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第30話 ここが私の居場所
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またあの夢だ。大きな動物がロザリンドの体をすっぽり包み込んでいる。冷え切った手足は、徐々に温もりを取り戻し、血流がよみがえる。鼻をこすりつけてにおいを嗅ぐと、懐かしい記憶まで呼び起こされるような、安らかな気持ちに包まれる。ずっと前から不思議だった。この夢の正体は何だろう。ロザリンドはうっすらと目を開ける。すると、深い悲しみに沈んだライオンの青い目と合った。
「やっぱりあなただったのね。いつも私を助けてくれたのは」
かすれた声でそう言うと、ライオンが頷いたような気がした。人型を解いたレグルスに会うことは、ここしばらくなかった。しかし、彼女の寝所に何度も訪れ、こうやって体を絡めて癒してくれたのは彼だ。時には愛を乞うように激しい時もあった。
「ごめんなさい、どうしてもっと早く気付かなかったのかしら。あなたはずっと私を思ってくれたのに」
レグルスがざらざらした舌でロザリンドの頬をべろっとなめる。温かいやらくすぐったいやらで、微かに笑みがこぼれる。
「私愛されることがどういうことか分かってなかったの。だから、あなたの誠意を受け取っても戸惑うばかりで、思えば散々傷つけて来た。ごめんなさい。今頃分かっても遅いのに。私死ぬの?」
涙ながらに話すロザリンドを見て、レグルスは人型に戻り、今度は大きな腕で彼女を抱きしめた。分厚い胸板にぎゅっと押し付けたまま、囁くように語る。
「死なせるもんか。獣人と人間では毒の効き方が違う。あなたは絶対に救ってみせる。生きてさえいればいくらでもやり直せる」
「こんな簡単なこと、今頃になって分かるなんてバカね。よかれと思ってしたことで、却ってあなたを傷つけてしまった。ちゃんと相談するべきだった。でも、他に方法がないと思いつめたの」
「もう喋らなくていい。よく分かっているから。リゲルがすぐに駆け付けてあなたを助けに来た。処置も早かったから大丈夫だ。実は、カルランスの国王に会いに行ったことは把握してたんだ」
ロザリンドは驚いて目を見開く。すると、レグルスの背後にリゲルもいることに気付いた。リゲルはいつもの白装束姿で白い髪を後ろに束ねている。床に倒れ意識がもうろうとしていた時、白いライオンが自分を助けてくれたことを思い出す。
「君の行動は逐一チェックしていた。レグルスの指示じゃない。僕の独断だ。国策として人間の嫁を取るとは言え、過去の経験からどうしても人間を信用することができなかった。それで、君のことも密かに疑っていたんだ。だから僕の方から会いに行ったりしただろう?」
やはり、カッサンドラの肖像画の前でリゲルと会ったのは偶然ではなかったのだ。見張られているなんて少しも分からなかった。
「ただ、君はどうしても悪い人間には見えなかった。だから術をかけたんだ。君が危機に陥った時にすぐ駆け付けられるように。ただし条件を付けといた。君が心の底から本当に生きたいと願うことができて初めて術が働くようになる。まさか、制限が解除された瞬間駆け付ける羽目になるとは思わなかったけどね」
「どうしてそんな条件を……?」
「だって、君から前向きな情熱を感じなかったから。我が身を削って他人に尽くすことで、自分の居場所を作っているような、そんな空気があった。分かるんだ、僕も同じだから。不思議なもので、自分ではどうすることもできないのに、他人だとよく気付く。何か見てて嫌だった。そんな呪いにかかってる人が。だから、呪いから解放されたら助けてやろうと思った」
