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第1章 気がつけば異世界
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しおりを挟む「さて、ルカ。明日の事を説明しますね? まず朝、役所へいって戸籍を調べ、無いようなら作らねばなりません。そしてその後は宮廷魔導師団の隊舎で魔力検定をします」
「まりょくけんてい?」
「えぇ、前に生活魔法を教えたときにサラッとですが言いましたよね? 魔法を使うには扱える属性を確認してからでないと無理だと……。この時期は魔導師団でないと調べられないんです」
なるほどー……。以前生活魔法を習ったときに「攻撃魔法って誰でも使えるの?」と聞いたところ、庶民でも魔法素質はゼロではないらしい。いずれかの属性は持っているそうなのだ。それは一つの人もいれば現在最高数は四つ。ピンキリらしい。強さ等は人それぞれらしいのだが、俺としては習えるか習えないかなのだろうと話を聞いて思ったことだった。庶民は学校へ行かない。金もないし、必要ないとされているからだろう。識字率が著しく悪そうだと思われる。悪人に詐欺に遇う確率が高くなってしまうではないか。俺だったら小学校までは義務教育にするけどな……。あぁ、そうか。ベースとしている時代背景は子供も立派な働き手なのか──。
「あのぉ、魔法って誰でも使えるの?」
「うーん、そうですね……。強さ等は人それぞれですが……。ちなみにアンドレアは風。ゼノは火を扱えますよ?」
「風と火……。じゃぁ、グレンさんは?」
そう言うと何故か苦笑いをされた。苦笑いと言うか、悲しそう? あれ? どうしたんだろう。そんなツラそうな顔みたくなかったのに……。俺、何か変なこといったかな……。
「私はあまり役には立たない水ですね」
「え、役に立たないんですか? 飲んだりとか……」
「ルカ、魔法で出した水は美味しくないんだよ」
と、アンドレアさんに言われた。でも俺はそんなの納得なんかできない! 無理に出してもらって飲むと何となくわかった。綺麗すぎるのだ。つまりは純水。不純物が入っていないのだろう。そう、ミネラル分も一切なし。お掃除。特に窓掃除にはもってこいじゃん!
「んー? でもこの水って綺麗すぎるから味気ないってことですよね。この水でお茶淹れたり、料理に使えば美味しくなると思うけど……。それに水が綺麗なら怪我したときに化膿しないように患部を洗い流すのにも適してますよ? たぶん」
細菌とかのイメージができないと消毒液とか作れなさそうだしなぁ……。そういえば昔は傷口に蒸留酒とかそんな話を聞いたなぁ……。遠征中に観察したけどやっぱり飲む酒はワインなんだよね。あの時は側にあったのにも関わらず誰もブランデーを飲んでいなかった。
「傷には蒸留酒だろう?」
「なんでですか? ブランデーって何の効果があるんですか?」
そんな質問をすると簡単に言えば怪我が悪化しにくいと言うことだった。つまりは消毒ってことだよね? なるほどなるほど。でもさ、ブランデーって勿体なくない? お酒だよ? 常に側にあるものなの?
「うーん、俺、何時だったか怪我したときに血が出てるところをお湯を冷ました水で洗い流してから治療してもらったことあるんですよね……。化膿しなかったけどなぁ……」
嘘です。本当は普通に水道水で体にバイ菌が入らないように土や砂を洗い流すと同時にバイ菌も洗い流してました。その上から絆創膏だね……。
「それによくよく考えたら水って大事ですよ? 今飲んでる水がなくなったらどうします? 俺はグレンさんから絶対に離れないですね。人も動物も作物も美味しかろうが不味かろうが水は必要なものだもの……」
ニコッと笑うと皆ポカーンとしていた。…………あれ? 何か変だった? 普通のことだよね? 水がなかったら死ぬもん。汚いけど美味しい泥水か綺麗すぎて美味しくない水なら綺麗な方を選ぶね! 泥水をろ過するの面倒だし──。
「ルカ……」
近くにやって来たグレンさんの腕が伸びてきてそのまま抱っこされたんですけど……。しかも何かいつもと違う感じがして心配してしまう。だって抱っこはするけど俺の胸に顔を埋めている。手持ち無沙汰な手はグレンさんの頭をポンポンして宥めていると俺の胸にある頭がクスリと小さく笑った。
「ルカ、ありがとうございます……」
「え? お礼言われるようなこと俺、なにもしてないですよ?」
キョトンとしてるのは自分でもわかったけど、ゼノさんとアンドレアさんは笑っていた。そして教えてくれたのだ。水魔法は役に立たない魔法だと世間一般的に言われていると言うことを……。俺の考え方が斬新だと言うことも……。えっと? これはもしかしてグレンさんのプチ闇? トラウマかなにかなの?
水属性持ちは火と同様に少な目らしく、割合からすると土>風>水、火>聖らしい。でも水は攻撃できないから役立たずな属性と言われているそうだ。
なんだそれ! 水は貴重なのに!? 水で商売すら可能なのになに言ってんだこの世界は──。迫害? そんなことする奴は水に困って死んでしまえ! そんなことを思いながら俺はグレンさんの気持ちも何となく察し、頭を撫で続けた。グレンさんが落ち着くまで待ち、そろそろ良いかな? と口を開いた。
「グレンさん。あの、少し質問をしてもいいですか?」
「なんですか、ルカ。なんでも聞いてください。答えられるものならお教えしますよ?」
顔を上げて目があったがなんと言うか甘くないですか? いや、雰囲気的に……。あっれー? 知らずにトラウマ抉ったよね、俺。そんな相手にそんな極上な顔を見せたらダメだと思うの。
「あのですね? 熱い水は出せるんですか?」
出せたらマジ最強! 火が使えないところでも温かいのが飲めるし、人やモンスターに使えば火傷は確実! 氷系のモンスターなんてのが居るなら即死じゃね?
水、液体ゆえにマジ最強!
「湯……と言うことですか? いえ、それは無理ではないかと……」
「えー? でも俺、小さいときのだからあやふやだけどお姉さんが温かい水を出してくれて飲ませてくれたよ? ホットウォーターって……」
嘘です。ただのイメージで頑張れと言う無茶ぶりです。でもさ、それが出来れば固形も出せるってことだと思うんだよね……。暑くなる夏のために俺は氷を出せる人希望!
俺、熱いの苦手!!
ちなみにお湯は桶に出してもらって足湯のためですよ。
俺、寒いの嫌い!!
強いて言えば嘘をついたと言うか、熱出した時に姉にポットから注いでもらった湯を飲んだ事があるだけです。あ、嘘は言ってないかも! お姉さん(姉)に「はい、お湯!」って手渡されたし……。うんうん、俺、正直に思い出を話しただけだわ。
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