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第1章 気がつけば異世界

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 えぇ、えぇっ! 皆さんちょっと聞いてくださいよ! ──皆さんっていっても騎士団の人しかいないけどさ? 誰でも良いから聞いてくださいよ~っ! なんと! 俺! 生活魔法! 使えた! 最初、全く使えなかったんだけどさ……。アレはかなり凹んだわ……。んで思い出してみたんだよね。ラノベのテンプレ!

 つまり『魔法はイメージ』ってやつを!

 コレってさ、最強だよね……。イメージでしょ? イメージなんだよ! つまり何が言いたいかって言うと、ガスコンロで言えばひとつのコンロで強火から弱火まであるでしょ? ファイヤーという火の魔法があるとして、イメージだけで強さをどうにでも変えられるってこと。まぁ、堂々と言いましたけど、攻撃魔法や治癒魔法は適正つまりは自分の扱える属性を調べないと教えられないって……。 今の時期は目的地の王都で調べられるんだそうな……。なんか調べるのに必要なものはとても高価なので初夏の季節に王都から持ち出して転々と各領地、各地域を訪問して調べるんだってさ。んでもってオフシーズンは全て王都で管理保管なのだそうだ。

 やっぱり王都には行かないといけないらしい。憂鬱だ……。

 戸籍がなかったらソレを作らないとやりたいことも何も出来ないよ? とグレンさんにもゼノさんにも、アンドレアさんにも侍従さん達にも言われた。先ずは可哀想な子卒業するためにも行かねばならぬ。


  ◆



 生活魔法。生活するのに必要な無属性の魔法なのだそうだ。
 明るいテントでグレンさんの膝になぜか座らされ、レクチャーされた。この明かりもライトという定番魔法らしい。蝋燭の明かりとか落ち着くけどやっぱり暗いもんね! とりあえずちゃんと弁解しておくけど、俺、男で17なんですけど……ってちゃんと訴えたよ? 訴えたけどこの方が自分がレクチャーしやすいと言われて渋々グレンさんを座椅子がわりにして練習をした。途中、ゼノさんがやって来て変な顔されたんだよね。当たり前か。平凡なもう成人している(予定の)男が団長であるグレンさんの膝の上に座っているのだから……。

 うーん、クリーンかぁ……。体を綺麗にするって……。あ、前に肺炎で入院したとき蒸しタオルで体拭いたの気持ちよかったなぁ……。あの時はお風呂に全く入れなかったから尚更だったな……。そんな事を思ってクリーンと呟くと体があの時のように気持ち良く、サッパリした。でも着ている服は綺麗にはならなかった。なので今度は柔軟剤が使われたフワフワの洗濯物をイメージしたら凄く綺麗になった。しかもさわり心地も抜群! なにこれっ!

 なので俺の生活魔法であるクリーンには(蒸しタオル)(ヘアケア)(洗濯物)(除菌洗浄)(トイレ)がある。ん、トイレ?
 ……それな……。ほら、この中世ヨーロッパの時代ってトイレはないからさ……。オマルとかでして、窓からポイが基本なんだよね……。まぁ、この国では庭の端に汚物を捨てる場所があるらしくて、道に捨てるのは禁止! 野営地も端っこに布を垂らした簡易的なトイレがあり、その奥に大きな穴が掘られて自分で排泄物を捨てて土を被せる。帰るときは掘った土をすべて被せて元に戻すらしい。それがなんか嫌でさ……。排泄物なんかあまり見たくないし、オマルも触りたくない。それが除菌が出来た経緯。トイレはなんかさすがにもうやだなって……。触りたくないなって思ったら出来たんだよね。便座が……ではなく、トイレにいってスッキリしたいってイメージしたら体からスーっと消えたんだ。出口を圧迫していた尿やウ○コが……。ま、もう汚い話はやめやめ!
 そうそう! 俺のシャンプーもといヘアケア凄いのよ! イメージがCMとか天使の輪が出来てるモデルさんみたいなのをイメージしたからトリートメント込み。でもさ、使うと頭だけ濡れてるんだよね。ドライヤーで乾かす前のタオルで拭き取った感じくらいに……。だから慌てて作ったよ! ドライ(ナノイオンドライヤー)を! いや、兄が初給料で買ってきたんだ。有名メーカーの最新のやつを……。今までのはイオンも何もなくて熱いだけだったのが、新しいドライヤーを何度か使って出てきた差が凄かった。そのイメージが強すぎたんだ、きっと……。それ以外にもドライは(衣類乾燥機)(布団乾燥機)(食品乾燥機)。たぶんイメージ次第でもっと増えそうだ。夏は日本みたいに湿気がすごかったらきっと除湿機とかやっちゃいそうだな……。



   ◆



 今現在、俺は最後尾で殿をしている団長さんの馬に乗せてもらい、二人乗りをしている。もちろん俺は前に乗っている。俺一人じゃ馬に乗れないしねぇ……。馬もいないし、俺は文句を言える立場ではない。文句を言える立場じゃないのも理解してる。でもな? グレンさん、お願いだから片手とはいえ腰に手を回して引き寄せないでください!! 手が動く度に気になって景色を堪能できないんですけどっ!?

「ルカ、今日はテントではなくベッドで寝れますよ? 村に泊まる予定ですから、ご飯もいつもと違ったものを食べられますからね」
「うわぁ、楽しみです……」

 わざとなのか? 耳元で囁かないで下さい。顔だけじゃなく、イケボとか……。何なんですか? イケメンですか? イケメンでしたね……。俺、耳が妊娠しないように気を付けなきゃ……。あはははは──。うん、無理だわ。なんか遊ばれてるのか、ささやく程の内容じゃないのに普通の会話を耳元で擽るように囁きながら話始めたよ、この団長様が……。




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