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カリタスとモーブルの物語の始まり
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夫が亡くなって生きる意欲を無くした私は創作活動も手につかずぼんやりと過ごすばかり。
そうして一年が過ぎた頃、発作的に死んで夫に会いに行こう!と思い立ち海岸沿いの断崖絶壁へ赴いた。
嵐が近いのか風が強く遠くの水平線に雷が落ちているのが見える。
海面を覗き込んでみると海も大荒れだった。
ちょうど良い……そう思って前に進もうとした瞬間すぐそばに雷が落ちた。
ドーンッという大きな音と地響きがして、その瞬間頭の中に沢山の情報が流れてくる。
魂の湖から生まれた瞬間、大好きで離れたくなくてくっついたピカピカの魂、神様に隠されて磨かれた自分とあの魂、一緒に生きたかったのに神様の怒りの強制力によって近づきたくても近づけなかった前世、そして現代のこと……。
その流れてくる情報の中で一番大切なこと……それは自分はカリタスだったということ、そして夫はモーブルだったということ……。
そして何処かから声が聞こえてきた。
「カリタスよ、此度はモーブルの早逝残念であった。こちらの世界では私でもモーブルをどうしてやることもできなかったのだ。この地球という世界でモーブルを見つけて結ばれたことは流石の私もお前を認めざるを得ない。今ここで自死するとお前の魂は2度とモーブルに会うことは出来なくなる。この世界で天命を全うせよ。そうしたらまたモーブルに会えるかもしれん。知らんけど多分そう。」
ふっと気がつくと先ほどまでの嵐が嘘のように晴れていて、私は崖の上でへたりこんでいたのだった。
思い出したことは沢山あった。
まだ生命になる前の魂の湖にいた時、隣にいた魂がとても綺麗で吸い寄せられてしまったこと。
一緒に産まれたくてくっついていたら神様が綺麗な魂を気に入って取られそうになったこと。
離れるのが嫌でくっついていたら何故かもう1人の神様が隠してくれて一緒にいられたこと。
世に放たれる時に見つかって怒りに触れて生き方に強制力をつけられてしまい綺麗な魂に近づけなかったこと。
前世は〈聖なる神子は白薔薇と共に〉の通りの世界だった。
私はカリタスとして生きていて、モブのモーブルには近付きたくても近付くことが出来なかった。
病に倒れた時、神子の聖魔法に助けてもらう方法もあったけど、神子との性行為を迫られて拒絶をした。
モーブルとしかしたくなかったから……そのせいで命を落とすことも厭わなかった。
結果的に私はそこで命を落としているので〈聖なる神子は白薔薇と共に〉のお話はここで終わってしまっている。
病死した後のカリタスは、魂に戻って湖に戻ってきた。
湖の底でモーブルが寿命を終えて湖に戻ってくるのを待ったのだ。
普通魂に意思はないものだ、だからモーブルの綺麗な魂にも意思はない。
だけどカリタスの魂には強くモーブルを求める意思があった。
恐らく最初の魂の時に意思はなくて、ただ単にピカピカ光るモーブルの魂に吸い寄せられたのが始まりだったのだろう。
そしてワカイヤに知らずのうちに磨かれて加護がつき、それだけではなくスリに隠蔽という魔法干渉を受けて、その後ワカイヤの暴走で強制力まで発動された……。要するに魂のうちに神様2人に関わりすぎてしまって、普通の魂にはない意思が出来上がってしまったのではないかというのがワカイヤとスリの見立てである。
やがてその時はやって来た。
モブとしての寿命を終えて、フワフワキラキラと湖の底に揺蕩うモーブルの魂を見つけた時カリタスは歓喜した。
もう離れないとばかりにモーブルの魂に寄り添った。
その様子を湖のほとりから眺めるワカイヤ。
ワカイヤもモーブルの魂に執着している。モーブルを自分だけのものにしたくてどの世界に行っても結婚することになっても子どもが出来ないようにするくらいの執着をしている。
