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第27話 薄氷を踏むような
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父であるカルランス国王との話が終わり、ロザリンドは、来た時と同様目隠しをされて馬車で来た道を戻ることになった。先ほどと同じくエドが付き添っている。
馬車の中は重苦しい沈黙に包まれていた。その沈黙に耐えきれなくなったのは、今度はエドの方だった。
「いずれにしても、あなたの選択は茨の道には変わりません。本当にあのような約束をして良かったのですか?」
「迷いはありませんでした。最大限の譲歩を国王陛下から引き出したのですから上々の結果です」
澄ました顔で答えるロザリンドに、エドは驚きを隠せなかった。
「やはりあなたは生まれついての王女です。上に立つ者としての素質を最初から備えている。どこまでも合理的で冷徹だ」
関係ないと否定しようとしたロザリンドの脳裏に、その時浮かんだのは母の姿だった。
(ずっと忘れていたのに何でだろう、最近よく思い出す)
母が最期まで父に対する恨み言を言わなかった理由が今なら分かる。二人の間では心が通じ合っていたからだ。娘の自分は一人心を痛めて孤独に苛まれていたのに、夫婦だけで世界が完結していた。母を思い出す時、いつも悲しみよりも怒りめいた感情が先に来ることに罪悪感めいたものを抱いてきたが、これは疎外感によるものだったのだ。家族の中で自分だけ蔑ろにされたという疎外感。10年以上経ってやっと謎が解けたが、ただただ寂しいだけだった。
(敢えて言うなら母上の姿を見ていたから。自分も同じことをすればいいと分かっているから)
一人ぼんやり考えるロザリンドにエドは、真摯な態度で話しかけた。
「先程の陛下のお言葉ですが……もしロザリンド様がカルランスに帰られるのであれば、居場所はいつでも用意しておきます。ですが、このことについては、ロザリンド様のお気持ちを大事にしてください」
「ありがとう。あなたが優しい人でよかった。でも私の居場所はもうここに決めているの」
ロザリンドはそう言うと、とうとうこらえきれずに涙があふれてきた。目隠しをしているにも関わらず、とめどなく流れる涙にどうすることもできなかった。
**********
太陽が沈んで辺りが暗くなってから戻ってきたロザリンドを、ハンナは心配の面持ちで迎えた。
「何事かと思って行ったけど、大した話じゃなかったわ。祖国の友人というから身構えたけど、ただの顔見知りだった」
ロザリンドは軽い調子でそう言ってすぐに湯浴みに入ったが、ハンナの方は余計に懸念を深めた。
(何が大した話じゃないわよ。目が赤く腫れて泣いたのバレバレだし、顔色だってよくない。これはまた陛下に上申ね)
ロザリンドは夕食もそこそこに早めに休むと言って床に入ったが、いつまで経っても眠れそうになかった。やがて、寝ようと思うのを諦め、ベッドから出て、夜中の庭園を散歩することにした。
タルホディアの宮殿にしばらく住むうちに、庭園の種類の豊富さが最大の特色ということが分かってきた。綺麗な花が咲き乱れる天国のような場所から熱帯雨林のような場所、氷に覆われた氷原など地球上のあらゆる気候を集めたようになっている。リゲルがいなくなったらここはどうなるだろうか。ふと、そんなことを考える。
ロザリンドは、初めてレグルスと出会った庭園に来ていた。何となく彼が恋しくて、自分でも無意識に足が向いていた。今でもありありと目の裏に浮かぶ、王の風格を備えた不思議なライオン。余りの神々しさに畏敬の念を抱かざるを得なかった。彼が人間の姿になった時は腰をぬかさんばかりに驚いたが、同時に震えるほどに感動した記憶が鮮やかによみがえる。
(でも、すっかり過去のことのように思える。もしかしたらここも見納めになるかもしれない。しっかり目に焼き付けておこう)
