愛されベータ

マロン

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 高校生活が本格的に始まった。

 朝は食堂で朝食を食べた後学校へ向かう。

 クラスは1-A、高人も海里も悠斗同じクラスだった。

 知った顔が一緒のクラスだと心強いな。

 これも成績順に決められてるっぽい。

 簡単なオリエンテーションの後から早速授業が始まった。

 さすがアルファの進学校だけあって授業の進みが速い、しかも先生も分かってる前提で授業をするから詳しい説明とか一切ない。

 僕はベータだからアルファような能力はないのでいまの成績を維持するのはものすごく努力しないといけないんだ。

 これはまずいぞ!って思ったのは海里も一緒だったみたい。

 学校が終わって帰り道、海里と顔を見合わせて「これは大変なところに来ちゃったね。」って話してたんだ。

 そしたら後ろから「何が大変なの?」って高人がやってきた。

「授業の進みが速すぎてベータの僕たちはついていくのが難しいって話してたんだ。」

 そしたら悠斗が「ベータだから大変ってわけじゃないぞ!アルファの俺も大変だって思ってるんだから!」って苦笑してた。

 高人が「じゃぁ勉強会しようか。夕飯食べた後で俺たちの部屋で出された課題片付けながらわからないところを教えるよ。」
 僕たち3人は高人が神さまに見えた。これは心強いぞ!

 という事で早速夕飯食べてから海里と悠斗が課題を抱えてやってきた。
 テーブルを4人で囲んで課題を開始。

 早速わからないところを高人に聞く。
 高人の教え方はすごく丁寧でわかりやすい。どんな質問も馬鹿にせず根気強く教えてくれる。
 お陰で3人ともスムーズに課題を終わらせることができた。

