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第1章 気がつけば異世界
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しおりを挟む「う……?」
気が付くとフッカフカとは言いがたいが野営と比べると柔らかいソレはベッドで、ゆっくり体を起こすと筋肉疲労なのか脱力感が凄かった。──な、の、に、何故だ……。朝じゃない。時計と窓の外を見る限り朝じゃない。どうして勃ってるんだ、ジュニアよ……。
辞書る! 辞書る~っ……。一つ目触手丸ってもしかして毒とかあんの?
【《一つ目触手丸》一つ目触手丸とはロマンシング・ファンタジーに登場するモンスター。ランプ(緑)の通称。体液に毒あり。成分は遅効性の強い発情を促す】
遅効性……。しかも発情促すとか知りたくなかったわぁ……。ムラマシャール! 覚えてやがれ! コノヤロウ! ベッドのわきのサイドテーブルに立て掛けられた日本刀を恨めしく見ると体は火照り、鼓動はあり得ないくらいドックンドックンと速く動いていた。異世界で一人でやるにもオカズがない……。
「んっ……」
ほんとになにコレーーっ! 足を動かして体育座りしただけなのに、ビクンッてなった……。ヤバくない? 誰もいないうちにやればいい? でも実際やったことないんだよなぁ……。俺、性欲よりも睡眠欲と食欲が強いからなぁ……。性欲が溜まるとかも学校で友達が話してるのもよく聞くけど……。えっと? やべ、やり方わかんねぇ!
【はぁ……。マジか……。とりあえず、胡座とか自分がリラックスできる座り方しなよ……】
うぅ、とりあえずいつも家で座るみたいに壁に寄りかかって足を少し開く。
【ギャルゲーとか自分の萌えるシチュエーションとかを想像して親指と人差し指で弱い力でゆるーく動かす! 強くやったら後々苦労するよ? 後は試行錯誤して頑張れ! 俺は今日はもう干渉しないから! 頑張って励むんだよ? コレから日本の若者文化を体験しようってみんなでタコパーなんだよね! ミドリは疲れて寝てるから蹴ったりしたらダメだよ?】
そう言って辞書るは去っていった。タコパーとか羨ましい。…………それにしたって想像、妄想っていったってさ……。とりあえずズボンを少し下ろして猛った自分の息子さんをそっと手でくるむ。
「ん…………ゾワゾワするけど、っん……」
やっぱり何にも思い浮かばねぇ! こんなとき、兄がいてくれたら助けてくれるのかな。いや、そもそもこんなの相談なんか…………。あー、同じことが起きたらやりそうだな、俺──。
俺の兄への信頼度は100%!
「あ、っふ……く……」
辞書るの言いつけを守ってゆるーくゆるーく動かす。気持ちいい。でもそれ以上に物足りない。妄想もなにもしていないのだから当たり前か……。しかも無駄に触った分、快感が変に刺激され、先っぽから透明な液体が溢れている。
「小学校の時の性教育ってどんなだったっけ……?」
無理っ! あぁ、そうだ。外の冷たい風に当たれば少しは治るのかな……。服を戻して、椅子の背もたれに掛けてあった上着を羽織った。ちなみに俺はシャツしか着てなくて寒いだろうとグレンさんが出会った最初の村で厚手の可愛い感じの服を買ってくれたんだよね……。お陰で馬に乗ってても寒くない。まぁ、グレンさんが過保護なのかギュッてして、身に付けているマントで風避けもしてくれるからだけど……。えっとたしか、ムラマシャールは寝てるんだっけ? 仕方ない置いていこう。部屋を出るとドアを見つめた。
「206ね……。覚えておかなくちゃ……」
ドアを閉めてゆっくりと歩き出すと下が何だか賑やかだった。あ、騎士団の人達かな? どうやら階段の下から聞こえるのでそこは必ず通らないといけないらしい。階段を下りる度、擦れて体がビクリとなる。ゆっくり我慢して下りる度に気持ちいいんだか辛いんだかわからなくなる。気持ちいいのかもしれない。我慢してるせいか涙が出そう。
「……ルカ? 起きたんですね。気分はどうですか?」
「ルカ、食欲あるなら……どうした?」
すぐに見つかってしまった。まぁ、階段の下が食堂みたいになっているのだから当たり前か。側にやって来たグレンさんが片膝をついて俯いていた俺の顔を覗くようにした。
「ルカ? …………怖い夢でも見ましたか?」
いや、ほんとにさ? 俺を何歳だと思ってんの? 怖い夢見たのーって泣きながらぬいぐるみ抱き締めてるわけないでしょ? 本当に失礼だと思うの! 面と向かっては言えないけどね?