ロザリンドは、リゲルの言葉の意味をしばらく考えてから口を開いた。
「それで、あなた自身は呪いから解放されたの?」
「ちょっと、そういうとこだよ! 自分が瀕死の重傷を負っているのに他人の心配をするなんて」
「だって……、気になる」
「僕はね……、多分一生解放されない。カッサンドラのこともあるし、こんなこと言うとレグルスがまた心配するけど、嘘は付けない。でもそれなりの生き方もあると思ってる。今はここまでしか言えない」
リゲルは悲しそうに笑いながら言った。もっと深掘りしたかったが、レグルスに遮られる。
「ロザリンド、今は自分のことだけを考えて欲しい。リゲルのことは私も関わっていくから大丈夫。まずは君の体力回復。次にカルランスにどう対応するか考えよう」
レグルスはそう言うと、ロザリンドを抱きしめる手に力を込めた。ロザリンドはそれを聞いてはっとしたが、まだよく頭が働かずうまく言葉が出てこない。
「カルランス……」
「そうだ。こうなったら直接対決は避けられないだろう? 国同士の衝突ではない、親子の対決だ」
レグルスの言っている意味が分かった。このまま有耶無耶にはできない。正面から父と対峙して落とし前をつける。ロザリンドが真に解放される唯一の方法はこれしかないのだ。
**********
それから、ロザリンドは懸命な治療が施された。それだけでなく、ハンナがずっと付きっ切りで面倒を見ている。ハンナは、ロザリンドの異変を知った時わっと泣き叫んだ。心配なことがあるとレグルスに報告していたのも彼女だ。それを受けて、レグルスは、ロザリンドが寝静まった後の寝室を訪れ、ライオンに変身して彼女と同衾していた。
「あなたにも迷惑をかけたわね。つくづく自分がバカだと痛感するわ。本当にごめんなさい」
「本当ですよ! ロザリンド様一人で戦争を食い止めるなんて、いくら何でも無茶です! 優しすぎるにも程があります!」
「優しいわけじゃないの。ただ、向こう見ずなだけ……。今なら分かる、どんな理由であれこんな形で人を操作してはいけない。他人の罪悪感や正義感を煽って行動を支配するなんて下策だった。もうしない。約束する」
「本当に頼みますよ! ロザリンド様の身に何かあったら、私だって生きた心地しませんもの!」
ハンナはぷりぷりしながら言ったが、彼女が本当に心配してくれているのは伝わる。もし自分が死んだら、この人も悲しませていたのだ。直前で思い留まれて本当によかった。
「私の様子を陛下に逐一報告したのもあなただったのね。だから何かあった日の夜にライオンの姿で慰めに来てくれたんだわ」
「それが陛下の命令だったので。とにかくロザリンド様のことが好きで好きでたまらなんですよ。早く体を治して陛下を安心させてください」
「でも、体調がなかなか戻らないの。ある程度はよくなったけど、やはり父が持っているという解毒剤を使わなければ完治はしないのかも」
あれから二週間近く経ったが、完治には程遠かった。ベッドから離れられるのは短時間にとどまっている。リゲルの力や一流の医者によって治療を受けたが、根治するには解毒剤が必要らしい。それはとても珍しい薬なので、新たに取り寄せるには時間がかかると言われた。
周りに人がいない時を狙って、ロザリンドはベッドの上でレジーナから送られた日記帳を読むことにした。一命を取り留めてから真っ先にやりたかったことだ。
鍵のついたとても分厚い日記帳で、読み終わるまでにかなり時間がかかりそうだ。付属の鍵で開錠し表紙を開ける。しかし、そこにあったのは予想もしないもので、思わずあっと声を上げた。それは日記帳に似せた小さな箱だった。中がくり抜いてあって、その中に一通の手紙と青い宝石のペンダントが入っている。
(なっ……何これ!? 日記ではなかったの?)
