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第1章 気がつけば異世界

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「……なにか様子が変ですね」
「嫌な予感がす……うっにゃぁぁぁっ!」

 シュンッ……と早いスピードの何かに足を捕まれ、そのまま斜め上へと引っ張られた。バランスを崩して馬から落ちると思った瞬間、俺は地面と抱き合うこともキスすることもなく逆さに吊られていた。
 あ、アイツは確か一つ目触手丸! 正式な名前は忘れた。球体に触手が沢山生えていて、真ん中に大きな目がひとつある。ちなみに薄い本では主人公たちはこの触手丸にイヤンアハン(自主規制)な事をされているのが沢山あった。開発チームはきっとソレ(薄い本)を狙ってコイツを作ったに違いない。あぁ、そしてなるほど。口は頭のてっぺんにあるのかぁ……。
 俺は今、某テレビ番組の「○○とったどー」状態。そして団長さんがこのモンスターの仲間を殺りながらこっちを気にしている。実は俺、騎士団からもっとも離れた場所に居るんです。

 触手、ドンだけ伸びたんだよ~っ!

 触手はご飯ゲット~っ! と言いたいのか小躍りして俺は上へ下へいろんな方向にシェイクされている。位置固定バンジー! 吊るされてるだけ! あ、刀。ミドリが抜け~っ! 抜け~っと言っている気がします。

【護身用。今抜かないでいつ抜くの?】

 今でしょっ!!(古い)

 辞書るが他人様のネタ振りをしてきた~っ! しかしミドリことムラマシャールを抜いたら抜いたであら不思議。腕が勝手に触手を切りました。俺、まっ逆さ~ま~にぃ~♪落ちてますよ~っ。もちろん大口開いた天辺にある口に向かってな! うわぁ、口の中にも触手がいっぱいある。あ、そっか。あれで口に入れたものの栄養を根こそぎ吸い取るのかな……。うわっ、キモッ! マジキモッ!
 落ちながらもクルッと向きを変えて着地したときには触手丸は断末魔のごとく叫び、口から貫通するようにして刀が刺さっていた。
 え、なにこれ! 血が流れ出ると同時に萎んだよ? 水風船的な? コレだったらドライでも簡単に殺せるんじゃね?
 考えている間に刀を持つ腕は両手になり、意思に反してモンスターが刺さったまま持ち上げられた。
 えぇっ! ちょっ、まっ、えぇっ! 刀や腕をつたうようにしてモンスターの血が一張羅のシャツをどんどん汚していくんですけどーーっ! 白いシャツが緑色なんですけどーーーーっ!! 気持ち悪いんですけどーーっ!
 説明するなら血と言うかオールインワンジェルをさらにゆるくしたみたいな? バラエティー番組のぬるぬる相撲のローションみたいな? いや、八宝菜、かに玉みたいに少しだけトロトロした感じ?
 そして刀は野球のバットのようにスイングしてスポーンッと抜けた触手丸はなかなかのスピードで仲間の大きな瞳めがけて飛んでいったのだが、ビタンッ! という痛そうな大きな音がした。まぁ、大きな瞳に直撃もなかなかだが、血が目に入ったらしくかなり痛いのだろう、触手が地面、そしてぶつかった元仲間をを思いきり叩きまくって暴れている。仲間割れに見えなくもない。
 あ、この刀。バーサーカーになるシリーズだ、絶対……。捨てても絶対に舞い戻ってくるやつ! たしか、刀、片手剣、両手剣、短剣の四種類。って、古本屋の店主が並べたラインナップ~っ! これ、ゲームだと笑ってたけどオート戦闘って体が勝手に動いて笑えない。今現在暴れているモンスター目掛けて足を動かして走ってるもん! 陸上短距離走選手もビックリな速さでな……。しかも今、ジャンプしたもん! 高跳び選手もビックリな跳力でな!

 マジ、なにコレーーーーっ!!

 平凡な高校生活をしていたゲーマーには少しハードすぎます。そしてまた、脳天目掛けてぶっ刺し、先程と同じように近くのモンスターに向かって投げ飛ばした。

「…………可愛い顔して恐ろしい戦い方だ……」

 侍従の誰かの言葉に俺は声を大にして言いたい!


 俺は無実ですっ!
 

 目潰しが効いたのかモンスターはあれよあれよと動かなくなり、最終的にモンスターの血と言うゲルにまみれた俺が草原に立ってました。この刀の名前はムラマシャール。伊達に村正の名前をもじってるだけあるわ……。怖いわぁ……。しかもこのシリーズ。スピリットソードだけに嫉妬心がすごい。他の武器を持とうものなら破壊しようとするんだ。だけど持ち主以外には何人たりとも抜かせない。うん、ちょっと可愛いかも──じゃなくて! あー……。最終的に俺、この刀とサヨナラしようものなら破産だわ……。

『出来れば売らないでくれると嬉しいな』
『大事にしますね!』

 あ、俺、現代日本で本屋の店主さんに約束しちゃったわ……。あのさ、ムラマシャール。絶対に捨てないからさ、もう少し俺に優しい戦いかたをしてくれないかな……。

 …………無視かよっ!

 ムカつくわぁ……。そう思いながらも刃や柄に付着したモンスターの血をシャツの綺麗なところで拭ってクリーン(除菌洗浄)をして綺麗にすると鞘へ戻した。素直に鞘の中に入るところを察するにモンスターがいないから満足したんだね、ムラマシャール。

【辞書るだよ! ちなみに無視じゃないよ? ミドリは照れてるんだよ? 今まですぐに教会で引き離されてたから……。捨てないって言われて照れてんの!】

 …………やべ、なんか可愛い。

「さてと……。クリーン(ヘアケア)、クリーン(洗濯物)、クリーン(蒸しタオル)、ドライ(ナノイオンドライヤー)」

 俺、ピッカピカ! キラーンッ! 効果音は自分で言いました。

「えっと、ルカ? 大丈夫ですか? なんか妙にクリーンを連呼してましたけど……」
「え? あ、はい。大丈……いや、少し疲れました……」

 あれ? なにコレ、俺が運動不足と言いたいの、ミドリちゃん? 疲労感パネェですけど!




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