そう考えながら歩いていると、視線の先に人影を認めた。見間違えようがない、レグルスだ。鍛えられた体躯、ライオンのたてがみのように鮮やかな金髪をたなびかせ、宝石のような青い目を輝かせている。いつ見ても彫刻のように美しく、皇帝になるために生まれてきたと言っても過言ではない。しかし、この時の彼は、ひどく憔悴した印象を受けた。
「ロザリンド、ここにいたのか。探したんだ」
砂漠でオアシスを見つけた時のような、救いを求めるほどに必死な形相に、ロザリンドは目を見張った。こんな夜中に自分を探していたなんて、何か勘付いたのだろうか? 思わずびくっとする。
「どうしましたの? こんな夜中に? 何かありました?」
「いや、そうじゃない。そうじゃないんだ、けど」
いつになく煮え切らないレグルスの態度に、ロザリンドも落ち着かない気持ちになった。
「ロザリンド、私に何か相談したいことはないか?」
それを聞いて、思わず目を大きく開いた。彼は何もかもお見通しなのだろうか? タルホディアを治める皇帝なのだから、この国で起きたことは全て把握しているような気がする。彼には何も隠せないのかと思い、ロザリンドは身が縮んだ。
「そうではないんです。ただ……陛下にお会いしたいと思っていました」
今は何も話すことはできない。彼が知ったら自分の計画は水泡に帰すだろう。それでは誰も救うことができない。父王を思いとどまらせるのが自分の使命なのだから。
「何? 話って何? そう言えばまだお互いの話をしたことがなかったね。会ってからしばらく経つのに、相手のことが知りたいなんて思いつかなかった」
レグルスは突然何を言い出すのだろうか? なぜ今更過去の話? しかし、ロザリンドは、ずっと彼の過去について考えて来た。もしかしたら、今が最初で最後のチャンスかもしれない。
「それなら、私から陛下のことをお聞きしてもいいですか? 私の方は前に話したことがあるので」
今度は、レグルスが目を丸くする番だった。なぜ、彼が驚いたのかは分からないが、ロザリンドの方から質問されることを想定していなかったのかもしれない。
「確かにあなたは私のことを知らなかったね。隠してるつもりはなかったんだがすまなかった。長い話になるから東屋で話そう」
馬車の中は重苦しい沈黙に包まれていた。その沈黙に耐えきれなくなったのは、今度はエドの方だった。
「いずれにしても、あなたの選択は茨の道には変わりません。本当にあのような約束をして良かったのですか?」
「迷いはありませんでした。最大限の譲歩を国王陛下から引き出したのですから上々の結果です」
澄ました顔で答えるロザリンドに、エドは驚きを隠せなかった。
「やはりあなたは生まれついての王女です。上に立つ者としての素質を最初から備えている。どこまでも合理的で冷徹だ」
関係ないと否定しようとしたロザリンドの脳裏に、その時浮かんだのは母の姿だった。
(ずっと忘れていたのに何でだろう、最近よく思い出す)
母が最期まで父に対する恨み言を言わなかった理由が今なら分かる。二人の間では心が通じ合っていたからだ。娘の自分は一人心を痛めて孤独に苛まれていたのに、夫婦だけで世界が完結していた。母を思い出す時、いつも悲しみよりも怒りめいた感情が先に来ることに罪悪感めいたものを抱いてきたが、これは疎外感によるものだったのだ。家族の中で自分だけ蔑ろにされたという疎外感。10年以上経ってやっと謎が解けたが、ただただ寂しいだけだった。
(敢えて言うなら母上の姿を見ていたから。自分も同じことをすればいいと分かっているから)
一人ぼんやり考えるロザリンドにエドは、真摯な態度で話しかけた。
「先程の陛下のお言葉ですが……もしロザリンド様がカルランスに帰られるのであれば、居場所はいつでも用意しておきます。ですが、このことについては、ロザリンド様のお気持ちを大事にしてください」
「ありがとう。あなたが優しい人でよかった。でも私の居場所はもうここに決めているの」
ロザリンドはそう言うと、とうとうこらえきれずに涙があふれてきた。目隠しをしているにも関わらず、とめどなく流れる涙にどうすることもできなかった。
