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あれから5年が経った。
庭で子どもが2人仲良く戯れついている。
まるで子犬のようで見ているだけで微笑ましい。
「とういーけいとーおやつにしようか?」
と声をかけると2人とも「「たべりゅー!」」と駆けてくる。
「「ママ!ママ!あのね!」」と争うように椅子に座る僕によじ登ってくる。
すると海里が横から「ほらほら優李とママが苦しくなるよ。」って2人を抱き抱えてくれた。
海里が抱き上げた2人は3年前に汐李と僕が産んだ子どもたちだ。
登李(とうい)は汐李が産んだ僕との子で色が白くて髪も瞳も金色に近い茶色で汐李の色を濃く受け継いでいる。
でも顔立ちは僕にそっくり。
啓人(けいと)は僕が登李が産まれた半年後に僕が産んだ高人との子だ。
高人と同じ金色の髪に綺麗な青い瞳で顔は僕に似ている。
登李も啓人も髪の色と瞳の色で区別出来るけどまるで双子のようだと言われる。
そしてどちらもアルファだった。
僕が産んだのは啓人なんだけど、2人とも僕をママと呼ぶ。
そして高人を「たかパパ」汐李を「しおパパ」と呼んでいる。
高人も汐李もどっちがどっちの子という区別はつけずにどちらも自分の子として接して育ててくれている。
そんな2人を海里が僕の向かい側にあるソファに座らせると僕のお母さんがおやつとお茶を持ってきてくれた。
子どもができた時、両親はペンションを閉めてこの国へやってきてくれたのだ。
僕と汐李に子どもができた時、小鳥遊夫妻が出資して僕の病院の近くに保育園と病児保育園を設立してくれて、そこの園長先生に僕の母が、父は子どもたちへの給食の提供と海里のやってる産科の入院患者の食事作りの仕事をしている。
妊娠中も産後も育児も慣れない異国で手伝ってもらうのは気が引けたけど母は「ここが英語圏で良かったわ」って笑った。
英語はペンションにくるお客さまのため夫婦で覚えたんだって。
保育園は高人が作った学術都市の研究者夫婦たちの子どもが多くて心置きなく研究に没頭できると好評だ。
病児保育は基本的にはあんまり開いてないのだけど、研究者の両親がどうしても休めない実験がある時に子どもが熱を出したりした時に特別に開けたりしている。僕が時間を見ては子供の様子を診るので安心して実験が出来るとこちらも喜ばれている。
今日は日曜日で僕も保育園もお休み。
海里も患者さんに出産予定が今のところないみたいで、スマホの呼び出しを気にしながら子どもたちと遊んでくれる。
僕は汐李が3ヶ月前に産んだ優李を抱っこしながら子どもとおやつを食べておしゃべりをする。
僕のお腹には高人との子がいて、今はつわりがつらくて食欲がないから父が特別に食べやすいフルーツゼリーを作って気遣ってくれる。
後ろからフワッと良い匂いがする。
すると両隣に高人と汐李が座って僕の腰を抱いて両頬にキスをした。
「朔気分はどう?大丈夫?」
「しんどくないか?ベッドまで運ぼうか?」
ふたりして口々に僕を心配して甘やかす。
「大丈夫だよ!このくらいのつわりは心配ないよ。汐李だってわかってるでしょ?」
汐李だってつわりの時を乗り越えたんだから。
「僕と朔じゃ心配の度合いが全然違うよ!そもそも朔はベータで僕みたいに子どもを産める身体に出来てないんだから。」
確かにもともとベータだった僕が2人によって覚醒して子宮が出来たんだから汐李よりは身体に負担はかかってる。
でも、そばには常に海里がいてくれてるから大丈夫だと思えるんだ。
僕の出産は帝王切開で海里が執刀してくれた。
ベータの男のお産で前例はないけど海里のことは信頼しているから不安はなかった。
ついでに盲腸も取ってよって言ったらなぜだか嬉しそうにいいよって言って出産のついでに取ってくれた。
アメリカにいる時に時々痛んで薬で散らしてたから気になってたんだよね。
すると海里は
「朔の身体のことは僕がしっかり診てるから大丈夫だよ。高人も汐李も僕に任せてよ。」っていって笑った。
そんな話になるたびに高人と汐李は複雑そうな顔をする。
汐李の出産も海里が執刀した。
汐李は海里に執刀されるのを凄く嫌がったんだけど、海里がオメガの出産は沢山経験してるから任せてよって説得して、僕も海里なら安心だよって後押しして汐李のお産も海里が請け負ったんだ。
僕たち3人と海里との気の置けないやりとりに僕はいつも楽しい気持ちになる。
ベータに産まれた僕がまさかオメガの汐李に思いを寄せても叶うわけないと思っていたし、アルファの高人と結ばれた時も運命の番だった汐李がいる以上一緒にいられることはないと思ってた。
それが2人とも僕一緒にいたいと言って選んでくれた。
可愛い子供たちにも恵まれて本当にしあわせだ。
ベータに生まれて2人に愛されて僕も2人を愛し続けていく…。
これから先もずっと…。
終
※ここまで読んでいただきありがとうございました。