ロザリンドはすっかり慌てふためいたが、中の手紙を読み、ペンダントの由来を知ると、胸がいっぱいになり涙が込み上げた。
(これはカッサンドラ様の最後の望みだ。私の手元に来たのは運命のいたずらだろうが、絶対に無駄にはしない)
心にそう誓い、ペンダントをぎゅっと胸に当てる。ふとレグルスが言っていたことを思い出す。親子の対決。今まで、父に自分の感情をぶつけたことはなかった。娘が毒をあおったと知ったらどんな反応をするだろう。それを知るのは怖いが、例え彼が冷淡な態度を取ったとしてももう大丈夫だ。彼女には新たな居場所があるから。レグルスはいつでも守ってくれる。怖いことは何もない。
「やっぱりあなただったのね。いつも私を助けてくれたのは」
かすれた声でそう言うと、ライオンが頷いたような気がした。人型を解いたレグルスに会うことは、ここしばらくなかった。しかし、彼女の寝所に何度も訪れ、こうやって体を絡めて癒してくれたのは彼だ。時には愛を乞うように激しい時もあった。
「ごめんなさい、どうしてもっと早く気付かなかったのかしら。あなたはずっと私を思ってくれたのに」
レグルスがざらざらした舌でロザリンドの頬をべろっとなめる。温かいやらくすぐったいやらで、微かに笑みがこぼれる。
「私愛されることがどういうことか分かってなかったの。だから、あなたの誠意を受け取っても戸惑うばかりで、思えば散々傷つけて来た。ごめんなさい。今頃分かっても遅いのに。私死ぬの?」
涙ながらに話すロザリンドを見て、レグルスは人型に戻り、今度は大きな腕で彼女を抱きしめた。分厚い胸板にぎゅっと押し付けたまま、囁くように語る。
「死なせるもんか。獣人と人間では毒の効き方が違う。あなたは絶対に救ってみせる。生きてさえいればいくらでもやり直せる」
「こんな簡単なこと、今頃になって分かるなんてバカね。よかれと思ってしたことで、却ってあなたを傷つけてしまった。ちゃんと相談するべきだった。でも、他に方法がないと思いつめたの」
「もう喋らなくていい。よく分かっているから。リゲルがすぐに駆け付けてあなたを助けに来た。処置も早かったから大丈夫だ。実は、カルランスの国王に会いに行ったことは把握してたんだ」
ロザリンドは驚いて目を見開く。すると、レグルスの背後にリゲルもいることに気付いた。リゲルはいつもの白装束姿で白い髪を後ろに束ねている。床に倒れ意識がもうろうとしていた時、白いライオンが自分を助けてくれたことを思い出す。
「君の行動は逐一チェックしていた。レグルスの指示じゃない。僕の独断だ。国策として人間の嫁を取るとは言え、過去の経験からどうしても人間を信用することができなかった。それで、君のことも密かに疑っていたんだ。だから僕の方から会いに行ったりしただろう?」
やはり、カッサンドラの肖像画の前でリゲルと会ったのは偶然ではなかったのだ。見張られているなんて少しも分からなかった。
「ただ、君はどうしても悪い人間には見えなかった。だから術をかけたんだ。君が危機に陥った時にすぐ駆け付けられるように。ただし条件を付けといた。君が心の底から本当に生きたいと願うことができて初めて術が働くようになる。まさか、制限が解除された瞬間駆け付ける羽目になるとは思わなかったけどね」
「どうしてそんな条件を……?」
「だって、君から前向きな情熱を感じなかったから。我が身を削って他人に尽くすことで、自分の居場所を作っているような、そんな空気があった。分かるんだ、僕も同じだから。不思議なもので、自分ではどうすることもできないのに、他人だとよく気付く。何か見てて嫌だった。そんな呪いにかかってる人が。だから、呪いから解放されたら助けてやろうと思った」
ロザリンドは、リゲルの言葉の意味をしばらく考えてから口を開いた。
「それで、あなた自身は呪いから解放されたの?」
「ちょっと、そういうとこだよ! 自分が瀕死の重傷を負っているのに他人の心配をするなんて」
「だって……、気になる」
「僕はね……、多分一生解放されない。カッサンドラのこともあるし、こんなこと言うとレグルスがまた心配するけど、嘘は付けない。でもそれなりの生き方もあると思ってる。今はここまでしか言えない」
