愛されベータ

マロン

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 3ヶ月後

 僕は大陸の南方にある小さな王国に来ていた。

 そこは鉱山資源が豊富で気候も良く良質な土壌もあり小さいけれどとても豊かな王国だった。

 この国では厳正な審査を経て国王から認められると複数婚が出来るという。

 なんでそんなことを知っているかと言うと高人の祖母はここの国王の妹だからだそうで。

 なんでもお祖母様は日本に留学してきて高人の祖父と恋に落ちてそのまま結婚!というなかなか勢いのあるご婦人だと聞いた。
 
 3ヶ月前に2人と再開した後に会いに行ったら高人にそっくりな髪色と瞳の色でとても美しい人だった。

 そして僕たち3人の望む家族の形を応援してくれて、王国への移住を勧めてくれたのだ。

 それから怒涛の日々が始まった。

 高人と汐李は会社の仕事の引き継ぎを始めた。

 高人は汐李のパートナーとなっていたので小鳥遊グループの会社で汐李と一緒に経営をしていたから2人であれこれと部下や側近に仕事を引き継いでいく。

 汐李の両親は高人といずれこのまま番となって会社を継いでくれると思っていたようで大変な驚きようだった。

 挨拶に行ったら小鳥遊夫人は「汐李はとっくにあなたを諦めたと思っていたわ。運命の番に勝るものはないと思っていたから…。どうりで一緒にいてもなかなか番わないはずだわ…。」

 そう言いながら「ここまで朔くんに思いを寄せていたのね…あなた達3人の幸せを祈っているわ。」

 と僕を抱きしめてくれた。そして「今まであなたには辛い思いをさせてごめんなさい。」と耳元で小さな声で囁いた。

 会社の跡継ぎは汐李の側近をしていた小鳥遊家の本家筋に当たる優秀なアルファに任せるそうだ。

 僕の両親のペンションにも行ってきた。お父さんもお母さんもつい数日前に来たばかりで急に訪ねたから驚いていたけど汐李を見てわかったみたい。

 でも高人と3人で結婚することを伝えたらちょっと固まってた。

 お母さんはちょっと考えてから「まぁこの状況は分からないこともないわね。」と頷いた。

 お母さんも僕と同じ両性ベータだからね。

 過去にアルファオメガに挟まれて似たような状況になったことがあったみたい。

 覚醒はしてないから普通のベータと同じように暮らしてるけど。

 お父さんもそのことは知ってたみたいっていうかその状況で困ってるお母さんを助けたところから交際が始まったんだって。

 外国で結婚することに関しても、そもそも僕はアメリカから帰らないと思ってたらしくて受け入れてくれた。

 僕も病院を退職したり引き継ぎしたりしなくてはいけなくてアメリカへ一旦戻る時、何故だか海里が一緒についてきた。

 高人と汐李もついてきたがったんだけどまだ引き継ぎが終わらないから仕方がないよね。

 そしたら海里がボディガードとしてついてくるって言うんだ。
 確かに久しぶりに会った海里はなんだかムキムキになってて身体が二回りくらい大きくなってまさにボディガードみたいに見える。産科医には見えないな。

 海里はフリーの産科医として国内では有名らしいんだけど、フリーだから自由が効くって言って僕と一緒に居てくれるんだって。

 僕はずっとアメリカで暮らして仕事をしてきたんだから1人でも心配ないんだけど…仲良くしてた海里が一緒っていうのはちょっとうれしいな。

 高人と汐李は「海里が一番危ないっつーの」って言ってたけど…何が危ないのかわからないよ。

 アメリカの病院で僕を日本へ行かせてくれた上司に挨拶をする。

 結婚するために退職する旨を伝えるとものすごく喜んでそして寂しがってくれた。

「時折寂しそうな顔をしていたけどすっかり幸せそうな顔になってるぞ!本当に良かった!おめでとう!」

 と言ってくれて僕もすごく嬉しくなった。

 それからは患者さんの引き継ぎやら各種手続きやらで忙殺されたけど、身の回りのことを海里が引き受けてくれてとても助かった。

 アメリカで僕の引き継ぎの手続きの手伝いをしてくれてる時にオメガの緊急の出産が重なってしまってちょっと危険な状態になってた時、海里が急遽オペに入って的確で正確な手術をしたらしく(僕は小児病棟にいたから全然しらなかった。)、術後僕に産科医として勤務してくれるよう説得してくれって院長直々に頼まれてしまったほどだ。

「海里の産科医の腕はすごいんだね!」って言ったら

「まぁな。朔の出産は任せろよ!」ってニヤってするから思わず真っ赤になっちゃったよ。

 まぁそんな感じでアメリカでの引き継ぎやら手続きも終わって一旦日本へ帰国してから4人で高人のお祖母様の祖国へ渡った。
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