番外編が少し続きます
庭で子どもが2人仲良く戯れついている。
まるで子犬のようで見ているだけで微笑ましい。
「とういーけいとーおやつにしようか?」
と声をかけると2人とも「「たべりゅー!」」と駆けてくる。
「「ママ!ママ!あのね!」」と争うように椅子に座る僕によじ登ってくる。
すると海里が横から「ほらほら優李とママが苦しくなるよ。」って2人を抱き抱えてくれた。
海里が抱き上げた2人は3年前に汐李と僕が産んだ子どもたちだ。
登李(とうい)は汐李が産んだ僕との子で色が白くて髪も瞳も金色に近い茶色で汐李の色を濃く受け継いでいる。
でも顔立ちは僕にそっくり。
啓人(けいと)は僕が登李が産まれた半年後に僕が産んだ高人との子だ。
高人と同じ金色の髪に綺麗な青い瞳で顔は僕に似ている。
登李も啓人も髪の色と瞳の色で区別出来るけどまるで双子のようだと言われる。
そしてどちらもアルファだった。
僕が産んだのは啓人なんだけど、2人とも僕をママと呼ぶ。
そして高人を「たかパパ」汐李を「しおパパ」と呼んでいる。
高人も汐李もどっちがどっちの子という区別はつけずにどちらも自分の子として接して育ててくれている。
そんな2人を海里が僕の向かい側にあるソファに座らせると僕のお母さんがおやつとお茶を持ってきてくれた。
子どもができた時、両親はペンションを閉めてこの国へやってきてくれたのだ。
僕と汐李に子どもができた時、小鳥遊夫妻が出資して僕の病院の近くに保育園と病児保育園を設立してくれて、そこの園長先生に僕の母が、父は子どもたちへの給食の提供と海里のやってる産科の入院患者の食事作りの仕事をしている。
妊娠中も産後も育児も慣れない異国で手伝ってもらうのは気が引けたけど母は「ここが英語圏で良かったわ」って笑った。
英語はペンションにくるお客さまのため夫婦で覚えたんだって。
保育園は高人が作った学術都市の研究者夫婦たちの子どもが多くて心置きなく研究に没頭できると好評だ。
病児保育は基本的にはあんまり開いてないのだけど、研究者の両親がどうしても休めない実験がある時に子どもが熱を出したりした時に特別に開けたりしている。僕が時間を見ては子供の様子を診るので安心して実験が出来るとこちらも喜ばれている。
今日は日曜日で僕も保育園もお休み。
海里も患者さんに出産予定が今のところないみたいで、スマホの呼び出しを気にしながら子どもたちと遊んでくれる。
僕は汐李が3ヶ月前に産んだ優李を抱っこしながら子どもとおやつを食べておしゃべりをする。
僕のお腹には高人との子がいて、今はつわりがつらくて食欲がないから父が特別に食べやすいフルーツゼリーを作って気遣ってくれる。
後ろからフワッと良い匂いがする。
すると両隣に高人と汐李が座って僕の腰を抱いて両頬にキスをした。
「朔気分はどう?大丈夫?」
「しんどくないか?ベッドまで運ぼうか?」
ふたりして口々に僕を心配して甘やかす。
「大丈夫だよ!このくらいのつわりは心配ないよ。汐李だってわかってるでしょ?」
汐李だってつわりの時を乗り越えたんだから。
「僕と朔じゃ心配の度合いが全然違うよ!そもそも朔はベータで僕みたいに子どもを産める身体に出来てないんだから。」
確かにもともとベータだった僕が2人によって覚醒して子宮が出来たんだから汐李よりは身体に負担はかかってる。
でも、そばには常に海里がいてくれてるから大丈夫だと思えるんだ。
僕の出産は帝王切開で海里が執刀してくれた。
ベータの男のお産で前例はないけど海里のことは信頼しているから不安はなかった。
ついでに盲腸も取ってよって言ったらなぜだか嬉しそうにいいよって言って出産のついでに取ってくれた。
アメリカにいる時に時々痛んで薬で散らしてたから気になってたんだよね。
すると海里は
「朔の身体のことは僕がしっかり診てるから大丈夫だよ。高人も汐李も僕に任せてよ。」っていって笑った。
そんな話になるたびに高人と汐李は複雑そうな顔をする。
汐李の出産も海里が執刀した。
汐李は海里に執刀されるのを凄く嫌がったんだけど、海里がオメガの出産は沢山経験してるから任せてよって説得して、僕も海里なら安心だよって後押しして汐李のお産も海里が請け負ったんだ。
僕たち3人と海里との気の置けないやりとりに僕はいつも楽しい気持ちになる。
ベータに産まれた僕がまさかオメガの汐李に思いを寄せても叶うわけないと思っていたし、アルファの高人と結ばれた時も運命の番だった汐李がいる以上一緒にいられることはないと思ってた。
それが2人とも僕一緒にいたいと言って選んでくれた。
可愛い子供たちにも恵まれて本当にしあわせだ。
ベータに生まれて2人に愛されて僕も2人を愛し続けていく…。
これから先もずっと…。
終
※ここまで読んでいただきありがとうございました。
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