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第1章 気がつけば異世界

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「湯、ですか……。ホットウォーター……。確かに熱い水と言う意味ですけど……」

 頑張れ! 頑張れ~っ! そしてイメージするのです! 自分本意になりますがこれから冬に向けての俺の足湯のために! 一緒にいるかは別として、嫌われていないなら遊びに来ても怒られないってことだよね? よっしゃ、この世界での優しいお兄ちゃんゲットだぜ!

「所でルカ。もし使える属性が選べたら何がいい?」
「ゼノさん? うーん、そうですねぇ……。属性って火、水、土、風、聖でしたか? うーん、悩むけど生きていくなら水かなぁ……。グレンさん、良いなぁ……。水でーー。水と土が個人的には欲しいかな。この二つがあれば生活には困らないと思うし」

 お湯も氷も出せるなら無双じゃね? 地で家も建てられそうだし──。それに俺、見つけちゃったんだ~っ! 少し使用済みだったけどライターがム・ゲンさんの中に入ってたの……。既に複写済み! 開封済みとは言えタバコもあった。これも複写済み! 着火材として使えるよね!? タバコの本数は減ってなかったからたぶんタバコを吸おうとしてハンドル操作誤ったのかもなぁ……。んで事故を起こして慌てて出てきて車の運転してた人のがポケットから俺の上に落ちたんだろうな。んで、俺の財布を盗んだ……。え、ゲスって言うかクズじゃね?

 ま、そんなこんなで俺、火種持ってるから火の属性なくても平気!

「ルカ……」
「戦いならそりゃ火と風なんだろうけど、水も凍れば攻撃できますよ? ほら氷柱みたいなのを出して脳天から落とせば即死するんじゃないかなって思うんですけど……。火を纏うモンスターがいたら水攻めしたら死にそうだし……」

 そんな言葉をいったら三人は想像したのか「うわぁ……」と嫌そうな顔をした。氷柱って時々小説や漫画で密室殺人の武器とかに使われるじゃん? 溶ける武器。格好いい。それにしてもさ? 三人の反応に傷付くわ……。水って液体だからかなり万能だと思うけどなぁ……。ジェルにしたら寝心地の良さそうなベッドに──え、良くないか? でも現代過ぎるか。言うのはやめておこう。でも寝心地良さそうだしなぁ。これは棄てがたい案だな──。懐で暖めておこう。

「あ、でも土はやっぱり捨てがたいですよね。野菜とかよく育ちそうだし! 土の魔法で畑つくって水で水まきしたら楽に農家出来そう。うん、水と土が欲しいです!」

 言わずもがな、三人に笑われた。いやいや、クスクスとかそんなんじゃなく爆笑だからね? もしかして俺の魔法の概念が常識ともしかして違うのかなぁ……。お留守番の時にゼノさんに聞いたらそこに生えていた草。現代ではハーブの一種なのだけど、ここでは雑草扱いみたいだし? ハーブティとか姉の図鑑を駆使して流行らせたいんだけど? なんなら俺、ハーブの農園つくってカフェ経営とかしてもいい!


 神様! 俺に水と土の属性をくれ~っ! いや、下さい~っ!


   ◆


「…………いやいや、いやいや、いやいやいやいや!」
「ルカ、どうかしましたか?」

 え、逆になんでもないような顔をしてる貴方にその言葉をそっくりそのままお返ししますけど──。
 現在、俺は現代で言う区役所や市役所と言った場所へグレンさんとやって来ている。もちろん予想通り、俺には戸籍などありませんでした。天涯孤独です。それはいいよ。覚悟していたから……。なので「戸籍を新たに作りましょうね」と笑顔のグレンさんに言われ、窓口にいた人の案内で奥の部屋へと移動させられた。

 そこまではいい。そ、こ、ま、で、はっ! いいんだ……。作らないと何もできないからね。

 んでもってグレンさんの実家が後見人になってくれるって言うんで本当にすまないなぁ~……と思いながら書類に記入をしていくグレンさんを見つめていたんだよ? そりゃもう、申し訳なさすぎてしゅーんというかしょぼーんというか……。そういった効果音が聞こえそうなほどにしおらしくしてましたよ。男がやる行動かは別としてね──。
 んで「ルカはここに名前を書いてくださいね」と紙を渡されてペンを持ったんだ。そしたら目に入ってきたのは『養子縁組』の四文字でした。


 しかもグレンさんではなく、グレンさんのご両親との!


 これ、どうしたらいいの? とりあえずグレンさんは父親と母親の両名による書状をもって代理として居たらしい。
 え、俺がグレンさんの弟とか……いやいやいやいや! あ、でも兄とはまた違った優しさのグレンさんがお兄さんとはなかなか嬉しい……じゃなくて! ちーがーうーだーろーっ! お、懐かしいな、このセリフ。……じゃなくて! 少し考え直しなさいよ、あんた! おっと、失礼。あんたではなく少し考え直しなさいよ、グレンさんっ!! 確かに俺に戸籍ができるけど、ちょっと違くない? なんか違くない? 戸籍作るってさ、こう、イメージ的にさ? 用意された紙に名前とか後見人だか連帯保証人だかを書いて、はい終わりじゃないの? そう言ったらさ、役人がね? まず王立裁判所で他国で二重戸籍になる可能性を考察しつつ戸籍を作る許可を話し合いの末にOKを出してくれたら作れるのでかなり時間がかかりますよと──。
 ゲームの世界に現代的要素を入れるんじゃねぇですよっ!

 開発チーム本気でバカなの!?

 そして俺が渋っていたら部屋にグレンさんと同じ色味をした渋めのダンディーさんとグレンさんに良く似た顔付きのミセスがお越しになりましてな? 二人ともに俺を見るなり「今日から君のお父さんだよ。パパって呼んでね?」と、ダンディーが──。「今日から貴方のお母さんよ。ママって呼んでちょうだいね?」と、ミセスが──。そして少し前のいやいやを連呼する状況へと戻るのだ。

「父上、母上も……。急すぎてルカがビックリしてますよ?」

 したけど、ビックリしてるのはそこじゃねぇわ! もう、なんなの? ナンなの? あー、ナンかぁ……。 うぅ、カレー食べたい……。家近のインドカレー屋さん美味しかったなぁ……。

 ……じゃなくて!

 俺、身寄りないでしょう? だから一人でもちゃんと生きていけるように戸籍を作るわけでしょう? 仕事しないと生きていけないし……。グレンさんにそう言うとダンディーにギュムッと抱き締められた。

「今日からパパ達が傍にいるからもう安心していいんだよ~っ」

 いや、だから人の話を聞けやぁーーっ!




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