ワカイヤはモーブルの魂をカリタスに譲るつもりはなかった。
なんとかして引き離したいと思っていた。
あの様子だと同じ世界、同じ時代に必ずついていくだろう。
だからキャメール神が関わらない世界へ送ることにした。
キャメール神が関わらなければ魂の綺麗さとか加護とか神の干渉とか関係なくなると思ったからだ。
そうすればカリタスがモーブルを見つけることは出来ないに違いないと思ったのだ。
地球という世界の日本という国へ、そこには女性という性がある。
キャメール神は女性を知らなかった、だからカリタスを女性にしたら出会うことはないと思ってしまった。
しかも年齢差もつけた、まさかこの年齢差にカリタスがつけ込むであろうことも知らずに……。
結果的にワカイヤの執着よりカリタスの執着の方が勝ったということなのだ。
時代や世界が変わっても、性別や年齢差があってもカリタスはモーブルを見つけたし添い遂げた。
ワカイヤはカリタスを認めることにしたのだ。
布実花は全てを思い出して理解した後は、亡き夫とのあれこれを想像しながらBL漫画を描きまくり、溺愛BLの伝道師アルパカとまで言われるようになった。
そして寿命を迎えて魂の湖に帰ったカリタスは湖の中でモーブルの魂に出会う事なく次の生命を得た。
カリタス・カサブランカ、もう一度この人生を生きるらしい……モーブルを見つけなくては……。
今度は強制力がないと良いが……と思っていた矢先、5歳で僕は誘拐された。
誘拐の途中で前回の人生で亡くなった時の病を発症して森の中へ打ち捨てられた。
意識が無くなる直前に、アルパカが足元いた。
「カリタス、この人生でモーブルを見つけ結ばれることができたならこれから私はお前たちを引き離すようなことはしないと約束しよう。幸運を祈る。」
そう言って姿を消した。
僕は薄れゆく意識の中でもうっすらと微笑んだ。
絶対にモーブルを見つけ出して見せる……。
ホワイトローズ王国の孤児院に保護されて、モーブルに口移しでエリクサーをもらえるまであと少し……。
カリタスとモーブルの物語が始まる。
終
最後まで読んでいただきありがとうございました。
そうして一年が過ぎた頃、発作的に死んで夫に会いに行こう!と思い立ち海岸沿いの断崖絶壁へ赴いた。
嵐が近いのか風が強く遠くの水平線に雷が落ちているのが見える。
海面を覗き込んでみると海も大荒れだった。
ちょうど良い……そう思って前に進もうとした瞬間すぐそばに雷が落ちた。
ドーンッという大きな音と地響きがして、その瞬間頭の中に沢山の情報が流れてくる。
魂の湖から生まれた瞬間、大好きで離れたくなくてくっついたピカピカの魂、神様に隠されて磨かれた自分とあの魂、一緒に生きたかったのに神様の怒りの強制力によって近づきたくても近づけなかった前世、そして現代のこと……。
その流れてくる情報の中で一番大切なこと……それは自分はカリタスだったということ、そして夫はモーブルだったということ……。
そして何処かから声が聞こえてきた。
「カリタスよ、此度はモーブルの早逝残念であった。こちらの世界では私でもモーブルをどうしてやることもできなかったのだ。この地球という世界でモーブルを見つけて結ばれたことは流石の私もお前を認めざるを得ない。今ここで自死するとお前の魂は2度とモーブルに会うことは出来なくなる。この世界で天命を全うせよ。そうしたらまたモーブルに会えるかもしれん。知らんけど多分そう。」
ふっと気がつくと先ほどまでの嵐が嘘のように晴れていて、私は崖の上でへたりこんでいたのだった。
思い出したことは沢山あった。
まだ生命になる前の魂の湖にいた時、隣にいた魂がとても綺麗で吸い寄せられてしまったこと。
一緒に産まれたくてくっついていたら神様が綺麗な魂を気に入って取られそうになったこと。
離れるのが嫌でくっついていたら何故かもう1人の神様が隠してくれて一緒にいられたこと。
世に放たれる時に見つかって怒りに触れて生き方に強制力をつけられてしまい綺麗な魂に近づけなかったこと。