**********
太陽が沈んで辺りが暗くなってから戻ってきたロザリンドを、ハンナは心配の面持ちで迎えた。
「何事かと思って行ったけど、大した話じゃなかったわ。祖国の友人というから身構えたけど、ただの顔見知りだった」
ロザリンドは軽い調子でそう言ってすぐに湯浴みに入ったが、ハンナの方は余計に懸念を深めた。
(何が大した話じゃないわよ。目が赤く腫れて泣いたのバレバレだし、顔色だってよくない。これはまた陛下に上申ね)
ロザリンドは夕食もそこそこに早めに休むと言って床に入ったが、いつまで経っても眠れそうになかった。やがて、寝ようと思うのを諦め、ベッドから出て、夜中の庭園を散歩することにした。
タルホディアの宮殿にしばらく住むうちに、庭園の種類の豊富さが最大の特色ということが分かってきた。綺麗な花が咲き乱れる天国のような場所から熱帯雨林のような場所、氷に覆われた氷原など地球上のあらゆる気候を集めたようになっている。リゲルがいなくなったらここはどうなるだろうか。ふと、そんなことを考える。
ロザリンドは、初めてレグルスと出会った庭園に来ていた。何となく彼が恋しくて、自分でも無意識に足が向いていた。今でもありありと目の裏に浮かぶ、王の風格を備えた不思議なライオン。余りの神々しさに畏敬の念を抱かざるを得なかった。彼が人間の姿になった時は腰をぬかさんばかりに驚いたが、同時に震えるほどに感動した記憶が鮮やかによみがえる。
(でも、すっかり過去のことのように思える。もしかしたらここも見納めになるかもしれない。しっかり目に焼き付けておこう)
そう考えながら歩いていると、視線の先に人影を認めた。見間違えようがない、レグルスだ。鍛えられた体躯、ライオンのたてがみのように鮮やかな金髪をたなびかせ、宝石のような青い目を輝かせている。いつ見ても彫刻のように美しく、皇帝になるために生まれてきたと言っても過言ではない。しかし、この時の彼は、ひどく憔悴した印象を受けた。
「ロザリンド、ここにいたのか。探したんだ」
砂漠でオアシスを見つけた時のような、救いを求めるほどに必死な形相に、ロザリンドは目を見張った。こんな夜中に自分を探していたなんて、何か勘付いたのだろうか? 思わずびくっとする。
「どうしましたの? こんな夜中に? 何かありました?」
「いや、そうじゃない。そうじゃないんだ、けど」
いつになく煮え切らないレグルスの態度に、ロザリンドも落ち着かない気持ちになった。
「ロザリンド、私に何か相談したいことはないか?」
それを聞いて、思わず目を大きく開いた。彼は何もかもお見通しなのだろうか? タルホディアを治める皇帝なのだから、この国で起きたことは全て把握しているような気がする。彼には何も隠せないのかと思い、ロザリンドは身が縮んだ。
「そうではないんです。ただ……陛下にお会いしたいと思っていました」
今は何も話すことはできない。彼が知ったら自分の計画は水泡に帰すだろう。それでは誰も救うことができない。父王を思いとどまらせるのが自分の使命なのだから。
「何? 話って何? そう言えばまだお互いの話をしたことがなかったね。会ってからしばらく経つのに、相手のことが知りたいなんて思いつかなかった」
レグルスは突然何を言い出すのだろうか? なぜ今更過去の話? しかし、ロザリンドは、ずっと彼の過去について考えて来た。もしかしたら、今が最初で最後のチャンスかもしれない。
「それなら、私から陛下のことをお聞きしてもいいですか? 私の方は前に話したことがあるので」
今度は、レグルスが目を丸くする番だった。なぜ、彼が驚いたのかは分からないが、ロザリンドの方から質問されることを想定していなかったのかもしれない。
「確かにあなたは私のことを知らなかったね。隠してるつもりはなかったんだがすまなかった。長い話になるから東屋で話そう」
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