「ありがとう!本当に助かったよ高人!これからもお願いできる?」と3人で聞いたら

「いいよ!こんな事でよければ。それに3人とも飲み込みが早くて教えやすかったし楽しかったよ。」

 こんな感じで毎日夕飯後の勉強会は続けられるようになった。

 お陰で定期テストではトップは高人だけど2~4位はいつも僕たち3人で取り合うような感じになった。

 クラスメイトはアルファが多いからベータは相手にされないんじゃないかと思ってたけど、上位アルファは余裕があるのか僕たちにも普通に接してくれた。

普段は高人や海里、悠斗と一緒にいるからあんまり話さないけど移動教室とかで一緒になると皆気さくに話しかけてくれてなんだか嬉しかった。

同世代の子たちが分け隔てなく話をしてくれることが中学の時にはなかった事だったから余計に新鮮で嬉しかったのかもしれない。

 そんな感じで毎日楽しく過ごしていたんだけど、月に一度の定期健診は相変わらず続けられていたので学校が休みの第2土曜日にバースセンターへ行くことになっていた。

 寮の前にタクシーを呼んでそこから直接バースセンターへ向かう。

 毎月行く日をかえたのもタクシーで直接行き来するのも両親と約束したからだ。

 それは小鳥遊家の人と鉢合わせたり、朔を探す汐李を避けるため。

 土日や学校が休みの日は皆外出が自由なんだけど、せめて1年間はなるべく出歩かないでとも言われている。

 きっと1年もたてばお互い気持ちも落ち着いて汐李も番を探すことに前向きになってるかもしれないから…っていう理由で。

 必要なものはメールするとすぐに寮へ送ってくれる。

 両親に心配をかけないと決めた僕はなるべくこの学校の敷地からは出ないように気をつけていた。
 
 この日の朝起きたら高人に今日の予定を聞かれた。

「ちょっと事情があって毎月バースセンターへ行かないといけなくて今日はバースセンターへ行って来るよ。午後には帰ってくるけどね。」

「バースセンター?どこか身体に悪いところでもあるの?」

「ううん。悪いところはないんだけどちょっと体質が変わってるから毎月検査してもらってるんだ。大した事はないんだよ。」

「そうか。じゃぁ気をつけて行ってこいよ。」

「うん。ありがとう。またあとでね。」

 と寮まで迎えに来たタクシーに乗ってバースセンターへ向かった。






 
「朔くん、調子はどう?新しい高校は慣れたかい?」

 湯川先生はいつもと同じ柔らかな笑顔で僕を迎えてくれた。

「はい。クラスメイトも寮の同室の子も良い人ばかりで楽しいです。」

そう言いながらいつも通りリストバンドを渡す。

 湯川先生はそれを受け取った後、僕の腕から血液を採取する。

 リストバンドのデータを見ながら「特に大きな変化はなさそうだね。」
 と言っていつもと違うリストバンドを出した。

「これは新型のリストバンドでね。フェロモンが勝手に暴発をし始めるとブザーで知らせてくれるんだ。そしてバースセンターにも連携されててリストバンドの持ち主のフェロモン異常がすぐに知らされるように出来ているんだ。」

 今までのフェロモン測定もしてくれてそのデータもバースセンターに常に飛ばされるようになってるんだって。

でも、リストバンドのメンテナンスと血液検査があるから毎月来ることには変わりないんだけどね。

「万が一朔くんのリストバンドからブザーが鳴ったら、誤報と思わずにすぐにタクシーに乗ってここへ来ること。おそらくフェロモンに気がつかなくても暴走すれば身体が反応してわかるはずだから。いいね?」

 湯川先生は僕の手をギュッと握って言った。

 その後ちょうどお昼休みになった先生と一緒にセンター内のレストランでお昼ご飯を食べながら新しい学校のことや友だちのことなんかをお話しした。

 優しい笑顔で僕の話を聞いてくれる湯川先生との月一回の検診は両親や学校の友だち以外の人とおしゃべりできる大切な息抜きの時間なんだ。

帰りのタクシーの中で今日の晩ご飯は何作ろうかなーって考えながら、すっかり出歩かなくなった街並みを眺めた。

 (元気にしてるかな…。)
 ぼんやりしてるとつい汐李のことを考えてしまう。ダメだなーと思うけどこればっかりはどうしようもない。
 時間が忘れさせてくれるのを待つしかない。
 そう思っているうちにタクシーは寮に着いた。
 
僕の入った高校はアルファのエリート学校だから汐李のように学生だけど実家の家業を手伝っていたり起業したりしている生徒が多くて土日は寮にいる人も少ない。

 だから寮の食堂は土日休みで、寮に残っている人は外へ食べに行ったりお弁当を買いに行ったりする。

 僕は極力外へ出ないようにしているのと節約を兼ねて食堂の厨房を借りて冷蔵庫に残っている半端な食材をいただいて休日のご飯を作っている。

 外へ行かないようにしているのは僕だけなんだけど何故だか海里もそれに付き合って一緒に作って食べるようになった。

 そしたら高人も加わって3人でワイワイ作って食べるようになっていた。

 悠斗は実家の手伝いに行かなければならないので僕たちをなぜだかすごく羨ましがって出かけていく。

 あんまり可哀想だから土曜日の仕事にお弁当を作って持たせてあげたら泣いて喜ばれた。

 高人も海里も僕に付き合うことないんだよって言ったんだけど、実家の家業も手伝ってないし特にやることもないから大丈夫って言って僕と一緒にいてくれる。なんだか申し訳ないけどありがたいな。

 高人も海里も実家には家政婦さんがいたから料理とか作ったことなくって僕が作るのを物珍しそうに見ながら手伝ってくれる。

 海里は汐李に作ってたお弁当を知っててずっと僕の作ったご飯食べてみたかったんだって。

 冷蔵庫の余り野菜とか半端に残ったお肉類とかだからそんな大した料理はできないんだけど2人ともすごく喜んで食べてくれる。

 そんな2人を見てるとやっぱり中学で僕の作ったお弁当を美味しそうに食べてくれた汐李を思い出す。

 少し落ち込むけどすぐに気を取り直して、2人と一緒にご飯を食べた。
 
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