前世は〈聖なる神子は白薔薇と共に〉の通りの世界だった。
私はカリタスとして生きていて、モブのモーブルには近付きたくても近付くことが出来なかった。
病に倒れた時、神子の聖魔法に助けてもらう方法もあったけど、神子との性行為を迫られて拒絶をした。
モーブルとしかしたくなかったから……そのせいで命を落とすことも厭わなかった。
結果的に私はそこで命を落としているので〈聖なる神子は白薔薇と共に〉のお話はここで終わってしまっている。
病死した後のカリタスは、魂に戻って湖に戻ってきた。
湖の底でモーブルが寿命を終えて湖に戻ってくるのを待ったのだ。
普通魂に意思はないものだ、だからモーブルの綺麗な魂にも意思はない。
だけどカリタスの魂には強くモーブルを求める意思があった。
恐らく最初の魂の時に意思はなくて、ただ単にピカピカ光るモーブルの魂に吸い寄せられたのが始まりだったのだろう。
そしてワカイヤに知らずのうちに磨かれて加護がつき、それだけではなくスリに隠蔽という魔法干渉を受けて、その後ワカイヤの暴走で強制力まで発動された……。要するに魂のうちに神様2人に関わりすぎてしまって、普通の魂にはない意思が出来上がってしまったのではないかというのがワカイヤとスリの見立てである。
やがてその時はやって来た。
モブとしての寿命を終えて、フワフワキラキラと湖の底に揺蕩うモーブルの魂を見つけた時カリタスは歓喜した。
もう離れないとばかりにモーブルの魂に寄り添った。
その様子を湖のほとりから眺めるワカイヤ。
ワカイヤもモーブルの魂に執着している。モーブルを自分だけのものにしたくてどの世界に行っても結婚することになっても子どもが出来ないようにするくらいの執着をしている。
ワカイヤはモーブルの魂をカリタスに譲るつもりはなかった。
なんとかして引き離したいと思っていた。
あの様子だと同じ世界、同じ時代に必ずついていくだろう。
だからキャメール神が関わらない世界へ送ることにした。
キャメール神が関わらなければ魂の綺麗さとか加護とか神の干渉とか関係なくなると思ったからだ。
そうすればカリタスがモーブルを見つけることは出来ないに違いないと思ったのだ。
地球という世界の日本という国へ、そこには女性という性がある。
キャメール神は女性を知らなかった、だからカリタスを女性にしたら出会うことはないと思ってしまった。
しかも年齢差もつけた、まさかこの年齢差にカリタスがつけ込むであろうことも知らずに……。
結果的にワカイヤの執着よりカリタスの執着の方が勝ったということなのだ。
時代や世界が変わっても、性別や年齢差があってもカリタスはモーブルを見つけたし添い遂げた。
ワカイヤはカリタスを認めることにしたのだ。
布実花は全てを思い出して理解した後は、亡き夫とのあれこれを想像しながらBL漫画を描きまくり、溺愛BLの伝道師アルパカとまで言われるようになった。
そして寿命を迎えて魂の湖に帰ったカリタスは湖の中でモーブルの魂に出会う事なく次の生命を得た。
カリタス・カサブランカ、もう一度この人生を生きるらしい……モーブルを見つけなくては……。
今度は強制力がないと良いが……と思っていた矢先、5歳で僕は誘拐された。
誘拐の途中で前回の人生で亡くなった時の病を発症して森の中へ打ち捨てられた。
意識が無くなる直前に、アルパカが足元いた。
「カリタス、この人生でモーブルを見つけ結ばれることができたならこれから私はお前たちを引き離すようなことはしないと約束しよう。幸運を祈る。」
そう言って姿を消した。
僕は薄れゆく意識の中でもうっすらと微笑んだ。
絶対にモーブルを見つけ出して見せる……。
ホワイトローズ王国の孤児院に保護されて、モーブルに口移しでエリクサーをもらえるまであと少し……。
カリタスとモーブルの物語が始まる。
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