リゲルは悲しそうに笑いながら言った。もっと深掘りしたかったが、レグルスに遮られる。
「ロザリンド、今は自分のことだけを考えて欲しい。リゲルのことは私も関わっていくから大丈夫。まずは君の体力回復。次にカルランスにどう対応するか考えよう」
レグルスはそう言うと、ロザリンドを抱きしめる手に力を込めた。ロザリンドはそれを聞いてはっとしたが、まだよく頭が働かずうまく言葉が出てこない。
「カルランス……」
「そうだ。こうなったら直接対決は避けられないだろう? 国同士の衝突ではない、親子の対決だ」
レグルスの言っている意味が分かった。このまま有耶無耶にはできない。正面から父と対峙して落とし前をつける。ロザリンドが真に解放される唯一の方法はこれしかないのだ。
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それから、ロザリンドは懸命な治療が施された。それだけでなく、ハンナがずっと付きっ切りで面倒を見ている。ハンナは、ロザリンドの異変を知った時わっと泣き叫んだ。心配なことがあるとレグルスに報告していたのも彼女だ。それを受けて、レグルスは、ロザリンドが寝静まった後の寝室を訪れ、ライオンに変身して彼女と同衾していた。
「あなたにも迷惑をかけたわね。つくづく自分がバカだと痛感するわ。本当にごめんなさい」
「本当ですよ! ロザリンド様一人で戦争を食い止めるなんて、いくら何でも無茶です! 優しすぎるにも程があります!」
「優しいわけじゃないの。ただ、向こう見ずなだけ……。今なら分かる、どんな理由であれこんな形で人を操作してはいけない。他人の罪悪感や正義感を煽って行動を支配するなんて下策だった。もうしない。約束する」
「本当に頼みますよ! ロザリンド様の身に何かあったら、私だって生きた心地しませんもの!」
ハンナはぷりぷりしながら言ったが、彼女が本当に心配してくれているのは伝わる。もし自分が死んだら、この人も悲しませていたのだ。直前で思い留まれて本当によかった。
「私の様子を陛下に逐一報告したのもあなただったのね。だから何かあった日の夜にライオンの姿で慰めに来てくれたんだわ」
「それが陛下の命令だったので。とにかくロザリンド様のことが好きで好きでたまらなんですよ。早く体を治して陛下を安心させてください」
「でも、体調がなかなか戻らないの。ある程度はよくなったけど、やはり父が持っているという解毒剤を使わなければ完治はしないのかも」
あれから二週間近く経ったが、完治には程遠かった。ベッドから離れられるのは短時間にとどまっている。リゲルの力や一流の医者によって治療を受けたが、根治するには解毒剤が必要らしい。それはとても珍しい薬なので、新たに取り寄せるには時間がかかると言われた。
周りに人がいない時を狙って、ロザリンドはベッドの上でレジーナから送られた日記帳を読むことにした。一命を取り留めてから真っ先にやりたかったことだ。
鍵のついたとても分厚い日記帳で、読み終わるまでにかなり時間がかかりそうだ。付属の鍵で開錠し表紙を開ける。しかし、そこにあったのは予想もしないもので、思わずあっと声を上げた。それは日記帳に似せた小さな箱だった。中がくり抜いてあって、その中に一通の手紙と青い宝石のペンダントが入っている。
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ロザリンドはすっかり慌てふためいたが、中の手紙を読み、ペンダントの由来を知ると、胸がいっぱいになり涙が込み上げた。
(これはカッサンドラ様の最後の望みだ。私の手元に来たのは運命のいたずらだろうが、絶対に無駄にはしない)
心にそう誓い、ペンダントをぎゅっと胸に当てる。ふとレグルスが言っていたことを思い出す。親子の対決。今まで、父に自分の感情をぶつけたことはなかった。娘が毒をあおったと知ったらどんな反応をするだろう。それを知るのは怖いが、例え彼が冷淡な態度を取ったとしてももう大丈夫だ。彼女には新たな居場所があるから。レグルスはいつでも守ってくれる。怖いことは何もない。
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