愛されベータ

マロン

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11 汐李サイド①

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 朔と初めて会ったのは3歳の時だった。

 僕のうちに新しく来る使用人の子どもで僕と同じ歳だって聞いた。

 人見知りだった僕がお母さんの後ろからそっとみるとその子がニコニコして「汐李くん、よろしくね!」って握手してくれた。

 朔くんという男の子はベータだって言ってた。

 ベータの子って特に匂いとかないって聞いたんだけど朔からはすっごくいい匂いがするんだ!

 お母さんは匂いに気が付かないみたいだけど、僕にはわかるんだ。
 朔は自覚がないけどすごく美人なんだ。

 髪の毛は真っ黒でサラサラしてて、瞳はパッと見は黒いんだけど良く見ると深い碧色なんだよ。
 見た目だけでなくすごく優しくて勉強も運動も何でも出来ちゃう。

 僕には勉強やマナー、ピアノにダンスと家庭教師がくるんだけど朔も一緒に教わるとすごく楽しくてどんどん先へ進められて先生もびっくりしてた。

 幼稚園にいる時、朔はアルファやオメガの子たちに人気で牽制するのに僕は忙しかった。
 朔は呑気だからそんなこと気付いてないけど。
 時々ベータの奴が朔を妬んでわざとぶつかったり給食のお茶をこぼしたりしてくるんだ。

 朔は気にしてなかったけど、僕は見えないようにありとあらゆる方法でそいつらに嫌がらせをして退園に追い込んでやった。

 その頃から僕はますます朔を守りたくなっていったと思う。

 小学校に入学してからも僕はずっと朔と一緒にいた。

 あれは小学校3年生の時の遠足で朔が自分でお弁当を作って来た。

 朔のお父さんは料理人でお仕事が休みの日に朔はお父さんとご飯を作ったりしてたからこの頃には簡単な物なら自分で作れるようになってたらしい。

 初めて作ったお弁当で朔自身は失敗作だからと隠したがったけど、朔の作った最初のお弁当でしょ?絶対譲れない!

 だから「朔の作ったお弁当?僕食べたい!交換して!」って飛びついた。
 断られたけどそこは引かなかった。

「失敗作だろうが何だろうが朔の初めて作ったお弁当なんだから僕が食べる!」
 って強引に僕のお弁当と交換した。

 朔の作ったお弁当は、確かに卵焼きが少し崩れていたりハンバーグが少し焼き過ぎたりしてたけど味は美味しくてこれからも食べたいって思ったんだ。

 それから6年生までの遠足のお弁当は朔が僕の分も作って来てくれるようになった。

 朔の料理の腕前も年々上がっていき6年生の時のお弁当は、僕がうちで食べてるシェフのご飯より美味しい!って思うくらい上達してた。

 僕のためにすごく料理の勉強して練習してくれてたんだって…へへへ嬉しい!

 中学からはお昼はお弁当が学食だから朔にお弁当を作ってきてもらうようになった。
 毎日朔のご飯食べられるなんて幸せ!

 中学も一緒に通うものだと思っていたのに突然、中学への通学は一人で電車で通うと言い出した。

 どうやら自分は使用人の息子で僕とは立場が違うと考えたみたいなんだけど、僕にはそんなこと関係ない。

 気が付いたら朔の腕を掴んで壁と挟んで、いわゆる壁ドンてやつをして
「朔は僕から離れたいの?許さないよ、朔は僕の側にずっといるんだ。わかるよね?」
 と上位オメガの威圧を出して朔を見つめた。

