン兄さんには微笑むような笑みで見つめられていました。
「ルカ」
グレンさんにおいでおいでされて行くと足の間に座らされて抱き締められた。ん? と思ったものの居心地いいのでそのまま大人しくしていた。甘えん坊とか言うなし! ブラコン何だから良いでしょ?
「ルカ? 先程あの乾燥させたものを薬草茶だと言いましたが、アレには薬効成分があるのですか?」
「えーっと、確か貧血とかに良いらしいよ? 特に女性にお薦めだったかな?」
「女性に?」
「うん。ほら、女の人には月のものがあるじゃない? どれくらいの期間なのかは知らないけど……。栄養もあるからお薦めだよ?」
と、話をしているとミリアムがやって来た。
「ルカ様? どうやらリンゴと壷が用意できたそうですよ?」
「ホントッ!? ……あ、でも僕は中に入らない方がいいんだよね……? ヨハン。あの、リンゴを適当に切って同じ量に分けて壷に入れたのを持ってきてくれませんか? あとお水も多目にお願いします。壺にはクリーンをちゃんとかけてくださいね?」
困ったように言うと彼は何事もなかったかのように畏まりましたと言った。とりあえず言いたいことは伝えると直ぐ様出ていき、すぐに抱えて戻ってきた。うん、何て言うのかな……。力持ちすぎやしませんか? 片手にリンゴが入った陶器の壺が二つ。片手には水の入ったピッチャーと言うべき? 時代的には水差しの方がしっくり来るのかなぁ~……。まぁ、水差しでいっか。それを涼しい顔をして戻ってきたのです。執事ってそう言うものなのかな……。
「わぁ、ありがとうございます! ふっふっふ。に、い、さ、まぁ~~っ!」
油断していたグレン兄さんにどぉーん! とぶつかるように抱きついたのだが、驚くこともなく、倒れることもなく、面白そうなことは何一つなくて少しばかり残念です……。俺個人としては体当たりに近いぶつかり方をしたのに──。
「は? ……ルカ、その悪巧みみたいな顔は如何なものかと」
「悪巧み……。ねぇ、兄さん。魔法でこの壷にこれと同じ量の水を入れて欲しいんだけど」
その言葉に部屋は静かになった。
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