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第2章 新生活スタート
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しおりを挟む「さてと、グレン兄さん」
抱っこされたままグレン兄さんの部屋に入ってすぐに下ろしてもらったのだが、そのまま抱き付くように彼をドアへ押し付けた。──あれ? これってもしかして女の子憧れの壁ドォーン?
「ルカ? …………その前に聞いてもいいですか? ルカ、もしかして背が縮みましたか?」
……そうですね、12、3センチくらいは軽く縮みましたけどっ!? グレンさんが年齢書いたのか知らないけどそのせいでこの異世界の年齢として定着するかのように身長が縮みましたけど!? 責任取ってくれませんかね。結果、3歳半ほど若返ったんですけど? どうしてくれるんですかね? 責任──弟にしてくれて衣食住与えてくれたから責任とってくれてるような気がしてきたな。うん、やめておこう。背が縮んだ理由かぁ~……。
「…………あー、実は靴に布とか板とかいろいろ詰めてまして……。無理に厚底にしてました……。背が高ければ大人に見えるかなって……。あ、でも走ったり出来るようには工夫はしたんだよ?」
──んなわけないでしょーっ!? でもそれしか理由浮かばないんだから仕方ないでしょーっ!? 縮んだ事に対しての説明を思い付いたらどなたでも構わないので教えてください。とネット環境があったらスレ立てしてるところでございます。まぁ、あの時俺が履いてたのがブーツだったから脱げなかっただけ……と思ってくれないかなぁ~……。やっぱり無理かなぁ……。
「そうですか……。ルカはもう無理に大人の真似をしないで良くなったんですね……。良かった」
──うっ! グレン兄さんに囁かれるように言われた良かったに対してはっきり言えば心が痛む。しかもギュッと抱き締められているからかな? 今日まで微妙な嘘をつきまくっているせいか罪悪感がとてつもなく凄い。でも家はどこ? 異世界から来たの~とか本当のことなんて言えないじゃん? …………だから罪滅ぼしとして俺、絶対に料理無双するからね! ご飯が美味しければみんな幸せになれるはず! 領地が潤えばパパたちも幸せだよね! イコール、グレンさんも幸せだよね!
【──そこは罪滅ぼしとして俺が幸せにするとか言う場所じゃないの?】
【我輩もそう思うのでアール】
【料理は愛情なんですのヨ!】
くっ……。いや、でも、その……。グレンさんの年齢なら許嫁くらいはいる筈でしょ? その人に幸せにしてもらえば…………。ん? そう言えばグレンさんの年齢なら許嫁居てもおかしくないんじゃないの? なのに女っ気無くない? この人……。
「あれ? そう言えばグレン兄さんは結婚とかしないの? その年だと婚約者とかさ、いると思うんだけど……」
「…………あー……。うーん、ルカも昨日の魔導師団の方々の反応を見てわかったと思いますが、水属性は本当に重要視されてないんですよ。なのでご令嬢達も火や風といった有望な属性を持つ男へ靡きますからね……。ただ、金に目が眩んで言い寄って来る方も少なくはなかったのですが、年齢はルカぐらいの時ですかね……。父上と母上が一刀両断にしましてね? 今は誰も来ませんね」
そうか、パパとママが金目当ての役に立たなそうな令嬢の家をぶった切ったせいで恐れをなして近寄ってこないと言うわけか。そう考えると婚約者なしなのは仕方ないのかもなぁ~……。ただ、跡取りとしてはどうなのかと思うんだけど、これはパパ達が責任とるべきだろうから見守っておこうかな?
「ふぅーん? そうなんだぁ~? でもそんな懐も器も考え方も極小なご令嬢が結婚相手じゃなくて良かったじゃない。それに金に目が眩んだ奴なんてろくなのいないよ? 俺、グレンさんには幸せになって欲しいから許嫁とか居なくて良かった~っ!」
ニコニコしていれば脳内で色んなのがモガモガ、モゴモゴ、なにかを訴えようとしているが口を塞がれているような様子で大人しくなった。しかもグレンさんは少し照れたような顔で片手で口を覆いながら顔を反らして何か思案しているようだ。
──え? 俺、なんか変なこといったっけ?
うーんと、グレンさんには許嫁は居ない。顔と金に目が眩んで近付くものの水属性をバカにする令嬢が側に居なくて良かった~って言っただけだよね……。
「ルカ。ルカがいた国では知りませんが、この国は同性での結婚も許されています。だから勘違いされて困ることは言わない方が良いですよ?」
えーっと、同性婚が認められている……? へぇ、そこら辺は認知や受け入れ方と言うか日本よりもずっと先を進んでらっしゃる。
「……グレンさん! グレンさんはもしかして男に言い寄られて困ってるの? 困ってるなら俺、イヤミみたいな奴はボッコボコにするから今すぐ言って?」
「は? いや、ルカ? 何でそうなるんですか? 確実にルカが勘違いされてもおかしくない言動をして襲われるから気を付けろと言ってるのに」
「…………? 俺、ちゃんと気を付けてるよ?」
呆気に取られたように言えば頭から盛大なため息が聞こえた。
「ルカ、あえて言いますね? ルカはとても可愛らしい顔をしています。私含めてルカが例え男であっても自分のものにしたいと思うでしょう」
いやいやいやいや、んなわけねー! 俺、女にも男にもモテてないよ? モテてたらバースデープレゼントに嫌がらせみたいにバレンタインチョコをくれるわけがないじゃん! 幼い子以外にチョコが誕生日プレゼントとかどの世界に喜ぶやつがいるんだよって話だよ?
「それにこの国には男であっても金さえあれば子を宿すことは可能です。現に第四王子は男の愛妾から生まれた子ですから……」
はぁっ!? いやいやいやいや、なにその怖い話! 本当にあった怖い話みたいなさ! しかも金さえあればってところがマジリアルっぽくて怖い! 話をちゃんと聞いたら聞いたで、男同士の子供は男しか生まれないっていうのもマジリアルっぽくてイヤ。──てか、王様。正妃と側妃の他に男の愛妾がいるんかぁーい! 開発チームはまさかの腐女子と腐男子の混合チームかぁーい! マジ腐った設定の世界だな……。さすがクソゲー……。
えっと染色体がXYの男同士だとXX、XY、XY……。YYはさすがに無いだろ。たぶんゲームだからXYYのスーパー男性になりそうだとは思うんだよね……。イメージとして見た目背の高いイケメンの精神でも肉体でも何らか一部が極端な感じがする。取り合えず、なるほど。男に生まれる確率高いわ……。
あれ? この世界、男同士でもOKって……。グレンさんはなんであの時……。
「……ルカ?」
「……………………あ、と──。ううん、何でもない……」
あの時俺を抱いてくれたのは性欲が溜まっ──いやいや、グレンさんは優しかったもん。でも……お互い利害の一致故にただの性欲処理とかじゃないよね……? え……性欲処理だったらどうしよう……。もしかしてセフレ? いや兄弟になったし、セフレと言うか……。あ、考えるのやめよう。ちょっと切ない……。
「それでオハナシとはなんですか?」
「えっと…………ううん、なんかもう言いたいこと忘れちゃったみたい。兄さん。僕、お庭行ってみたいな……」
「……ルカ……。そうですね、散歩にいきますか?」
「うん! あとね、あとねぇ、今日は一緒にいてくれるなら一緒に寝てもいい? なんか、一人は慣れなくて……」
ギュッと手を繋いでくれて歩き出すも心の中は依然として悶々としていた。
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