 僕を見ながらコクコクと頷く朔はやっぱりかわいいな。

 中学でも朔と僕はずっと一緒で僕の牽制で誰も近寄って来なかったのにズカズカと割り込んでくる奴が現れた。

 三枝というそいつは中学からの編入生でベータだった。

 僕の威圧にも平気でいられるのは両親がアルファで兄弟にもアルファとオメガがいるから慣れていると言う。

 僕以外の初めて出来た友だちという存在に朔はものすごく喜んだ。

 僕が世間知らずになるように囲ってきたのに三枝のヤローはそれを飛び越えて何も知らなかった朔に色んなことを教え始めた。

 朔も初めて知ることや新しい知識に興味津々でアイツといたがるから学校では僕と朔とアイツの3人でいることが増えた。

 俺が睨んで威圧をかけても三枝は全然気にしない。
 ムカつく奴だがよく見ると、どうやら僕と一緒で朔を守っているようだ。

 朔は自覚がないがアルファのような美丈夫さとオメガのような可愛らしさが上手く混ざり合ってものすごい美人なんだ。
 小鳥遊家に色々世話になっているから手が抜けないと勉強も運動も頑張っているから成績は僕に次いで学年2位でしかもベータだからベータの女子たちからものすごく狙われている。
いや女子だけじゃないベータの男子までもがあれだけ美しかったらベータでも朔ならいけるって言う感じで1人になる瞬間を狙っている。

 ベータだからって自分と同列に見るんじゃねーよ。烏滸がましい。

 三枝は一応僕に対しては一目置いて朔を守っているみたいだし朔もアイツには懐いているからひとまずこいつが朔のそばにいることは許してやろう。手を出すことは許さないけどな。






 中学に入学してから父の経営する会社の一つを手伝うことになった。

 社長である父と父の第一秘書の高山さんに助けられながらも慣れない経営や子どもだと思ってみ下してくる大人たちと対等に渡り合うために僕は必死だった。

 それから次々と持ち込まれるアルファとのお見合い。

 僕はオメガで一応跡取りという立場だからね。良家のアルファの次男三男がうちへ婿入りしたいとこぞってやってくる。
 義理立てするために仕方なくお見合いには行く。向こうからの返事の前にすぐにお断りをする。

 僕はアルファと番う気は無いからね。僕がそばにいて欲しい人はただ1人なんだから。

 そんなことばかりしていたら今度は朔を使って僕にお見合いを勧めて来た。

 ある日僕がバースセンターの検診について行くって言ったら

「汐李明日の土曜日はお見合いがあるでしょ?大手製薬会社の三男で上位アルファのすごく素敵な方だと聞いてるよ。そろそろきちんと相手を見つけないといけないんじゃない?」

少し強張った顔で、でも必死で感情を抑えているのか握りしめた手が震えてる。
そんな姿も可愛いけどさ。

 僕は思わず
「何それ!なんで朔がそんなこと言うの?どうして?」
 と聞きながら朔の両肩を掴んで揺さぶった。

 朔は目を合わすことも出来ずに俯いて「ごめん」って言うだけ。

 僕は両親が朔に何か言ったんだ!と気がついたと同時に執務室へ走った。

 執務室へ飛び込むと両親は怒りに震える僕を嗜めた。

 だが僕に無理矢理お見合いをさせるために朔を利用するのはどうしても許せなかった。

 お見合いをしてアルファと番わせたいばかりの両親にいい加減腹が立ち思わず前から決めていたことをぶちまけた。

「父さん母さん僕は誰とも番うつもりはありません。跡取りなら小鳥遊の親戚中に優秀なアルファが沢山いるじゃないですか。そもそもうちは小鳥遊グループの本家じゃない。本家の叔父さんのところから跡取りを呼んだら良いんだ。僕はその跡取りを経営者として支えて育てることにする。」

 そう僕は別にこの小鳥遊家を継ぐことにそれほど興味はない。

 小鳥遊家の血筋が大切とはいえ小鳥遊家血縁の親族は沢山いるのだ。

 優秀な人材が大勢いてもポストの数は限られているから余ってしまうものたちもいる。

 そんな人たちは子どものいない良家の一族の養子になったりしているのだ。

 ならその中でも優秀な者を連れてきて支えたら良い。

 すると母が叫んだ。
 「あなたはオメガなのよ。良いアルファと番うことがどれほど幸せなことか!」

 そうなのかな?オメガの幸せってアルファ次第なのかな?

 僕は嫌だな。生涯を過ごす相手は性別なんて関係なく自分の好きな人がいい。

 だから
「アルファと番うことがオメガの幸せなの?じゃあ運命の番が現れたら考えるよ。見つかるかわからないけどね。」

 と言って僕に腕を掴まれてオロオロしてた朔を連れて部屋を出た。

 運命の番なんて都市伝説、見つかるもんか!いたとしても僕は朔を選ぶけどね!

 アルファなんてクソ喰らえ!
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