「ううん、外で少し風に当たろうかなって……」
グレンさんが頭を撫でる度、体の奥がゾクゾクッてする。これがただの熱で、風邪なら良かったな……。とにかく顔を見られたくないのに下を向いていたらグレンさんと目があった。
「だんちょー。だーからー、言ったじゃないれすかぁ~っ」
「そーそー! 毎日一緒に寝てるのに今日は別々だから寂しくなったんじゃないんですかー?」
「ルカは優しいお兄ちゃんに甘えたい盛りなんですよ~、きっと」
だまらっしゃい! どうせ俺は生粋のブラコンですよ! 兄無しじゃ生きてけませんよ! 生きてるけど……。うぅ、兄ぃ……。これ、マジでツラいよぉ、助けてよぉ! 兄を思い出してポタッと涙をこぼしてしまい、グレンさんに抱っこされた。
「んんっ……」
ピクッと震えたのにグレンさんがため息をついた。
「…………ルカ……。お前たち、飲みすぎは気を付けるように! 私は少し早いですがルカともう寝ますね……」
「グレン。ルカは大丈夫か?」
「ゼノ、アンドレアも……。大丈夫ですよ。ただ、ルカよりもここにいる酒飲み達の方が大丈夫じゃない気がしますから後はよろしくお願いしますね?」
そう言ってグレンさんは俺を抱っこしたまま来た道を戻っていった。206。俺の寝てた部屋。何事もなく中に入って鍵を閉めるとそっとベッドに下ろしてくれてまたグレンさんが片膝を床についた。
「ルカ、いったいどうしました? 何だか変ですよ?」
「ふっ……グレンさん……。あのモンスターのせいで俺、俺……」
ポロポロと意思とは関係なく流れ出る涙に心のなかは複雑だが、彼はそっと涙をぬぐってくれた。そして理由を話すと少しばかり恥ずかしい思いをしたのは仕方ない。だって何かのプレイなのかと思ってしまうほど聞いてきたから……。気づいたのはいつ? とか、発情以外は何かあるか……とか。医者の診察みたいな質問で、答える度にどんどんと羞恥心が酷いことになっていった。
「俺、一人でやったことないから気持ちよくなるやり方なんて全然わからなくて……。その……こんな風に発情? 欲情? すること自体が初めてだから……。さっきもなんとか頑張ろうとしたんだけど……」
「ダメでしたか?」
素直に頷くとグレンさんがため息をついた。呆れられちゃったかな? 嫌われちゃったかな……。でも考えてみれば自分にどうしてほしいのってなるよね……。確かにどうしたら良いの?
「あ……だ、だから、風に当たろうかなって……」
「こんな状態で外に出るのはやめなさい。襲われますよ? ──ルカ、つらいんですよね」
その言葉にコクコクと頷くと何故か俺はグレンさんにキスされた。
「んーーっ! …………っちゅく……ん……」
触れるだけのチューからベロチューになった。そして少ししてグレンさんはペロッと俺の唇を軽く舐めて離れていった。いとも簡単にグレンさんは俺のファーストキスとファーストベロチュー、ファースト唇ペロを流れるように奪っていった。
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